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魔王に転生したけど私、解釈違いです!~完璧な従者と最強の魔王の関係性を拗らせたオタク、自らの存在が解釈違いすぎる~  作者: 片吟堂
第1章:推しに転生

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1-13:人生で一番最悪の情報開示

 セブの自室に戻った私は、居眠りしていたピッピを叩き起こし、二度目の訪問イベントの顛末についてかくかくしかじか語り聞かせた。


「要するに、問題点は三つだな。巫女が早く来すぎたせいでタイムリミットまであと一か月しかない、セブリオンの魂と話す手掛かりはさっぱり、ヤベー従者がなんかヤベーことしてきた」

「さすピ(さすがピッピ)」


 ピッピが有能すぎて新たな単語が生まれちゃった。従者は完璧だし使い魔は有能だし、マテリア王国ってもしかしてみんなしごできな感じですか?


「とりあえず一つめ……はこっちでどーにもできねーし、焦ってもしょーがねーだろ」

「そうだよね。さすがに巫女も三度目の訪問イベは早めないだろうし。残り一か月、できることをやっていくしかないか」

「おっしじゃあ次な。セブリオンの魂と話す手掛かり。こればっかりは俺っちにもお手上げだからなー。ユキ、原作で何かヒントになりそーなイベントとかねーのかよ?」


 可能性があるとすれば、魂に触れる秘術だ。ナチュリアの第四王子スカルから教えてもらえる特殊スキル。

 だけど、暁光(ぎょうこう)巫女(みこ)ですら聞き出すのに手こずっているものを、マテリアの魔王がのこのこ出かけていって教えてもらえるとは到底思えない。


「セブなら普通に知ってそうな気がするんだけど、それを聞き出すには結局セブの魂と話せなきゃだめだし……」

「それに、あれだろ? 三度目の訪問までにはその体から出ないとヤベーんだろ?」


 そうなんだよね。結構いろいろ頑張ってるんだけど、進捗はゼロ。


「そもそも私が外に出るには、受け皿っていうか入れ物っていうかー、何かしらの体が必要になると思うんだよねー……」

「おい何だその目はぜってー嫌だからな」

「チッ。じゃあ錬成するしかないか……?」

「詳しいことはわかんねーけど持ってかれるからやめとけー」


 絶対知ってるだろ。いけない、ふざけてる場合じゃなかった。だけど、一番何とかしなきゃいけないこの問題がいつまで経っても解決しそうにないの、結構きついんだよね。


「う~何か煮詰まってきた。次いこ次!」


 空元気でそう言ってみたはいいものの、残る問題はモルについて、だ。正直圧倒的に気が重い。

 あのときモルは、私に何か術をかけた。間違いなく。モルがセブを裏切るなんて絶対絶対天地がひっくり返ってもあり得ない。けど。いくらなんでも怪しいところが多すぎる。


「あいつも転生者なんじゃね?」


 いやいやいやさすがにそれは……いや、でも、原作にない台詞を言ったり、原作で知らないはずのことを知ってたり……転生者だって考えれば辻褄は合う。

 でも待って。そうだとしても、やっぱりおかしい。


「転生者……ではないと思う。私がナチュリアに行ったのは原作にない行動でしょ? 本当にセブと魂で繋がってるモル本人じゃないと、あのとき助けには来れなかったはず」


 あのときモルは気配を消す術も使ってた。巫女はともかくとして、私と同じように体を奪っただけの転生者なら、魔術の類が使えるのは変。


「それに、もしモルが転生者なら、さっきの訪問イベで名乗り出ないのも引っかかる。だって私たち、明らかに原作と違う台詞喋ってたし」


 少なくとも、巫女が帰った後で私にだけは名乗り出ていいはず。


「なるほどなー。じゃ、あいつは単にセブリオンを裏切ってるだけってことか」

「いや裏切ってるかどうかはまだわかりませんけど。モルたんにはモルたんなりの考えがあってセブのために行動してるかもしれないじゃないですか」

「あー悪い悪い俺っちが悪かったって」


 ついオタク特有の早口が発動しちゃった。ピッピがやれやれって感じで溜息ついてる。


「ユキは本当あいつのことになると見境ねーよな」


 ピッピが全力で私の地雷を踏み抜いていくのが悪いような気もするんだけど、確かにピッピの言う通り、私、オタク特有の視野狭窄に陥ってたかもしれない。ちょっと反省。


「なんかごめん」

「気にしてねーよ。ユキはあの二人が死んだり死ななかったり、俺っちが知らねーいろんな末路を見てきたんだろ」


 末路て。合ってるけど言い方よ。


「見てきたもんが違げーんだ。今見えてるもんも違って当然じゃね?」


 ピッピ、いいこと言うじゃん。出会った当初燃やそうとしてごめん。


「ま、そーゆーわけで、俺っちは魔王のガワさえ生存してくれりゃ何でもいーからよ、テキトーによろしく頼むぜ~」


 うん、やっぱり使い魔の風上にも置けないクソタヌキだな。いつか燃やす。


「じゃあさ、ピッピの目から見て、訪問イベのモルはどうだった?」

「ゴメン、俺っちまあまあ序盤で寝てたからわかんねーわ」

「このクソタヌキ……肝心な時に……!」

「しょーがねーだろ? 俺っちの千里眼は音声拾わねーんだから。絵面が動かねーと暇なんだよ~」


 いや結構絵面動いてたと思うけどな!? モルが跪いたり剣抜いたりしてたよ!?

 まあ、寝ちゃってたものは仕方ない。私視点の情報にはなるけどもう一回詳しく説明して、あのときモルが私に何を仕掛けたのか、ピッピの意見を聞いてみよう。


「目を見る、手に触れる……この辺りは精神や肉体を操作したり支配したりするタイプの術でやりがちだな」

「えっ!? じゃあ私が急にモルたんに操られてピッピをぶん殴っちゃうかもしんないってこと!?」

「なんで嬉しそうなんだよ。まー、可能性としちゃありうる話だな。特に目を見るってのは相手の精神とか魂に働きかけたいときに使われる手段だ」

「ちょっ、それってマズくない? セブの魂じゃなくて私の魂がこんにちはしちゃったかもってことでしょ?」

「そーゆーことになるな」


 どうしよう。そりゃ最初に正体バラそうとしたのはこっちだけど、今のモルに私の正体バレるのって危険な気がするんだけど。


「おいおい、あくまで可能性の話だぜ? あいつが本当にユキに気づいたのかはまだわかんねーし、あいつが転生者だって可能性も残ってるからな」


 急に焦り出した私に、ピッピはちょっと呆れた感じでフォローを入れてくれた。もはやフォローになってるのかもわかんないけど。


 何か、一気にどっと疲れたな。モルに正体バレてるかもってのが大きい。


「はー何か今日は疲れた。セブモル小説でも読んで寝るか」


 呑気な声で会話を終わらせると、ピッピはそれ以上何も言ってはこなかった。(ユキ)の脳はもう限界ですって何となくわかってくれたんだと思う。


「……ユキ」


 セブモル小説を読むべく例によってピッピを壁の方に向けたら、突然いつになく真剣な声で名前を呼ばれた。


「……どうしたの?」


 少し迷ってもう一度ピッピをこっちに向けてから、私は尋ねた。


「言おうかどうか迷ってたんだけどよ、言うわ」


 ずいぶん勿体ぶった言い回しだ。私は固唾を呑んでピッピの言葉の続きを待った。


「それ……読んでるぜ、あいつ」


 そ……れ……? それって、これ? 私が今読もうとしている、これを……? モルたんが……?


 目の前が真っ暗になるって、こういうことを言うんだ。現実を受け入れることを、頭が拒否してる感じがする。

 というか、だよ。これ読めるってことは、


「絶対転生者じゃねーか!!」


 クソデカボイスが出ちゃった。ピッピが慌て声で何か言ってる。


「違う、ユキ、ゴメン俺っちの言い方が悪かった! 読んでるっつーか、解読だ解読!」

「解読? 私の書いた駄文があまりにも読みづらい怪文書だったってことですか? 余計にダメージ受けたんですが」

「や、マジで違げーんだって。辞書引きながら解読してたんだって」


 辞書? 現代日本語について書かれた辞書なんて、この世界にあるわけ……。


「あ゛」


 あるわ。あります。蔵書室の奥にひっそりとしまわれた本。公式がオタクのために用意した隠しコンテンツ。この世界の文字と現代日本語の五十音対応表……!

 まずい。あれ読まれたら、少なくともひらがなは解読される。この世界の文字はカタカナを上下左右反転させてちょっといじったものだから、カタカナも普通に読まれそう。数字は共通。そうなると、漢字以外は全部……読めるな……。


 何より最悪なことに、手書きで細かい字書くのしんどかった私は、まあまあひらがなを多用しちゃってる。つまり、まあまあ読めちゃう。


「無理無理無理無理死ぬ死ぬ死ぬ死ぬ終わった無理終了死」


 最悪な寿限無みたいなワード吐いちゃった。でもこんなの、社会的死だろ。推しの目にこんなものを触れさせてしまった。そりゃ私の正体に疑念も抱くわ。

 だって自分の主が見たことない文字でセブモル小説なんて書くわけないもん。


 ……改めて、明日ちゃんとお話ししよう。私の正体について。あとは全力詫び土下座だ。

 油断してた。現代日本語なら読めないから大丈夫って。甘かった。モルたんは完璧な従者だ。主が書いたものを、モルたんが読めないわけないよ。読むなって命じておくべきだった。それはそれで恥ずかしいけど。


「ねえピッピ。謝ったら、許してもらえるかな……」

「俺っちに聞くなよ。内容次第じゃねーの?」

「そう……だね……」


 みんな私のリアクションで何となく察しがついたと思うけど、はい、ちょっといかがわしいやつも、書いてました。


 ごめんでも言い訳させて。現代日本にいた頃はそんなの書いたことなかった。私はあくまでも「セブモルは主従、非恋愛」派だから。これは今でもそう。

 でも、読みはしてたわけ。そりゃあもう、いろいろ。節操なく。そしてこの世界に書き手は私しかいないわけ。私が書かなきゃ、読めない。

 だから……つい……まさか読まれてるなんて思ってなくて……。

 でも、ちょっとね!? ちょっとだけ! そんなに激しいの無いから! 18歳未満でも読めるレベルです!


「ま、ドンマイ。強く生きろ」


 こいつ、他人事だと思って……! 完全に自業自得だから何も言えない……!

 お願い早く明日になって一刻も早く詫び土下座させて。

 いや無理やっぱ無理! 明日にならないで! 怖い! ああああ!!



とんでもないことになっちゃいました……!

次回更新は木曜です!

引き続きよろしくお願いします~!

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