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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第2章:推しと対話

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2-4:もうダメですこの人たち

 一触即発状態なナチュリアの王子たちの前に、マテリア王国の魔王セブと従者モルが姿を現してみました。ほぼ勢いだけで出てきちゃったけど何とかなりますように!


「陛下のご用命だ。巫女を渡せ」


 モルたんちょっと待って? 私一言もそんなこと命じてませんけど、何を考えてるんですか?


 突然の闖入者(ちんにゅうしゃ)が発した聞き捨てならない発言に、王子たちの目は一斉にこちらへ釘付けとなった。


「貴様ら、マテリアの」


 カインが詠唱を中断し一歩前に出る。その動きに合わせ、モルは剣を抜いた。


「渡さなければ、斬る」


 うわぁ~剣で解決パターンだ~! もうちょっと穏便に何とかなりませんかねモルさん?


「へぇ、魔王様も姫を狙ってるってことか」


 ヴァニアも何だか不穏な感じを出しながら前に出てきた。どうしよう、これ状況悪化してない?

 何か言わなきゃ、と私が必死に台詞を考えていると、不意にスカルが呟いた。


「ありがとう、魔王様たち」


 直後、カインとヴァニアの足元の床が、崩れた。スカルの術だ。二人の意識が自分から完全に逸れた隙を狙ったんだ。

 凄まじい音と揺れに、私は思わずその場にしゃがみこむ。その私の耳に、落ちていった王子たちの悲鳴が微かに届いた。


「陛下!」


 モルが急いで駆け寄り、主の体が床の崩落に巻き込まれないよう支えてくれた。

 スカルは崩した床を元通りきれいに直すと、その上を通ってこっちに来る。


「お二人とも大丈夫ですか? 荒っぽいやり方ですみません」


 ぺこぺこと頭を下げながらも、スカルは言葉を続ける。


「兄さんたちには地下まで落ちてもらいました。でもそんなに時間はありません。今のうちに、急いで」


 一瞬、モルが僅かに眉をひそめた。主の身に危険がおよびかけたことで苛立ったんだと思う。心配になってこっそり様子をうかがうと、モルは何事もなかったかのように穏やかな瞳で主を見つめ、手を差し伸べた。


「陛下、お手を」


 言われるがままに手をとって立たせてもらっちゃったけど、よく考えなくても普通に自分で立てたな。この従者、主を甘やかしすぎなのでは? 主の中身が(ポンコツ)だから配慮してくれてるだけなのかもだけど。


 結構な高さから落ちた兄王子たちが無事なのかも気になるけど、今は巫女を助けなきゃ。ぬいぐるみになった私だって同じような高さから落ちて生きてたんだし、多少鍛えられてる王子たちならきっと大丈夫。なはず。


「お下がりください、陛下」


 モルが扉に施された風の鎖を、断ち斬る。ヴァニアの結界が解除され、ようやく巫女の部屋に入れるときが来た。


「お二人とも、ここまでありがとうございます。いきなりだと巫女さんが驚くかもしれないから、まずはぼくが入りますね」


 スカルが扉を開け、部屋に入っていった。待つこと数十秒。部屋の中から、ドタドタと猛烈な勢いの足音が扉の方へ近づいてくる。


「セブ様っっっ!!」


 扉を弾き飛ばすぐらいの勢いで、暁光(ぎょうこう)の巫女が部屋から飛び出してきた。その勢いのまま、魔王の私めがけて抱きつこうとしてくる。


「下がれ」


 まあ当然モルたんが許すはずないですよね。巫女は巫女で、突然間に割り込んできた邪魔な従者にめちゃくちゃキレてる。


「どいてください。セブ様は囚われの身だったあたしを助けるために命懸けでここまで来てくれたんですよ?」

「何を勘違いしているのかは知らないが、今陛下の中にいるのは貴様の想像する人物ではない」


 巫女が「嘘だそんなわけない」って顔でこっちを見てくる。そっか、この人セブが復活したとこまでしか見てないから、今も中身が私のままだって知らないんだ。


「あっ、どうも~、お久しぶりで~す……」


 仕方ないから由紀として喋ってみたら、巫女のテンションが露骨に下がった。ついでにモルのテンションも下がった。理不尽すぎない?


 とりあえず部屋に入れてもらった私たちは、巫女にどうしてこうなったのか尋ねてみた。


「マテリア侵攻が未遂に終わったことで、シナリオに綻びが生じ始めてるんだと思います。エンディング後の婚約イベントフラグがいきなり立って……」


 巫女の見解もだいたい私と同じだった。


「ならば巫女をここから連れ出すのは得策ではないだろう。王子どもが何をしでかすかわからん」

「……」


 巫女は私が魔王口調で話すのを好まない。でもこっちとしてはモルたんの士気が最優先なので、このまま貫き通す。


「……ルビーの求婚を断ったら、ヴァニアが突然巫女様呼びを飛ばして姫呼びになったんです。そのまま部屋に閉じ込められて今に至ります」


 うわぁ、マジか。ヴァニアの好感度上げには三段階のフェーズが用意されてる。出会ったばかりの頃が第一段階。姫ちゃんって呼ばれるこの時期はとにかく好感度が上がりやすい。

 ところがある程度仲良くなると、呼び方が「巫女様」になって急に冷たく突き放されるようになる。これが第二段階。

 それでもしぶとく好意を伝え続けることでとうとうヴァニアが心を開き「姫」呼びの第三段階に到達する。こうなったらほぼ個別ルートに突入することになる。


 要するにこれって、ルビールートを破棄したら強制的にヴァニアルートになったってことだよね? ……たぶんだけどこの場合、厄介なのはカインよりヴァニアだ。


「ヴァニアは『行ける』って思ったら引かないからなぁ……」


 やばっ、つい素の口調が出ちゃった。ごめんモルたん。

 私の口調で話す魔王が物珍しいのか、スカルがまじまじとこっちを見てくる。魔王の威厳を保つべく一睨みすると、スカルは慌てて目をそらした。


「ヴァ、ヴァニア兄さんは、巫女さんのことが好きだったんだと思います。でも、ヴァニア兄さんは……昔からずっとルビー兄さんに勝てるわけないって思ってたから……」


 そうなんだよね。カインが兄上大好きなのとは対照的に、ヴァニアは優秀な兄にかなりのコンプレックスを持ってる。

 絶対敵わないと思ってたルビーが巫女にフラれて、もしかしたら自分にチャンスが……って思っちゃったんだろうなぁ。


「あたしは別にこれ以上王子の協力は要らないので、連れ去ってくれて構わないです。追加ルートに進めば、世界は救えるので」

「それは無理だ」


 追加ルートは解釈違いなので。


「そもそも、あの時はんぺんさんが大人しく死んでくれないからこんなことになってるんですよ?」

「推しの前でHN(ハンネ)出すの禁止ィッ!」


 モルたん本当にごめん。やっぱりこの人の前で魔王口調維持するの無理です。


「ここは一つ、この周はヴァニアルートで進行いただくってことで……」

「なめたこと言わないでください刺しますよ」


 こっっっわ。てかこの人一応王子(スカル)の前だけど猫被っとかなくていいのかな。

 あと、今ってこんな漫才してる場合じゃないよね。急がないとカインたちが戻ってきちゃう。


「み、皆さん、大変です!」


 ほら言わんこっちゃない。みんなで一斉にスカルの方を見ると、返ってきた言葉は思ってもみない一言だった。


「魔王様の魂? が、目覚めそうです!」


 このタイミングで!? 目覚めるっていったい何をどうすれば!?

 混乱する私にモルがさっと何かを握らせてきた。目覚めのハーブだ。


「陛下のお体に強い苦味を味わわせること、誠に不本意ですがご容赦ください」


 申し訳なさそうな感じのこと言ってはいるけど、完全に笑顔だ。推しの貴重な爽やか笑顔、眩しい。


「安心してください。いざとなったらソウルイーターもあります」


 巫女までジョブチェンジしてノリノリだ。もうダメですこの人たち。


「急いで! もうすぐ兄さんたちが来ます!」

「わかった! わかりました食べます!」


 えーいこうなったら勢いだ! 私は貪るようにハーブを口の中に突っ込んだ。



この状況で交代してどうするんだ~!?


次回更新は火曜です!

引き続きよろしくお願いします!

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