『稚拙』
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第六十八章:工作員Zの受難 —— 『書類地獄』
ゾルグ帝国のエリートスパイ、コードネーム『Z-99』は、地球人の姿に完璧に擬態し、帝都・東京の地に降り立った。
彼の任務は、都市機能を麻痺させるための破壊工作だ。
「フフフ、見ていろ地球人ども。内部から崩壊させてやる……」
意気揚々と潜入を開始した彼だが、最初の壁は、湊の警備網ではなく、「日本の官僚主義」だった。
1. 住所不定の壁
潜伏拠点としてアパートを借りようとしたZ-99は、不動産屋で絶望した。
「えっ、保証人? ……いません」
「緊急連絡先? ……母星は50光年先です」
「住民票? 印鑑証明? マイナンバーカード? ……な、何だそれは!?」
身分を証明する地球の書類が何もない彼は、契約どころか門前払いだった。
「くそっ! 高度なセキュリティだ!」
2. 銀行口座の壁
破壊工作の資金(現地通貨)を得るため、銀行口座を作ろうとしたが、ここでも「身分証がない」ため撃沈。
仕方なく日雇いバイトで現金を稼ぐことにしたが、今度は「給与振込先の口座がないと雇えない」と言われる無限ループ。
「ええい! 私は銀河最強のスパイだぞ! なぜコンビニのレジ打ちすらさせてもらえん!」
3. そして、警察の壁
数週間後。
書類地獄で精神をすり減らし、公園で野宿していたZ-99は、巡回中の警察官に職務質問された。
「君、こんな時間に何してるの? 身分証ある?」
「ひっ……!」
彼はパニックになり、懐の小型プラズマ爆弾を取り出そうとした——が、手が滑って落としてしまった。
「あーっ! 君、ゴミをポイ捨てしたね!? 軽犯罪法違反だぞ! 拾いなさい!」
「は、はい! すみません!」
反射的に謝って爆弾を拾った彼は、そのまま交番へ連行され、破壊工作ではなく「ゴミの分別マナー」について2時間説教された。
彼は心を折られ、そのまま真面目な清掃員として第二の人生を歩み始めた。
第六十九章:傾国の美女 —— 『絶対零度の鉄壁』
スパイ作戦の失敗(連絡途絶)を受け、ゾルグ帝国は次なる手を打った。
皇帝暗殺のためのハニートラップだ。
送り込まれたのは、銀河一の美女と謳われる暗殺者、ヴァネッサ。
彼女の種族は、あらゆるオスを魅了する強力なフェロモンを常時発している。
「フフフ、どんな独裁者も、私の前ではただのオス犬よ。ベッドの中で首を掻き切ってあげるわ」
1. 効かないフェロモン
ヴァネッサは、帝都で開催されたパーティーに潜入。
胸元が大きく開いたドレスで湊に接近し、濃厚なフェロモンを浴びせかけた。
「……む?」
湊が鼻をひくつかせた。
(かかったわ!)ヴァネッサが勝利を確信した瞬間。
「玲奈。空調のフィルターが汚れているようだ。妙な甘ったるい臭いがする。交換させろ」
「……は?」
湊は「進化」しすぎており、生殖本能が極めて希薄になっていた。彼にとって異星人のフェロモンなど、ただの「変な匂いの芳香剤」でしかなかった。
2. 物理的接触の失敗
焦ったヴァネッサは、直接体に触れようと、わざとらしくつまずいて湊の胸に飛び込んだ。
「きゃっ、ごめんなさい陛下……♡」
しかし、湊は彼女を抱き止めるどころか、一歩横に避けた。
ドサッ、と無様に床に倒れ込む銀河一の美女。
「……おい。私のスーツは最高級の繊維だ。お前のファンデーションで汚すな」
湊は冷たい目で彼女を見下ろし、ハンカチで触れてもいない場所を拭った。
「それと、体幹が弱すぎる。明日のラジオ体操に参加して鍛え直せ」
3. 侍女の嫉妬
屈辱に震えるヴァネッサが、最後の手段として隠し持っていた毒針を取り出そうとした時。
背後から、絶対零度の殺気が彼女を貫いた。
「……お客様? 陛下のお体に、何か御用でしょうか?」
玲奈だった。笑顔だが、目が完全に笑っていない。
その背後には、帝都中の《影》が渦を巻いて集結していた。
「ひっ、ひいぃぃぃ!?」
ヴァネッサは恐怖で失禁し、その場で気絶した。
彼女はその後、玲奈によって「礼儀作法矯正スクール(という名の強制収容所)」に送られた。
第七十章:最終兵器ウイルス —— 『健康優良惑星』
二つの作戦が失敗し、後がなくなったゾルグ帝国は、禁断の手に手を出した。
バイオテロである。
彼らが開発した『キラーウイルス・ゾルグ株』は、感染すると全身の細胞が壊死し、24時間で宿主を溶かしてしまう最悪の生物兵器だ。
彼らはこれを、帝都の水道水に混入させた。
「これで終わりだ、地球人! 苦しみ抜いて死滅せよ!」
1. 地球人の免疫力
翌朝。
帝都の住民たちの体に異変が起きた。
「あれ? なんか今日、ちょっと体がダルいな?」
「熱っぽいかも。37度2分もあるわ」
……それだけだった。
湊の統治下で、最高の医療(ソフィのナノマシン技術)と、ストレスのない生活、そして栄養満点の食事を享受していた地球人の免疫力は、銀河平均を遥かに上回っていたのだ。
殺人ウイルスは、地球人の体内に入った瞬間、白血球とナノマシンにタコ殴りにされ、ただの「風邪菌」レベルに弱体化していた。
2. まさかの進化(適応)
さらに、ウイルスにとっての誤算があった。
地球人の体内に常駐する「真空適応用の共生バクテリア」が、ウイルスを取り込んでしまったのだ。
その結果、ウイルスは変異を起こした。
毒性を失い、代わりに宿主の代謝を活性化させる「善玉菌」へと進化したのである。
3. 恐怖の大ブーム
数日後、帝都では奇妙なブームが起きていた。
「ねえ、聞いた? 最近流行ってる『ゾルグ風邪』ってやつ」
「ああ、あれ引くと、治った後になんか肌がツヤツヤになるらしいな」
「肩こりも治るって噂よ!」
テレビの健康番組が特集を組む。
『驚異のデトックス効果! 話題の「ゾルグ菌」とは!?』
ゾルグ皇帝は、母星のモニターでその番組を見ていた。
アナウンサーが笑顔で締めくくる。
『この素晴らしい菌を提供してくれた、未知の隣人に感謝ですね!』
「ぶっ……ぐはぁっ!?」
ゾルグ皇帝は、あまりのストレスで吐血し、倒れた。
彼らの全力の搦め手は、地球を少し健康にしただけで終わったのだった。
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次回は明日20:10に更新予定です。
次の話:『服従』




