表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第2章:推しと対話

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
44/53

2-25: 推しの体から出て推しを見る時、推しもまたこちらを見ているのだ

 スカルが私の魂を見えるようにする術を使ってくれたおかげで、私は今、推し主従二人にバッチリ見られている状態です。


「すみません私はただのオタクに過ぎないのでそんなにじっと見ないでいただいて……お目汚し失礼いたします……あの本当マジでオタク見てもいいことないから……何かすみません……」

「由紀さん、声はまだ聞こえないですよ」


 あれっ、そうなんだ!? 一人でずっと喋ってて恥ずかしすぎる。もっと早く止めてほしかったな?


 てか待って。私って今二人からはどんな風に見えてるの?


 現代日本で死んだときの姿? それってめちゃくちゃダルダルの部屋着じゃなかった……?

 それともまさか、全裸……?


「安心してください。由紀さんは今このぐらいの大きさの光の玉に見えてますよ」


 スカルが両手でりんご一個分ぐらいの大きさを示しながら教えてくれた。よかった~。恥ずかしいことにはなってなさそう。


「はい、大丈夫です。ダルダルの部屋着や全裸じゃないので安心してください!」


 ねえ、わざわざ言わなくていいことってあるよね……!?


 私の嘆きを耳にしたスカルはちょっと反省してるっぽい。一方主従二人は特に気にしてる様子はなかった。


「それでは魔王様、あとはお願いします」

「任せな」


 反省から気を取り直したスカルが、セブに何かを渡した。慈雨(じう)の巫女の耳飾りと……契りの紐だ。セブの左手首についてるのと同じやつ。スカルが作ってくれたんだ。

 この二つを媒介に、セブは私を慈雨の巫女として顕現させるみたい。


「モル」

「こちらに」

「しばらく手が離せねぇ。背中は任せる」

「かしこまりました」


 待って。さらっと、さりげなく、とんでもない供給が目の前にお出しされました……。

 私、この世界に来て初めて、推し主従の会話を横から眺めることに成功しました……。

 あの、最高……。完全に萌えのキャパオーバーです……。


「……」


 あっ、セブが戸惑った感じでこっち見てる。声は聞こえてないはずだけど、私の魂がオタクの煩悩にまみれてるのが伝わってる、とか?

 恥ずかしいけどこればっかりはどうしようもないからスルーしてほしいな……。


「始めるぞ」


 始まった、のかな。原作のオープニングムービーで暁光(ぎょうこう)の巫女がこの世界に来る場面にならって、私の魂は泉の中央に浮かべられてる。


 ムービーだと泉の上に光が集まってきて、それがはじけて中から巫女が現れてた。

 現れた巫女は水面を歩いて大地へと降り立ち、気を失って倒れ込んで第一王子ルビーに抱き留められる。


 これでいくと、私巫女になって早々泉の上を歩かなきゃいけないことになるんだけど。難易度高すぎない? 忍者か?


 悶々と考えてたらいつの間にかまわりに大小さまざまな魔法陣が浮かんでた。セブの表情はいつになく真剣だ。人間一人作り出すわけだから、相当難しいことをやってるんだと思う。

 そのセブが、呻くみたいな声で呟いた。


「……足りねぇ」


 この場合の足りないって、魔力だよね。まさか、泉の再生で力を使っちゃったから……?


「そんな……」


 スカルの顔が青ざめてる。どうしよう。魔力の回復アイテムは持ってきてない。ピンチだ。


「陛下」


 モルが、跪いてる。


「私の力をお使いください」


 魂が急に冷えたみたいに感じて、思わず気が遠くなりかけた。

 力を使うって、その力ってモルの命のことだよね?

 だめだよ、そんなのだめ。私のためにモルが命を削るなんて、絶対いやだ。


「スカルお願い、絶対だめってセブに伝えて」


 私の声を聞いたスカルはすぐ頷いてくれた。その口が開くより先に、セブが声を発した。


「モル。お前は俺のしもべだ」


 セブは巫女顕現の術を中断して、モルと向き合ってる。


「はい」

「しもべの命の使い道を決めるのは、俺だ」


 有無を言わさない、強い口調。もしかして、ちょっと怒ってる?


「出過ぎた真似を大変失礼いたしました」


 深く頭を下げるモルを見て、セブはもう一度モルの名前を呼んだ。その声は、さっきまでよりほんの少しだけ優しい。


「俺にはお前が必要だ。今はまだ俺の傍にいろ」

「陛下のお望みどおりに」


 よかった。モルを止めてくれてありがとう、セブ。

 そして本当にごめん。今って絶対こんなこと言ってる場合じゃないんだけど……、


 主従の会話が尊すぎる。


 幸福感がすごい。生きててよかった。やっぱり二人には二人のまま幸せになってもらわないといけませんね。何としても。


「……力が」


 セブが驚いたような顔でこっちを見てる。どういうこと? 魔力、戻ったの?


「まさか、お前が……?」


 ……えっ? 私、何かやっちゃいました?


「モル、ここへ」


 セブが何か思いついたみたい。呼ばれたモルはセブのすぐそばまで近づく。

 セブは、私に見せつけるみたいに、モルの髪にそっと触れると髪束をひとすくいし、耳にかけてあげた。銀白色の裏に隠れた薄紫色がよく見える。


 も、も、萌えすぎて無理~! 待ってねえ何今の!? 何の自慢!? 供給がえぐすぎて命がいくつあっても足りませんけど!?

 あとこれだけは言いたいんですけどモルたんの頭上に「?」が浮かびまくってるのが本当に最高。主の奇行に考えが追いつかなくてとりあえずされるがままになってるモルたん、マテリア王国の宝です。


「やはりか」


 セブが確かな手ごたえを感じてる。私ももう嫌でもわかってしまった。

 私がセブモルに萌えると、セブの魔力が回復するっぽい。

 理屈はわかんないけど、セブの魔力に私のテンションが影響するようになっちゃったみたい……。


「陛下……?」


 一人置いてけぼりのモルたんがまばたきしながらセブを見てる。


(わり)ぃ、気にしないでくれ。巫女が来ないか警戒を続けろ」

「かしこまりました」


 あ~! モルたん、髪を耳にかけたまま警戒に戻っ、戻っ、ありがとうございます!!


「続けるぞ」

「ふぁい……」


 聞こえないってわかってるけどつい情けない返事しちゃった。結果的にセブの魔力が足りるようになってよかったけど……よかったのかなこれ……人として大切な何かを失ってる気がする。私が。


 それからしばらく経って、とうとうセブがありったけの魔力を注ぎきった。


「顕現せよ」


 来た。来ました。自分の周りに強い光が集まってくる。視界が真っ白になり、思わず目を閉じる。目を閉じた感覚がある。

 眩しさがなくなったころ、私は恐る恐る目を開けた。


 浮いてる。泉の真ん中、上の方に浮いてる。セブが、モルが、スカルが私を見てる。


 指先が、動く。両手を持ち上げ、視線を落としてまじまじと見る。

 手を握ったり開いたりしてみる。動いてる。左手首に、セブとお揃いの契りの紐が巻かれてる。


 衣装は、暁光の巫女の色違いになってるみたい。夜空みたいな深い紺色。髪の色は黒っぽい。耳にそっと触れると、右耳の方だけ真珠の飾りが揺れてる。慈雨の巫女の耳飾りだ。


 足は動くかな。これから水面を歩いて地面にたどり着かなきゃいけないんだけど。

 浮いていた体がゆっくりと下りていく。裸足のつま先が、泉に触れる。冷たっ。


 たぶんセブたちから見た私は、相当神秘的な感じに見えてると思う。

 でも残念ながら中の人はただのオタク。今はただバシャって沈まないようにうまく歩けるか不安で仕方ない。


 恐る恐る、一歩めを踏み出した。……行けた。ちゃんと水面に足がついてる。いつ沈むかわかんないし、どんどん歩いてこう。

 暁光の巫女ならこういうときムービー通り雰囲気たっぷりにゆっくり歩いたんだろうけど、私は沈むのが怖すぎて異様な早歩きで地面に降り立っちゃった。

 スカルが「思ってたのと違うな」って顔してる。暁光の巫女みたいにできなくて悪かったな。


 で、ここで本来は気を失ってふらっと倒れ込まないといけないんだけど。うん、元気ですね、私。どうしよっかな。


「初めまして、だな」


 気を失ってる場合じゃなかった。推しが、今、私の前に、いる。



とうとう慈雨の巫女になっちゃった~!?


次回更新は土曜!

引き続きよろしくお願いします~!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ