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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第2章:推しと対話

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2-3:塔の上に幽閉されたお姫様を助ける的なやつ

 最強の魔王セブリオン・マテリア(中身はオタク)と、主人愛が若干重めな完璧従者モル。二人そろってナチュリアのお城に参上したわけですが。


「スカルはどこだ?」


 お城の門番にはすんなり入れてもらえたし、話は通ってるんだろうけど。肝心の依頼者本人がどこ行ったのか。

 ……と噂をすれば、前方にスカルっぽい人影が。


「お待たせしてごめんなさい……! こっちです!」


 息を切らしながらやってきたスカルの先導に従い、城の東西両端にある塔へ移動する。ちなみに巫女がいるのは西の塔だ。


「ヴァニア兄さんが西の塔全体に結界を張っちゃってて、ぼくだけの力じゃ近づけないんだ」

「なるほどな」


 待って困るそういうの。セブ本人なら余裕だけど、私には結界を破るような力なんてこれっぽっちもありませんけど!?


「ルビーとカインは何をしている?」


 戦力を増やしたい一心で私はスカルに兄王子たちのことを尋ねた。

 ていうかそもそも、マテリアの魔王と従者を呼びつけておいてご挨拶もなしとはいい度胸だよね。こっちはあんたらが起こした面倒ごとを片付けるためにわざわざ来てるっていうのに。


「ルビー兄さんならこの時間は騎士団の稽古に出ているはず。カイン兄さんはどこだろう……いつも忙しそうにあちこち回ってるから……」


 これは私の推測だけど、たぶん今は原作でいうところの「日常」パートに分類される。

 原作ゲームの「暁光(ぎょうこう)の巫女と慈雨(じう)の巫女」には「日常」パートと「探索」パートがある。

 主にお城の中で王子たちと交流して絆を深めたりパラメータを上げたりするのが日常で、お城の外でダンジョンに潜って敵と戦い経験値を積んだりレアアイテムを手に入れるのが探索。


 ゲームでは五日間の日常パートと二日間の探索パートを繰り返しながら暦を進めていく。んで、日常パートでの王子たちの行動パターンは決まってるんだよね。

 ルビーは騎士団の稽古場で稽古、城の廊下でカインと立ち話、自室で読書、騎士団の稽古場で稽古、庭園で散歩の順に日替わりで繰り返す。

 カインは大臣たちと政策会議、城の廊下でルビーと立ち話、城外の視察、庭園で散歩、蔵書室で調べものを同じく日替わりで。


 もちろんこれはあくまでもゲーム上での話だから、実際の彼らはもっといろんなことしてるんだろうけど、だいたいの行動把握にはこれで十分。ルビーは稽古中みたいだし、せめてカインに来てもらえないかと思った私は、さりげなく予定を確かめてみた。


「今日、大臣たちと会議の予定は?」

「今日はなかったと思います」


 ってことは庭園だ。ならこっちには来ないな。結界解除を手伝ってもらうのは無理そう。

 ルビーとカインの「庭園で散歩」は似て非なるもの。ちょっと一人で息抜きしたいだけのルビーとは違って、カインのそれには明確な目的がある。だからまず間違いなくこっちには来ない。

 戦力として使えないのは痛いけど、メリットもある。二人が来ないなら正体バレの危険を顧みず多少大胆に行動してもいいよね。モルたんには悪いけど。


「着きましたっ。ここが塔の入口です……あれっ?」


 スカルが辺りをきょろきょろ見回しながら首を捻ってる。


「どうした」

「いえ、あのっ、結界が……」


 スカルの言葉通り、塔に張られているはずの結界がどこにも見当たらない。


「今朝はあったんですけど……もしかしてヴァニア兄さん、カイン兄さんと和解したのかな」

「楽観的すぎるな。警戒を怠るべきではないだろう」


 罠の可能性もあるし、あるいは――誰かが結界を破った可能性もある。警戒するに越したことはない。

 モルも同じ考えのようで、主を庇うように前に出ると、塔入り口の扉に手をかけ、開いた。先んじて中に入り、気配を探りながら周囲を注意深く観察した後、モルはこちらに声をかけた。


「異常ありません、陛下。こちらへ」


 モルに促され、私も塔の中に足を踏み入れた。スカルもその後に続いて入ってくる。この王子が一番先に行くべきじゃ、と思わなくもないけど、きっとモルは自分で安全を確認しないと気が済まないだろうからそのままにしておく。


 入ると中は薄暗く、目の前には上り階段があった。中央の階段を囲むように廊下が敷かれていて、三方の壁にはそれぞれ一枚ずつ木製の扉がついていた。


「巫女さんの部屋は五階の西です」


 そうなんだ。原作だと、選択肢から行きたい場所を選ぶだけでそこに行ける仕様だったから、正確な部屋の配置って実は知らないんだよね。五階か。毎日上り下りしてるのかな、巫女。足腰強くなりそう。


 とりあえず階段を上って五階を目指す。現代日本にいた頃の私からは考えられないけど、魔王のガワのおかげか息一つ切らさず上ることができた。ありがとうセブ。

 もうすぐ五階に着きそうというところで、モルがさっと前に出て私を引き留め、その場で待つよう合図を送る。何か、いるんだと思う。私には全然わからないけど。


「たぶんヴァニア兄さんだと思うから、ぼくが様子を見てきます」


 スカルが先に階段を上りきって、裏手にある巫女の部屋へと回った。私とモルは階段の途中でじっと息を潜めて様子を窺う。


「っ……カイン兄さん!? どうしてここに……」


 私は思わずモルと目を見合わせた。カインは今庭園にいるはず。ここにいるということは、ヴァニアの結界を破ったのはカインだったってこと?


「規模が大きなだけで構築はお粗末。俺からすればあのようなもの、結界とは言えんな」


 こいつ本当いちいち癇に障る言い方してくるんだよね。こいつとか言っちゃった。ごめんカイン。


「安心しろ。ヴァニアに危害を加えるつもりはない。俺は暁光の巫女に報いを与えるだけだ」


 どうやらカインは巫女に相当お怒りみたいです。モルたんが解せぬって顔してる。断られたルビー本人じゃなくてなんでカインがキレてんのって感じだよね。


「だめだよ兄さん、巫女さんに酷いことしないで」

「邪魔立てをするならお前相手でも容赦はしないぞ、スカル」

「巫女さんは悪くないよ。きっと突然すぎて驚いちゃっただけだよ」


 あっ、たぶんその言葉は逆効果。


「スカル、覚えておけ。突然の出来事に対する反応こそ、その人物の本性が現れるものだ。だからこそ、俺は兄上の弟として巫女に報いを与えねばならん」


 怒りのボルテージが溜まっているのか、カインの声は離れて聞く私たちでもわかるぐらいに震えていた。


「巫女は俺の……俺の兄上を愚弄したのだからなァッ!!」


 そう、カインは兄上大好き、兄上ガチ勢なのだ。

 その徹底ぶりはとにかくすごくて、「兄上を喜ばせてくれる巫女が好き」という理由だけでカインの好感度は兄王子ルビーの好感度と完全に連動して上がるようになってる。

 その分、少しでもルビーに冷たくしようものならルビー本人以上に好感度が爆下がり。そういう恐ろしいやつ、それが第二王子カインだ。

 ちなみに庭園の散歩も、騎士団の稽古場で鍛錬に励む兄上をこっそり遠巻きに覗き見るためにやってる。


 そういうわけだから、この状態になったカインを正気に戻すのはかなり大変。スカル一人じゃ荷が重すぎる。

 ここで顔を出したらカインとの戦闘が発生しちゃいそうで嫌なんだけど、助けに行くべきか、このまま待つべきか。


 そこへ、もう一つの声が乱入する。


「ちょっとちょっと~、スカルもカイン兄さんもあんまり人の部屋の前で騒がないでくれる~?」


 ヴァニアだ。スカル曰く巫女を閉じ込めて塔に結界を張った張本人。よりによってこのタイミングで部屋から出てこなくてもいいのに。


「ヴァニア、巫女を出せ。そこにいるのだろう?」

「兄さん、もしかして焼きもち? 悪いけど姫は渡さないよ」


 巫女の呼び方が「姫ちゃん」から「姫」になってる。これはヴァニアの好感度が上がってルート進行したことを意味する。

 いや、今はそんなこと気にしてる場合じゃない。この王子たち、今にもこの場で戦い始めかねない雰囲気だ。

 そうなったら確実に巻き込まれるし、まずこの塔が無事じゃすまない。スカルもそのことをわかってるから、一生懸命二人を説得しようとしてる。


「に、兄さんたち落ち着いて。一旦外に出て話し合おうよ……」

「話し合う? その必要がどこにある? 俺はこの塔が壊れようが構わん。巫女に己れの愚行を悔い改めさせることさえできればな」

「ムダだよスカル。カイン兄さんはこうなったら力ずくで止めるしかないって」


 スカルの説得もむなしく、兄王子たちはこの場で戦闘を開始するつもりらしい。風の音が聞こえる。ヴァニアが巫女の部屋に結界を張り直したんだろう。カインも詠唱を始めてる。この人たち、やる気満々だ。これはもう出るしかないよね。


「行くぞ、モル」


 モルは主の目を見て頷くと、主の体に守護の術を施し先んじて階段を上った。私も後に続き、二人で王子たちの前に姿を現した。



バトル、始まるのか?


次回更新は明日!

引き続きよろしくお願いします~!

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