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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第2章:推しと対話

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2-21:この世界の主人公

 スカルの研究室に突如として現れた暁光(ぎょうこう)の巫女。

 想定外、ではあるんだけど、ある意味想定内っていうか。この巫女ならここでしゃしゃり出てきてもおかしくないっていうか。だから私はそこまで驚かなかった。


 私だけじゃなくたぶんセブもモルも同じような考えだったんだと思う。唯一スカルだけが新鮮なリアクションを見せてくれた。


「みみみ巫女さん!? な、なんでここに……?」


 ここまで大袈裟に驚いてくれると逆にほっこりするよね。そんな場合じゃないけど。


「精霊巡りはメインクエスト扱いなので。未消化の間はメニュー画面にバッジが出るんですよ。それが消えたってことは、何者かが勝手に土の聖域をクリアしたことを意味します。ひとまずスカルのところに来てみたら、案の定あなたたちがいた、と」


 スカルの頭上に「?」がいっぱい浮かんでる。そりゃそうだよね。ってかこの部屋にいるメンバーで今の説明理解できたのは私だけだと思う。


(要するに、土の聖域を攻略して祝福をもらうと、巫女にバレる仕組みだったってこと)

(厄介だな)


 だよね。……さて、どうしたものか。ぶっちゃけ、巫女がなんで出てきたのか、私にはその意図が掴めてない。


 こっちは最強の魔王と完璧な従者だから巫女相手に戦闘で負けることはないし、モルがいる前でセブを追加ルートに引きずり込むのはまず無理だし。

 普通に考えたら、今この時点で巫女にできることは何もない。


 だからこそ、怖い。完全に素の状態を晒すようになった巫女は何をしでかすかわからない。


「土の聖域にモルを連れていったんですね」

「当然だろ」

「あの王子が余計なことをしたとき、あなたならこうするんじゃないかって思ってました」


 巫女の口ぶりは淡々としてる。目もどことなく虚ろで……これ完全にキレてるな。虚ろなんじゃなくて、据わってるんだ。

 こっちをぼんやりと、それでいて真っ直ぐに睨んでる。セブというよりその中の私を睨んでる気がして怖い。


 さっきから頭に「?」をいっぱい浮かべてるスカルが、おずおずと口を挟んできた。


「み……巫女さん、どうしたんですか? いつもと雰囲気が……違うというか……」


 えっ、もしかしてスカル、素の巫女に会うの初めてなの? 風の聖域から戻った後、巫女はスカルに一度も会わなかったってこと?


「あたし、考えました」


 巫女は完全にスカルを無視してる。せめて返事ぐらいしてもよくない?


「魂の契りを解いて、モルを自由にして、取り戻した魔力であたしと一緒に黒雲を払う。それがあなたにとっての幸せだと、ずっとそう思ってました」


 巫女は真っ直ぐこっちを見たまま、一度も目をそらさずに話し続ける。


「でも、違ったんですね」


 巫女の声がほんの少しだけ震えてた。


「だからあたし、慈雨(じう)の巫女顕現に協力します」


 …………は? えっ待って待って頭が追いつかないよ? 何事?


(罠、だよな)

(だと思う。たぶん)


 セブもかなり戸惑ってる。モルは今セブの視界に映ってないけどきっと眉間に皺を寄せてると思う。スカルはさっきから全然話についてこれてない。


「やだなぁ、そんな顔しないでくださいよ。本気なんですよ? あたし」


 珍しくセブが動揺を顔に出してたみたい。さすがに無理もないとは思うけど。


「理由を言え」

「あたしはあなたと幸せになりたい。だから協力する。それだけです」


 いや絶対おかしい。考えろ私。この超効率厨の巫女が善意で私に協力するはずがない。

 何か、巫女にとって大きなメリットがあるんだ。私を慈雨の巫女にすることが、この人の望むセブとの幸せにとって効率的じゃなかったらこんなこと言うわけない。


(由紀、お前は何のために慈雨の巫女になろうとしていた?)


 何のため? そりゃあ、私が慈雨の巫女になれば酸の雨を浄化してセブモルを救えるかもしれないから……いや、ちょっと待って。


(私は、セブに体を返して、壁としてセブモルを末永く見守りたい!)


 そうだ。慈雨の巫女を復活させれば、暁光の巫女は世界を救う役目を奪われるかもしれない。

 そうなったら追加ルートどころかセブと親交を深める方法自体が無くなっちゃう。だから本来なら阻止したいはず。


 でもそこに目を瞑ってでもいいから、暁光の巫女は何としても私をセブの中から追い出したいってことか。


「そうまでして、由紀を俺の中から追い出したいか」


 暁光の巫女の肩がびくりと跳ねる。図星だ。ありがとうセブ。おかげで巫女の狙いが読めた。

 巫女は私さえセブの中から追い出せば、余計な入れ知恵される心配もなくなるし、原作知識でセブを落とせるって考えてるんだ。


 それだけじゃない。私が慈雨の巫女になった瞬間、殺してリセットしようとするかも。もうかなり原作と違う流れになっちゃってるし、また一からやり直そうとしても全然おかしくない。


「あーあ、いきなりバレちゃいましたね。さすが、それでこそセブ様です」


 巫女、思ったより全然うろたえてない。バレるのも織り込み済みってことか。


「隠し事は好きじゃないので言いますね。あたしはユキさんを慈雨の巫女にしたら、すぐ殺します」


 やっぱり、リセットコースか。


「俺が許すと思うか?」


 即座にセブが反対してくれた。けど巫女はそれを聞いて、突然おかしそうに笑いだした。


「許す? 何言ってるんですか?」

「貴様、何が可笑しい」


 ここまで黙って聞いてたモルがとうとう我慢できず前に出てきた。このまま剣でも抜きかねない勢いだけど、巫女は眼中にないって感じ。


「あたしが『殺す』って言ったら『そう』なるんですよ、セブ様。あなたが許すかどうかは関係ないです」


 不敵に笑みを浮かべ、芝居がかった動きで腕を広げ、私たちを挑発するみたいに、巫女はあえて声を落としゆっくりと囁いた。


「あたしはこの世界の主人公なんですから」


 まるで世界の全てを手に入れたみたいな、何もかも思い通りになるみたいな、巫女がそんな存在に見えてきそうになる。


 ……ううん、そんなわけないよね。


 もしこの世界が、本当に巫女のためにあるものだったら。私なんてぬいぐるみ姿になった辺りでもう死んでないとおかしい。


(そうだな。それに何度もリセットしなくて済んだはずだ)

(ヴァニア兄さんに祝福取られたのも変ですよね)


 ファッ!? スカルまで入ってきた!?


(わわっ、勝手にお邪魔してすみません……!)


 まあ賑やかな方が楽しいし、今だけならいいか。

 でもモルたん一人だけ入れないのはおかしくない? むしろ私たちじゃなくてモルたんがセブとお話しできるべきじゃない?


(……とにかく、巫女は全然この世界の主人公じゃないから。気にしないで私たちは私たちにできることをしよう)


 私たちがこっそり会話してることに気づいてない巫女は、余裕たっぷりに問いかけてくる。


「どうします? あたしと一緒に、ユキさんを慈雨の巫女に仕立て上げますか?」


 私たちの答えはもう決まってる。


「モル」


 主からの呼び掛けにモルが振り返る。揺れた髪の薄紫色が覗き、銀色の瞳が確かに主の紫水晶の瞳を見つめた。

 モルは一つまばたきをすると、改めて巫女の方へ向き直り丁寧に一礼してみせた。


「では、失礼いたします」


 セブはモルを呼んだだけ。だけどモルは主が巫女を置いてマテリアへ帰ろうとしてることを察した。

 さっきはモルだけお話しできないのは変って思ったけど、違った。この二人の間に言葉なんて要らないんだ。主従すごい。ありがとうございます。


 モルが挨拶を済ませている間に、セブは転移魔法陣を展開した。前に見よう見まねで使ったヴァニアの魔法陣を、もう完璧に覚えちゃったみたい。


「あたしを置いていくんですね」


 巫女が少しだけ責めるみたいに言う。


「安心しろ。今度は慈雨の巫女を連れて迎えに来てやる」

「嬉しい。絶対に殺してあげますね」


 やれるもんならやってみな、って言いながらセブが腕を前に伸ばし、掌を魔法陣に向けて発動させる。


 その腕で、スカルの腕を掴み引き寄せた。


「わわっ、」

「うそ、待って……!」


 セブとモルと私、そしてスカルは一瞬のうちに巫女の前から姿を消した。




ギリギリですみません~!


次回更新は土曜!→日曜になりました……すみません……!

2章ももうちょっとで終われるかな~!?

引き続きよろしくお願いします!

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