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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第3章:推しと世界

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3-6:あとでスカルにごめんなさいしよう

 扉の開かなくなったスカルの部屋で、暁光(ぎょうこう)の巫女が私を追いつめて馬乗りになって、ナイフで刺した。


 ……と思うじゃん? 残念~! オタク、無傷で~す!


「身代わり案山子……!?」


 そう、アイテム袋からこっそり出して使っちゃいました。助かった~。

 けど浮かれてる場合じゃない。巫女が動揺してる間に私は急いで部屋の奥に転がった杖を拾った。

 いかにもそれっぽく杖を構えて詠唱しながら、巫女にバレないようにこっそりアイテム袋を開く。中には上級の魔導書。


「まさか、もう術を……!?」


 巫女が警戒してる。当然だよね。

 だってこの人は慈雨(じう)の巫女がどんな術を習得できるかなんて知らない。

 もちろん私だって知らない。でも今はとにかく自信たっぷりに堂々と詠唱して、最初からすごい術使える感を出していく。


「愚かなる者、母なる水に赦しを乞うがいい」


 今だ! それっぽく魔導書を発動! 水属性の上級術が展開し、巨大な渦が巫女を飲み込む。


「っ……あり得……ない……あぁっ!」


 よし! 巫女が飲まれた! 今のうちに脱出しよう。

 とりあえず窓から出ようと壁の方を向いた私は、背後で聞こえる激しい水音にほんの少し焦りを感じた。


 この渦、勢い強すぎない……?


 ゲーム画面で見るのと実際に使うのとではやっぱり全然違うから、こういうことは稀によくある。よくあるけど、今はあってほしくなかった。


 凄まじい勢いの大渦が部屋の家具やらなんやらを巻き込みつつこっちに迫ってきてる。


「ヤバすぎ待って待って無理」


 大慌てで窓の鍵に手をかけて、開け……開かない。終わったかも。

 いや、諦めるのはまだ早い。スカルに心の中で詫び土下座しながら、私は持っていた杖を振りかぶって全力で窓に打ち下ろした。

 ……はい、びくともしません。無傷です、窓。

 そうこうしている間に渦は真後ろまで迫ってきてる。どうしよう。扉も窓も閉まっちゃってるし、モルだって来れる状況じゃないよね。


「――離れて」


 窓の外から声が。この声って、まさか。

 直後、窓が粉々に破壊された。びっくりして思わず後ろに飛びのいた私は、そのまま渦に巻き込まれちゃった。


 破壊されて強制的にこじ開けられた窓から、水が勢いよく流れ出していく。私も巫女もその流れにのって、部屋の外に押し出された。

 は、鼻に水入った……。けど、助かった。

 巫女も激しく咳き込んでるけど、命に別状はなさそう。


「大丈夫? 姫」


 やっぱり、ヴァニアだ。風の術で巫女の服や髪を一瞬で乾かして、手を差し伸べてる。その乾かすやつ私もやってほしいな?


「……さて、姫をこんな目に遭わせた悪い奴は始末しないといけないよね?」


 あっ、この流れはまずいやつ。さすがに二対一は無理です。完全に自業自得だけどさっきのでアイテムも全部流れちゃったし。残った杖一本じゃどうしようもないし。


「ヴァニア。はんぺんさんを殺すのはあたしです」

「わかったよ、姫。トドメは譲るからね」


 目の前で物騒すぎる会話しないでほしいな!? そして片手剣を抜かないでほしいな~!?


 そのとき、割れた窓の方から飛んできた魔力の塊が、ヴァニアの片手剣を弾き飛ばし、爆ぜた。


「……来たな……魔王の従者……!」


 ヴァニアがダメージを負った右手を押さえながら忌々しそうに呟いてる。

 モルは窓から軽々と下り、びしょ濡れでへたり込んでる私の隣に立った。


「手を出してもよかったか?」

「はいもちろんですありがとうございます」


 私がなるべく手は出さないでって言ったのまだ気にしてくれてたんだ。律儀か。

 ていうかモルたん城の中から来たってことは。もしかして、部屋の扉を破壊して来ちゃった感じかな? スカル、本当にごめん。緊急事態だから許して。


「……大丈夫か?」


 あまりにもびしょ濡れな私を見て、さすがにモルもちょっと引いてる。


「大丈夫。たぶん」


 今は大丈夫。後日風邪ぐらいは引くかもしれないけど。


「へぇ……わざわざ助けに来るなんて、ずいぶんとその巫女にご執心みたいだね」

「は?? モルたんの唯一の主はセブリオン・マテリアなんですが??」


 この第三王子、自分のことは棚にあげて何言ってくれちゃってるのかな!?


「……」


 モルたんがじっとこっちを睨んでる。これはとうとう「たんを付けるな」が無言の圧力になったパターンですね。


「ごめんなさい」


 謝りつつも新パターンの「たんを付けるな」を噛みしめてる私を完全にスルーして、モルは剣を抜き、ヴァニアに向けた。


「陛下を出せ」

「本人にお願いしてみなよ。出てきてくださいって」


 ヴァニアも弓を構えた。だけど負傷してる今のヴァニアじゃモルには敵わない。


「姫、今のうちに逃げて」

「……わかりました」


 ヴァニアがつむじ風を起こして巫女を逃がす。


「させるか」


 モルが踏み込んだ。ヴァニアがすぐさま反応し、矢を放つ。それをいとも簡単に剣で払うと、モルは巫女を覆ったつむじ風を逆袈裟に斬りつけた。魔力のこもった剣撃が風を裂く。

 ところがその剣は、巫女に届くことはなかった。……ヴァニアが体を割り込ませて、弓でモルの剣を受けてる。


「姫に手出しは……させない……!」


 ヴァニアとモルがつばぜり合いしてる間に、巫女は風に紛れて姿を消した。そのことで油断したのか、ヴァニアの体勢がわずかに崩れる。モルはそれを見逃さない。力で押し切り、大きく体勢を崩したヴァニアに鋭い斬撃を喰らわせる。


「ぐ……っ」


 脇腹を抉られ、ヴァニアは苦しそうに呻いた。


「もう一度命じる。陛下を出せ」

「だから……本人に言いなって……!」


 ヴァニア、全然折れないな。


「ねえ、ヴァニア。どうしてここまで巫女のために……?」


 いくら暁光の巫女に尽くしたって、巫女はセブのことしか見てないのに。


「愚問だね。俺は姫以外なんにもいらない。それだけだよ」


 吹っ切れたみたいな笑顔が、どこか痛々しくて悲しい。

 元々はただの攻略対象の一人だったはず。多少危うい一面はあったかもしれないけど、いくら何でもここまで巫女に執着することは無かったはず。

 好感度システムがこうさせちゃったのか、それとも――。


 こんな私の感傷も、もちろんモルは一切気にしない。主の居場所を頑なに吐こうとしないヴァニアに、もう一度剣を向ける。


「出せないのなら、ここで死ね」


 切っ先を突き付けられたヴァニアが、焦りの色を浮かべてる。


「さすがに分が悪いな……っ!」


 ヴァニアの翠玉(すいぎょく)の瞳が私を捉えた。えっ待ってもしかして私ピンチ?


「もらっていくよ」


 モルが異変に気づいたときには、もう遅かった。私の周りに激しいつむじ風が巻き起こる。


「ちょっ、待っ、無理っ」


 砂ぼこりが巻き上がって目が痛い……! 前見れない! たぶんだけどこれってこのまま連れ去られるパターンだよね!?


「由紀!」


 うるさすぎる風音の向こうから、モルの声が聞こえる。きっと心配かけてる。とにかく今は無事だって伝えなきゃ。

 だってこの状況、ある意味チャンスだ。


「大丈夫! 私は大丈夫だから! 逃げて、モル!」


 私は左手首の契りの紐を強く握りしめた。この紐さえ無事なら、モルは私の気配を辿って来てくれるはず。

 それにもし私がセブのところに連れていかれたら、ついでにセブも助けられる。


 契りの紐の先端についた小さな石。夜空みたいな深い青色をしたその石に念じるように、私は一心に祈った。

 どうか、セブのところに連れていかれますように。どうか、モルに私の狙いが通じますように。どうか、セブもスカルも無事でいてくれますように。


 体が浮き上がるような感覚。直後、思いっきり吹き飛ばされたみたいに、私の体はどこかへ運ばれていった。



由紀がびっしょびしょのままなので早く乾かしてあげてほしい


更新遅くなりすみません!

次は明日火曜です! 祝日!

引き続きよろしくお願いします~!

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