表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第1章:推しに転生

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/10

1-2:いきなり正体バレてませんか?

 私の目の前に鎮座ましますこのタヌキモモンガは、推しの体に転生した哀れな女オタクの嘆きを余すところなく聞いていたらしい。聞かれてしまったからには仕方ない。今の私は泣く子も黙る最強の魔王。


()むを得ん、処分するか……」


 容赦なく首根っこを掴み上げ、燃えるゴミでいいかなと呟く私に、タヌキモモンガはギャーギャーと喚きだした。


「オイオイ待てって! 人様の部屋のもん勝手に捨てんなよ!」

「いや、あんた原作で見たことないから。完全に侵入者でしょ」


 いっけな~い、魔王っぽい口調忘れてつい素が出ちゃった☆ まあええか。このぬいぐるみにはすぐ消えてもらうわけだし。


「侵入者ァ!? それはオメーだろ! 俺っちはセブリオンお手製の使い魔兼城内監視役兼癒し系マスコット、ピッピ様だ! オメーよりずっと前からここにいるっつーの!」


 チッ、よくしゃべるタヌキモモンガだ。でもその声に聞き覚えはないし、セブにそんな使い魔がいたなんて設定は今まで見たことも聞いたこともない。

 まさか、どっかのオタクの二次創作が逆輸入されちゃった感じですか? そういうの私的にNGなんですが……と顔をしかめつつ、私はまじまじとタヌキモモンガを見た。


 あれっ? 散々喚き散らす声に影響されたのか、確かにどこかで見たことあるような気がしてきたような……。


「あっ」


 わかった。あれだ。追加ルートで解禁されたセブの部屋スチル。その背景の隅っこの方に、いたわ。こいつ。

 そっか、あれこの部屋だったんだ。私はピッピと名乗ったタヌキモモンガを若干丁寧に抱え直すと、もといたチェストの上にそっと置いた。それから数歩後退り、指で四角い枠を作って覗き込んでみた。


「うわ~~~~セブの部屋だ~~~~!」

「ったり前だろタコ」


 口の悪いタヌキだ。こっちは原作のスチル再現で至上の喜びを享受しているとこなんですが?

 ってか、ちょっと待って。もしかして今、かなりヤバい状況?

 本当にピッピがセブの使い魔なら勝手に捨てるわけにはいかないし、でも私がセブじゃないことは完全にバレてるっぽいからこのままにはしておけないし……詰んでない? これ。


 冷や汗が止まらない私に、ピッピが怪訝そうに話しかけてきた。


「しっかしアンタもうまく化けたもんだなー。魔王セブリオン・マテリアに成り代わって城に侵入するなんて、すげーこと考える奴がいるもんだぜ。バレたら一族郎党皆殺しだけど、大丈夫か?」


 全然大丈夫じゃないです。しかも何か勘違いされてるし。私はセブに変身してるんじゃなくて、セブそのものになってしまってるんですが……!?

 もういっそ正直に全部説明するか? 変な勘違いされたままよりは、正体バラしてこいつを味方につけた方が早そう。本物が戻る前に早く逃げた方がいいぜーって笑うピッピの誤解を解くべく、私は真剣に事の経緯を説明した。


「要するに、アンタは異世界から来た『ユキ』とかいう女で、どういうわけかセブリオンの体に魂が入り込んじまったって言いたいのか?」

「話が早くて助かる」


 由紀(ユキ)こと私は話が通じたことに一先ず安堵した。自分で言ってても突飛すぎるし、信じてもらえないかもって思ってたから。


「嘘つくならもーちょっとマシなの考えろよなー」


 げっ、やっぱり信じてもらえてない。こうなったら魔王セブリオン・マテリアの魔力を遠慮なく行使してこいつを焼き払い、燃え()ゴミとして処分するしかないか。

 私の思考が顔に出ちゃってたのか、命の危機を感じたらしいピッピが急に焦ったような声で私に話しかけてくる。


「な、なぁ、ユキ。アンタ『原作』がどーとか言ったよな?」

「うん」

「つまりアンタは、この先の未来で何が起こるか全部知ってるってことなのか?」


 信じるのか信じないのかどっちかはっきりしてほしい。私の脳内で筋肉自慢の芸人がそう訴えている。


「ルート分岐あるから正確にはまだわかんないけど、基本的にはセブもモルも三年以内に死ぬ」

「うわーマジかー……」


 ピッピはぬいぐるみだからか、手足も表情も一切動かしてない。ただ音声だけが体のどこかから鳴ってる感じだ。その音声が何やら思案しているふうにゔ〜とかあ゛~とか呻いているのを、私は黙って聞いていた。


「俺っち的にはさ、魔王の中身がセブリオンだろーがアンタだろーが、ぶっちゃけどーでもいーわけ」


 なんて奴だ。使い魔の風上にも置けんな。


「だけど魔王の()()が無くなるのは困るんだわ。魔王の魔力に依存してこっちは生きてるんでね」

「身も蓋もないタヌキだな」


 私の悪態にも動じず、ピッピは提案を持ち掛けてきた。


「ユキだってその体のまま死にたくないだろ? 外に出れるよーに俺っちがサポートするからさ、ユキは俺っちに、どーすればその『死亡ルート』にならないで済むか教えてくれよ。もちろん、このことは誰にも内緒な」


 なんとこのタヌキモモンガ、全面的に私に協力するつもりらしい。……そこまで言われると逆に怪しい。話がトントン拍子に進みすぎてる。

 露骨に顔をしかめた私に、ピッピが事情を説明してくれる。


「俺っち、見ての通り自分じゃどこにも行けねーの。だから心配しなくても、ユキのことは誰にも話せねーってこと」

「動けないなら、そもそもどうやってサポートしてくれるわけ?」

「そりゃあ、もちろん……」


 得意げに何か言おうとしていたピッピを、控えめなノックの音が遮った。続いて、完璧な従者の完璧な美声が扉の向こうから響いてくる。


「陛下、朝食のご用意が整いました。こちらまでお持ちしましょうか?」


 モルたん! そうそうこれこれ、お仕事モードのモルたんはセブのこと「陛下」って呼ぶんだよね! 二人っきりの時だけ聞ける「我が君」とのギャップがたまりませんな~!

 陛下としては今すぐ朝ご飯をいただかないと。タヌキに構ってる場合じゃない!


「いや、いい。今行く」


 いかにもそれらしく返して、私は朝食ついでに城を見て回ることにした。


「おーい、ユキ」


 軽く身なりを整え、一応原作でセブが身に着けている「魔王特有の丈の長いマント」を装備して部屋を出ようとした私を、ピッピが何故か小声気味に呼び止めた。


「あいつはやべーから絶対お前の正体ばらすなよ」

「モルたんのこと? 確かにモルたんはちょっと主人愛重めなとこあるけど、そこがモルたんの魅力なわけだし、やべーってのはさすがに言いすぎじゃない?」

「だからこそだ。もしお前の中身がセブリオンじゃないってあいつにバレたら、とんでもねーことになるぞ」


 一理ある。けど、推しが「やべー奴」扱いされてちょっとムカついた私は、ピッピの忠告を棒読みで適当に受け流すことにした。


「あーはいはい気をつけまーす」


 言うが早いか部屋を出て扉を閉め、恭しくお辞儀をするモルたんとともに私は食堂へと向かった。


「ちょっと重め、どころじゃねーんだっつーの……」


 ピッピの溜息交じりのぼやきは私の耳まで届くことなく、扉に阻まれ消えていった。



本日もう一話更新します!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
Xからお邪魔しました。 ピッピのキャラが良すぎる(笑) タヌキモモンガのぬいぐるみなのに口が悪いのが良き(笑) 最後の呟きがめちゃ気になる……ブクマさせて頂きましたので、楽しみに読み進めます!
セブの部屋の隅にいた「タヌキモモンガ」ことピッピとの秘密の同盟! ユキさんのメタ知識とピッピの生存本能がタッグを組む展開にワクワクしますね! でも、ピッピが残した「あいつはやべー」という不穏な予言…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ