『無謀』
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第六十六章:井の中の蛙、宇宙の「壁」を知らず
地球から約50光年離れた宙域に拠点を置く、軍事独裁国家『鋼鉄帝国ゾルグ』。
彼らは、圧倒的な艦隊数と、惑星をも砕く「陽電子破城槌」を武器に、近隣の星々を荒らし回っていた。
彼らの次なる標的は、最近銀河で噂になっている「辺境の観光惑星・地球」だった。
「観光地だと? 軟弱な! 腑抜けた連中から富を奪い尽くしてやる!」
ゾルグ皇帝の号令の下、大型戦艦3000隻からなる大艦隊が、太陽系へのワープを敢行した。
1. 冥王星沖の「無視」
『警告。こちらは地球帝国・太陽系防衛圏です。貴船団は許可なき侵入者と認定されました』
冥王星軌道上の自動ブイが警告を発するが、ゾルグ軍はこれを一笑に付した。
「ガラクタが! 踏み潰せ!」
彼らは猛スピードで進軍する。
その途中、カイパーベルトに整列している無数の「銀色の正八面体(調停者)」を目撃したが、彼らはそれを知らなかった。
「なんだあの置物は? 邪魔だ、無視しろ!」
彼らは、触れてはならない宇宙の管理者(番犬)の横を、猛スピードでスルーしてしまった。
調停者たちは、ピクリとも動かない。
(認識コード:『地球への敵対行動』を確認。……処理権限を『神楽坂湊』へ委譲します)
番犬たちは、あえて動かなかった。飼い主(湊)が「自分でやるから手を出すな」と命じていたからだ。
2. 火に飛び込む夏の虫
帝都・執務室。
湊は、湯上がりのバスローブ姿で、モニターに映る赤い点(敵艦隊)を眺めていた。
「正面から特攻とは。……蛮族にも程があるな」
「いかがなさいますか? ソフィの木星砲で蒸発させますか?」
玲奈が問うが、湊は首を振った。
「いや、せっかくの『資源』だ。燃やすのはもったいない。
それに、最近の地球人は刺激に慣れすぎている。たまには『生の花火』も見せてやらんとな」
湊は指を鳴らした。
太陽系全域に展開されていた《影》の防衛網が、形を変える。
3. 絶望の「ハエ取り紙」
ゾルグ艦隊は、木星軌道を越え、いよいよ地球を目視できる距離まで迫っていた。
「見えたぞ! あの青い星だ! 全艦、突撃ぃぃ!!」
「主砲、発射用意! 地表を焼き払え!」
3000隻の戦艦が、最大戦速で突っ込む。
勝利を確信したその瞬間——。
ドォォォォォォン!!
宇宙空間に、見えない「壁」が出現した。
いや、壁ではない。それは、粘着質で、黒く、底なしの《影の泥沼》だった。
「な、なんだこれは!? 船が……進まん!?」
「エンジン出力最大! ……だ、ダメです! 船体が吸い込まれていく!」
猛スピードで突っ込んだ運動エネルギーがすべて殺され、巨大な戦艦たちが、まるでトリモチに捕まったハエのように、宇宙空間の一定座標にピタリと張り付けられたのだ。
4. 公開処刑
「ようこそ、地球へ」
ゾルグ軍の通信機に、湊の声が割り込む。
「君たちの船は、なかなか良質な合金を使っているようだな。
リサイクル資源として、ありがたく頂戴する」
次の瞬間、張り付けられた3000隻の戦艦に対し、レオの重力プレスと、ソフィの分解ビームが同時に浴びせられた。
「ぎゃあああああ!!」
断末魔と共に、威容を誇った艦隊は、またたく間に「四角い金属ブロック(資源)」へと圧縮・加工されていく。
中の乗員たちは?
——湊の慈悲(?)により、強制転送装置で全裸のまま火星の荒野へ放り出され、開拓労働者として第二の人生を歩むことになった。
5. 地球人の反応
その夜、地球のニュース番組。
『えー、本日午後3時頃、太陽系に侵入した不法投棄船団が、資源回収されました。
このリサイクルにより、来月の電気代が5%値下げされる見込みです』
お茶の間で見ていた市民たちは、茶をすすりながら呟く。
「へー、ラッキー」
「最近の不法投棄(侵略者)は質がいいねえ」
ゾルグ帝国が全力を挙げた特攻は、地球人にとって「電気代が安くなるラッキーイベント」として処理されたのだった。
第六十七章:次なる策謀 —— 「搦め手」への転換
一方、本国でモニターを見ていたゾルグ皇帝は、顔面蒼白になり、そして激昂して椅子を蹴り上げた。
「ば、馬鹿な……! 我が無敵艦隊が、一瞬で鉄屑にだと!?」
正面からの武力が通じないことを、彼らは骨の髄まで理解させられた。
だが、彼らはまだ諦めていなかった。
武力がダメなら、「卑劣な手」がある。
皇帝の側近、陰湿な参謀が耳打ちする。
「陛下……落ち着いてください。
奴らの力は異常ですが、所詮は『人間』。心があるはずです。
正面がダメなら、内部から崩せばいいのです」
「内部からだと?」
「はい。地球には『異星人居住区』があると聞きます。
そこにスパイを潜り込ませ、疫病、デマ、洗脳、暗殺……あらゆる手段で社会を混乱させるのです。
そして、あの化け物のような皇帝を孤立させ、精神的に追い詰めるのです……」
ゾルグ帝国は、戦術を「特攻」から「陰湿な工作活動」へと切り替えた。
彼らはまだ知らない。
神楽坂湊という男が、「陰湿さ」においては銀河一であることを。
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次回は明日20:10に更新予定です。
次の話:『稚拙』




