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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第2章:推しと対話

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2-13:来ちゃった、が許されるのは(約二週間ぶり二回目)

 火の精霊の聖地を攻略し、マテリア王城に戻ってきた私とセブ……の隣に、暁光(ぎょうこう)の巫女。

 そして、広間の奥からこっちに向かってくるモルたん。その足が止まる。主の隣に立っている巫女の存在に気づいたっぽい。


 どうしよ……一触即発ってやつだよねこの状況……。

 恐る恐る様子を窺っていると、モルはなんと巫女に向かって丁寧に一礼してみせた。それから改めてセブに深く一礼し、ナチュリアから戻った主を気遣う。


「陛下、ご無事で何よりです。巫女様もお変わりないご様子で」


 あーっ客人おもてなしモードだっ! 主の客人にあたる相手を立場上已む無く丁重にもてなさないといけないときに出るやつ! 原作でも滅多に見れない貴重なモルたん!

 ひとまず一触即発を回避できて安心したのか、セブがいつもみたいに軽口を叩く。


「俺を誰だと思ってやがる。城の方は変わりないか?」

「無論、万事滞りなく」


 たぶん半日ぐらいしか経ってないんだけどずいぶん久々のセブモル供給な気がする。思わず無い喉で生唾を呑みこんでいると、隣でにっこり微笑んでいた巫女が突然私たちに話しかけてきた。


「セブ様、モル、改めて今日からよろしくお願いします!」


 セブモル二人の頭に今、同時に「?」が浮かんだと思う。周りの兵士や使用人たちもざわついてる。


(こいつは何を言ってるんだ?)

(ごめん私もよくわかんない)


 けどとりあえずこのままここで立ち話を続けるのはよくない気がする。


「お二人ともお疲れでしょう。どうぞこちらへ」


 ちょうどいいところでモルが気を利かせて応接室へ案内してくれた。

 その道中、私はセブに思いきってあることを提案してみる。


(セブ、私と交代して)


 初めて私が自分で表に出たいって言ったからか、セブは少し驚いていた。


(いいのか? 今交代したら、たぶん俺はしばらく起きねぇぞ)


 心配してくれてるんだ。確かに、セブと交代できない状況で巫女が暴れ出したらまずい。でも、


(大丈夫。いざとなったらモルに助けてもらうから)


 それにたぶん、巫女と一対一でお話しするなら私が出た方がいい。


(オタクの原作知識に太刀打ちできるのは同じオタクでしょ)

(……わかった。お前に任せる)


 応接室に着いた私たちは、モルが開いてくれた扉から中に入る。静かに扉を閉めたモルに、セブがそっと近づいた。


「モル。由紀を頼む」


 巫女に聞こえないぐらいの声量でセブが囁いた直後、目の前が不意に暗くなって全身の力が抜けた。


「陛下!」


 すぐにモルがセブの体を支えてくれた。そのまますぐ耳元でモルの声が微かに響く。


「仰せのままに、我が君」


 距離、近。この主従本当距離感バグってるよ。いやそんなことより、体の主導権が戻ってきたか確かめないと。


「セブ様っ!?」


 巫女が慌てて駆け寄ってくる。モルは動じることなく主の体を応接室のふかふかなソファーに座らせてくれた。

 うん。ソファーのふかふか感がわかる。指先が動く。大丈夫そう。私はそっと目を開けた。ローテーブルを挟んで正面のソファーに巫女、と、主のすぐそばで跪いて様子を気に掛けるモル。


(わり)ぃ、心配かけたな」


 私が喋ったのを聞いて、モルは安心したのかそっと立ち上がり一礼すると、巫女との会話の邪魔にならないよう部屋の隅へ移動した。


「セブ様……?」

「いや、今お前の目の前にいるのはセブリオンじゃねぇ」


 巫女の表情がみるみるうちに歪んでいく。早々に正体明かして正解だったな。


「じゃあその喋り方するのやめてもらえますか」

「そいつはできねぇ相談だ」


 なぜならモルたんの士気に関わるから。正体がバレてるかは関係なく、モルたんの前にいるときはできる限りセブリオン・マテリアでいたい。

 巫女の機嫌に構わず、私は早速本題に入ることにした。


「さっきのはどういう意味だ? まさかこの城に入り浸るつもりじゃねぇだろうな」


 改めて今日からよろしくお願いしますって巫女は言ってた。明らかにこれからここに住みます感出てたけど、まさかそんなわけないよね?


「まさかも何も、追加ルートの拠点はマテリア城ですよ?」


 巫女がさも当然みたいに言うからちょっと面食らっちゃった。


「お前はまだこちらに拠点を移せないはずだ。第四王子にも、他の王子にも話を通してないだろ?」


 追加ルートで暁光の巫女がマテリアを拠点にするのには一応根拠がある。第四王子スカルと一緒に魂の契り解消の方法を見出した後、他の王子たちも集めてどうしても魔王を救いたいって会話イベントを起こす。


 このイベントで晴れて王子たちとのフラグは消滅し、その後マテリアで魂の契り解消クエストを発生させればセブ攻略のフラグが正式に立つ。

 あとは魔王を救うため、王子たちの公認で正式に活動の拠点をマテリアに移す。っていう仕組み。


 でもこの巫女は間違いなく王子たちに話を通してない。ついこの前まできつめの痴話げんかしてたぐらいだし、どう考えても無理でしょ。

 このままだと王子たちが巫女を取り戻すべくマテリアに殴り込みに来てもおかしくない。


「王子どもが乗り込んでくると面倒だからな。先にその辺何とかしてこい」


 適当にあしらう感じで手をひらひらさせながら言うと、巫女の表情が変わった。


「いいの? そんなこと言って」


 正面のソファーに座る巫女は、挑発的な笑みを浮かべてる。


「あたしをナチュリアに帰らせていいの?」


 巫女の態度の意図がつかめない。とりあえず怪訝そうな顔で応じてみよう。


「回りくどいのは好きじゃねぇ。何が言いたい?」

「魂の契り解消、発動させたくないんですよね?」


 この巫女、やけに余裕だ。嫌な予感がする。今ナチュリアに帰ったところで契り解消クエを発生させるのは無理なはずなのに。


「お前が何を企んでるのかは知らんが、俺が魂の契りを解くことはありえねぇ」

「はんぺんさん、魂の契り解消の条件知らないでしょう」


 この人セブの前以外ではHN(ハンネ)呼びで通すつもりなんだ。いやそんなことより、魂の契り解消の条件って。研究ステータス、スカルの好感度、三回の訪問イベ全てで正しい選択肢を選ぶこと、だよね。


 研究とスカルのことはこっちじゃどうにもできないけど、訪問イベは原作と全然違う形になったし、ヤバい会話はちゃんと避けた。

 うん、どう考えても現時点で発生条件満たしてるとは思えない。


 黙ったままでいる私に、巫女がふふって小さく笑ってみせる。


「訪問イベの選択肢、あれ必須じゃないんですよ」


 ……は?


「原作で訪問イベが重要なのは、それ以外にセブ様の好感度を上げる有効な手がないからです」


 頭の中が急速に冷えてく。まずい。巫女が言おうとしてること、もし今私が予想した通りなら相当まずい。


「聖地攻略の会話。はんぺんさんが自由にさせてくれたから驚きました。おかげで好感度が規定値超えたんで、いつでもルート突入できます」


 しくじった。契り解消クエの発生条件は訪問イベの選択肢じゃない、セブの好感度だったんだ。

 落ち着け自分。かなり危険な状況だけど、まだなんとかなる。クエストが発生しても、受注させなければいい。


「お前こそ勘違いしているんじゃないか? 魂の契り解消に俺が同意すると思うか?」


 そう。最終的にクエストを受注できるかどうかは、セブの返事次第。私がこの体の中にいる限り、絶対に同意なんかしてやんないんだから。


「そんなこと言ってますけど、これから毎週はんぺんさんはセブ様と交代してくれるんですよね? あたし、毎週いつでもセブ様にお願いできるんですよ」


 巫女の言う通り。これから水、風、土の三回分毎週チャンスがある。私は絶対魂の契り解消には反対だし、セブも同じ気持ちだって思ってる。思ってるけど。どうしても巫女の言葉を思い出してしまう。確実にモルが助かる手段が目の前にある。なのにそれを捨てられる?


 それに……もし、セブが魂の契り解消に反対してるっていうのが、私に都合のいい思い込みでしかなかったら?


「陛下」


 モルの声に、私はハッと顔を上げた。銀色の瞳がこっちを見つめている。



普通に水龍のとこ行くつもりだったのに気づいたら巫女がこんなことを


次回更新は木曜!

引き続きよろしくお願いします~!

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