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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第3章:推しと世界

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3-4:消えた気配

 転移先のマテリア城下町を抜け、モルと私は城に戻ってきた。


「陛下が戻られるまで部屋でおとなしくしていろ。おれは城内の者どもにお前が部外者ではないと話を通してくる」

「ありがとう。……それって私ついていかなくていいの?」

「必要ない。ややこしい」


 容赦ないなモルたん。


 というわけで、部屋でのんびり待つことになった私は、ベッドに寝転がりながらさっき考えかけた「マテリアの精霊存在しない説」についてもう少し深掘りしてみることにした。


 まず前提として、この世界を救うには黒雲を払って酸の雨を止ませるのが必須。そのためにはナチュリアの四精霊の祝福と魔王セブリオン・マテリアの莫大な魔力、暁光(ぎょうこう)の巫女の祈りが必要。

 原作だとモルを犠牲にしない限り魔力が不足しちゃう。でも今なら、私の萌えでセブに魔力を送りまくればいけるんじゃない?


 ただし、この作戦には難点がある。四精霊のうち、風の精霊の祝福はヴァニアしか持ってない。

 暁光の巫女の祈りもほしいから、二人の協力が絶対に必要。

 だけどあの巫女が協力に応じるとは思えないんだよね。セブと二人きりでの世界救済以外は解釈違いって思ってるだろうし。確実に私を仕留めて自分も死んでまたリセット周回しようとするはず。


 つまり、こっちはこっちで二人に内緒でこっそり酸の雨を止ませなきゃいけないってこと。


「とはいってもなぁ」


 肝心のマテリアの精霊がどこにいるかわかんないんだよね。っていうか最悪の場合いない可能性もある。そう、「マテリアの精霊存在しない説」だ。


 実装されてないものは存在しない。原作ゲームを元にしてるっぽいこの世界では、十分あり得ること。


 私が慈雨(じう)の巫女になっても、精霊がいなかったら祝福ももらえないし、巫女の力だけで雨を浄化できるとも思えない。


 うー……煮詰まってきた。土の精霊が言ってたことも気になるし……。

 こういうときピッピがいてくれるとちょうど話し相手にいいんだよね。連れてきちゃおうかな。


 ――それは、何の前触れもなく訪れた。


 ベッドでごろりと寝返りを打った私は、にわかに全身を駆けめぐった()()の気配に思わず飛び起きた。……違う。駆けめぐったんじゃない。消えたんだ。


 契りの紐で伝わってくる二つの気配。その一つが消えた。ナチュリアに残っていた、セブの気配だ。


「セブ……?」


 喉がうまく息を吸えずにひくついて苦しい。真っ白になりそうな頭の中を必死で働かせる。マテリアにいるもう一つの気配が、近づいてくる。


「由紀!」

「モルっ! セブが!」

「ナチュリアに向かう。お前は残れ」

「いやだ。私も行く」


 推しのピンチに留守番なんてしてらんない。


「だめだ。恐らく巫女の罠だろう。危険だから来るな」

「だったらなおさら一緒に行くよ。私一人でいるよりモルといた方が安全でしょ」


 またモルがいない間に城まで攻め込まれたらたまんないからね。


「……わかった。行くぞ」


 モルもマテリア侵攻イベントのことを思い出したのか、あっさり同行を許してくれた。


「ちょっと待ってて!」


 私はダッシュでセブの部屋に向かう。ピッピの足元、チェストの中。マテリア侵攻イベントのあとに戻してそれっきりになっていた、この城じゅうのアイテムを集めた袋を手に取った。


「オイオイ、急にどーした?」


 ピッピが驚いた様子で話しかけてくる。


「セブの気配が消えた。今からモルとナチュリアに行ってくる。いつ戻れるかはわかんない」

「それなら俺っちを玉座に置いていけ」


 ……なんで?


「変化でセブリオンのフリしといてやるよ。動けねーけど、ちょっとぐらいなら誤魔化せるだろ」


 さすがピッピ(さすピ)。私はありがたくその提案を受け入れて、右手に道具袋、左手にピッピを掴むと謁見の間へダッシュした。

 ていうかピッピも変化の術使えるんだ。私、ピッピ以下ってこと……?


「今失礼なこと考えただろ」

「断じてそのようなことはございませんが?」


 謎敬語出ちゃった。


 待っててくれたモルに合流し、謁見の間へ。玉座にセットするなりセブに変化したピッピを見て、モルが解釈違いを起こしかけてる。それにいち早く気づいた私は慌ててモルを引っ張って謁見の間を後にした。


 無事謁見の間を抜けた私たちは、武器庫で私でも使えそうな武器を調達し、転移装置からナチュリアへ飛んだ。


 ナチュリア城、西の塔の下。ピッピに扮した私が塔の上から暁光の巫女に突き落とされ、モルにキャッチしてもらった場所だ。

 私たちは植え込みの間に身を隠しながら、周囲の様子をうかがった。


「モル、セブの魂が眠ってるときも、気配はずっとあったよね? それが消えてるってことは、セブがわざと消したってこと?」

「その可能性もある。あとは何者かに捕らわれ、気配を隠されている場合もある」


 セブが捕まったにせよ、自分から気配を消したにせよ、私たちに位置を悟らせたくない人間が関わってる可能性が高そう。

 その人物はほぼ間違いなく、暁光の巫女だ。


「これまで、陛下が自ら気配を断たれたことはほとんどない。いずれも他愛ない、少し度を超した悪戯にすぎなかった。それなのに他国で、このようなこと……陛下……」


 モル、かなり焦ってる。こんなモル初めて見た。なんとかしなきゃ。


「セブを信じよう、モル。セブなら大丈夫。まずはスカルに会いに行ってみようよ」

「……そうだな」


 周りに人の気配はない。今ならここを離れても大丈夫そう。

 モルも同じ考えだったのか、植え込みから出る前に気配を消す術をかけてくれた。


「そうだ、ねえモル、この術って物にもかけられる?」

「可能だ」

「ちょっとお願いがあるんだけど」


 マテリアから持ってきた道具袋。念のためこれにも術をかけてもらった。

 これで巫女やヴァニアに遭遇しても、私が道具を持ち込んでることはバレないみたい。便利。


「行くぞ。おれから離れるな」


 いよいよ私たちは、セブを探しにナチュリア城へ潜入する。



盛 り 上 が っ て ま い り ま し た


いつもより短めですが、ちょうどキリがよいので今回はここまで!

次回は土曜です!

引き続きよろしくお願いします~!

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