3-7:牢屋で王子と二人きり!?
……皆さん、ごきげんよう。由紀です。
セブを探しに隣国ナチュリアに来て早々、第三王子ヴァニアが操る風の魔法で、ポーンとふっ飛ばされてしまったわけなのですが。
ここ、どこ?
暗くて、じめじめしてて、洞窟の中? ナチュリアにこんなところあったっけ?
どっちかっていうと、マテリアの方にありそうな雰囲気だけど。本当にこんなところにセブとスカルがいるの?
不安になってきた。思わず左手首の契りの紐をそっと握る。感じる気配は一つ。かなり遠いところにいる。モルだ。
よかったー。後先考えずさらわれちゃったけど、もしお互いに気配が追えなかったらピンチだったよね。
暁光の巫女たちはよもや私がセブモルGPSに組み込まれてるとは思わないだろうし、あとは私がセブを見つけさえすれば、モルがセブを助けに来てくれて万事解決ってわけだよね。
となればやるべきことは一つ! セブとスカルの居場所を突き止める!
「……へあっくしょぅんッ!!」
クソデカくしゃみ出ちゃった。さっむ。自分で使ったから文句言えないけど、水の上級術に巻き込まれた私の服はずぶ濡れになっている。
ここに飛んでくるまでに多少は風で乾くかなって期待してたけど、全然だった。ヴァニアが暁光の巫女に使ってたあの乾かすやつ、私にもかけてほしい。切実に。
そのときだった。遠く、洞窟の奥の方から声が聞こえてきた。
「そこに誰かいるんですか……?」
スカルだ。私のクソデカくしゃみのおかげでこっちに気づいてくれたみたい。ラッキー。
「スカル! 由紀だよ! 今行くからね!」
急いで声のする方へ向かう。といっても、全身に濡れた服がまとわりついて重くてうまく歩けない。
「今! 今行くから! もうすぐ! あとちょっと!」
遅すぎて不安にさせちゃうと申し訳ないから、ひたすら声をかけまくってみた。
「もうちょい! あと一声! 間もなく!」
「わかりましたから! もういいですよ!」
鬱陶しがられちゃった。ごめん。スカルに言われると結構ショックだな……。
濡れた体を引きずって一生懸命歩き、ようやくスカルのところに辿り着いたころ、もう私はバテバテだった。
「ス……スカル……大丈夫……?」
「由紀さんこそ! どうしてそんなにびしょびしょで……!?」
「これはちょっと……話せば長くなるので……」
思ったより遠かったな……しんどい……むだに声出して体力消耗したし……。
「とにかくこっちへ。休んでください!」
そう言ってスカルが私を招き入れようとしたその場所は。
「……牢屋だよね?」
どう見ても洞窟の一部に鉄格子をはめて牢にしたやつです。スカルは鉄格子の向こうで慌てて手を振ってる。
「あっ、そんなつもりじゃ……ごめんなさい! でもほらっ、ベッドもありますから……! 出入りも自由ですよ!」
鉄格子のすぐ横、洞窟の壁が不自然にえぐられて出入り口になってる。たぶん土の魔術だ。この王子、やってますね?
「ずっとここにいるのも退屈だったので、つい……」
ちょっと気恥ずかしそうにしてるスカルを横目に見つつ、疲れてしんどすぎた私は誘われるまま牢の中に入ってベッドに腰かけ……ると濡らしちゃうから、地べたにしゃがみこんだ。
「つか……れた……」
私こんなのでセブのところまでたどり着けるのかな。前世でもっと運動とかしとけばよかった。
「よかったらこれで拭いてください」
下を向いてぜえぜえ言ってる私に、スカルがそっと何かを差し出してきた。
こ、これは……ナチュリア王家の紋章が刺繍されたハンカチ! 私のような庶民が受け取っていいやつじゃないよこれ! あとごめんだけどこれじゃ全然サイズ感が足りない! 今必要なのはバスタオル!
だけどむげに断るのもよくないよね。せっかく私のために出してくれたんだし、気持ちだけでも受け取っておきたい。
「ありがとう」
素直にハンカチを受け取った私を、スカルはまだ心配そうに見つめてる。
「服、乾かしたいですよね。ぼくの服を貸しますね」
ちょっと意味がわからなくて私はスカルの顔を見ながらまばたきした。
するとスカルは私の目の前で、いきなり着ていた服を脱ぎ始めた。
「え゛ッ!? ちょっ、待っ、ななな何してんの!?」
「何って、お貸ししようと」
「いいです大丈夫です」
何考えてるんだこの王子。確かにサイズ的にはちょうどいいかもしんないけど。
私に全力で拒否されて、スカルはどことなくしょんぼりしてる。
「そんなにぼくの服着るのいやですか……?」
「そういう意味じゃなくて! だってほら、私のこれ、ワンピース! 上下両方借りることになっちゃうし!」
「大丈夫ですよ。ぼくは毛布かぶっておきますから」
「だったら私が毛布かぶりますが!?」
さんざん押し問答した後、スカルはやっと私に服を貸すのを諦めてくれた。私の隣に座ったスカルはかなり落ち込んでるように見える。ちょっときつく言いすぎちゃったかな。
「スカル、ごめんね? 気持ちはすごくうれしかったよ」
「いいえ、ぼくの方こそごめんなさい」
スカルはため息を吐いて体育座りで膝を抱えてる。
「兄さんたちみたいにスマートにしたかったんですけど……やっぱりダメですね、ぼく」
そこ気にしてたんだ。確かに原作だと兄王子たちは女性の扱いに慣れてる感じだったもんね。スカルは若いし、そもそも人づきあい自体が苦手だし。まあそのたどたどしい感じがお姉さま方に大人気なんですけどね!
「大丈夫、スカルのいいところ、わかってくれる人はいっぱいいるから」
「いっぱい、ですか?」
「そう、いーーーーっぱい」
本当にファン多いからね、スカル。現代日本にいる無数のお姉さま方をここに連れてきて見せてあげたい。
「由紀さんに言われると、本当にそんな気がしてきます。ありがとうございます、由紀さん」
可愛いな……スクショ撮りたい……。
いや、浮かれてる場合じゃない。早くセブの居場所を突き止めないと。
契りの紐が伝えてくれるモルの気配が、ちょっとずつこっちに近づいてきてる。
「スカル。セブがどこにいるか知ってる?」
私が聞くと、スカルは悲しそうに首を横に振った。
「ごめんなさい、わからなくて……」
どうしよう。どこ行ったんだあの魔王。
とにかく情報が欲しい。スカルに聞きたいこと全部聞いとかなきゃ。
「スカルはどうしてここにいるの?」
「ヴァニア兄さんの術で連れてこられたんだと思います」
私と一緒か。だと思いますってことは、気を失ってる間にとか?
「詳しく聞いてもいい?」
「はい。まず、ぼくの姿になった魔王様が部屋にいらっしゃって、この先行き来することも増えるだろうからって、部屋に転移装置を」
……最悪だ。絶対さっき流しちゃってる。
早くもごめんなさいチャンス、到来――!
次回更新は木曜!
引き続きよろしくお願いします~!




