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勇者が来ないので暇つぶしに太陽系を魔改造してみた ~圧倒的な力と財力で子供たちを育て上げたら、いつの間にか銀河の管理者になっていました~  作者: さらん
異星人来訪編 ~銀河一の観光地・地球へようこそ~

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『呑気』

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

本日も更新しました。



第五十九章:銀河最強の町内運動会 —— 仁義なき玉入れ


秋晴れの帝都、第3市民公園。

今日は、地球人と異星人居住者が合同で行う『第1回・銀河親善町内運動会』の開催日だった。


万国旗ならぬ「万惑星旗」がはためく中、校庭にはジャージ姿の主婦、ランニングシャツの親父、そして全長3メートルの甲殻宇宙人や、浮遊するゼリー状生命体が整列していた。


1. 恐怖のラジオ体操

『ラジオ体操ー、第一ー!』

スピーカーから軽快なピアノ音が流れる。

これは、異星人たちにとって最初の難関だった。


「くっ……! この『腕を回す運動』……我ら昆虫型生命体の関節構造を無視している……!」

「おい、隣の粘液星人! ちゃんと伸ばせ! 軟体だからってサボるな!」

彼らは必死だった。


なぜなら、朝礼台の上には、ジャージ姿の神楽坂湊(来賓)が腕を組んで立っており、「体操が揃っていないチームは、昼食の唐揚げを没収する」と宣言していたからだ。


銀河を滅ぼせる破壊光線を撃てる腕が、今は必死に「深呼吸」をしている。そのシュールな光景に、地球人の子供たちはゲラゲラ笑っていた。


2. 手加減必須の「綱引き」

次は、地区対抗の綱引きだ。


『赤組:商店街チーム』 vs 『白組:元・銀河帝国近衛兵チーム』。

どう見ても勝負にならない。白組には、指一本で戦車を潰せる「剛力星人」がいるのだから。


「よーい、ドン!」

ピストルが鳴った瞬間、剛力星人が血管を浮き上がらせて縄を引く——

わけではなかった。


「ぬうううう……ッ!!(震え声)」

彼は、滝のような脂汗を流しながら、小指の先だけでミリ単位の力加減をしていた。


(力を入れれば……縄が切れる! いや、対戦相手の商店街の婆さんたちが音速で飛んでいってしまう! 制御しろ……! ブラックホールを抑え込むよりも繊細なコントロールが必要だ……!)


「あら、エイリアンさん弱いじゃないの! 引け引けー!」

「うおおお! お母ちゃん強いぞ!」

結果、手加減しすぎて限界を迎えた剛力星人が、地球人のおばちゃんたちにズルズルと引きずられていき、白組は敗北した。


「やったー! 私たちの勝ちよ!」

「……強敵ともだった。貴殿らの『カアチャン』という種族、恐るべし」

エイリアンたちは、地球人の主婦と固い握手(触手)を交わした。


3. カオスな「借り物競争」

そして、運動会の華、借り物競争。

校庭に置かれたカードを拾い、そこに書かれたものを持ってゴールしなければならない。


スライム星人がカードを拾う。

書かれていたのは——『メガネ』。


「メガネ……メガネ……」

スライム星人は、観客席にいた湊の側近、玲奈を見つけた。彼女は眼鏡をかけている。


「貸シテ……クダサイ……」

「ひっ!? ぬ、ぬめぬめしないでくださいまし!」

スライムは玲奈ごと取り込み、ゴールへ滑り込んだ。


「ゴール! ……判定、OK!」

一方、トカゲ将軍が引いたカードは——『輝いているもの』。


「輝いているもの……? ならば!」

将軍は、懐から「反物質爆弾のコア(起動中)」を取り出し、高々と掲げて走った。


「馬鹿野郎! それは輝きすぎだ!」

「会場が消し飛ぶぞ!」

「審判! 危険物持ち込みで失格!」

トカゲ将軍は即座に《影》によって連行され、反省部屋(便所掃除)行きとなった。



第六十章:回覧板という名の聖典

運動会が終わり、夕暮れ時の町内。


ここでもまた、静かなる戦いが繰り広げられていた。

アパート「銀河荘」の一室。

ここには、テレパシー使いの宇宙人一家が住んでいる。


「あなた! 大変よ!」

エイリアンが、一枚のバインダーを持って震えている。

それは、日本の地域社会における絶対の掟、『回覧板』だった。


「隣の田中さんから回ってきたの……。

『次回の溝掃除のお知らせ』と『夏祭りの寄付金募集』……。

こ、これを……ハンコを押して、次の部屋の鈴木さん(タコ型宇宙人)に回さなければならないのよ!」

「な、なんだって……!?」

エイリアンは戦慄した。


彼らの星では、情報は光速通信で全脳共有される。

だが、この地球(日本)では、「紙の板を、手渡しで、隣人に届ける」という、原始的かつ儀式的なプロセスが重要視されるのだ。


「もし……留守だったらどうするんだ?」

「ドアノブにかけるのは失礼にあたるらしいわ」

「夜遅くにインターホンを鳴らすのもマナー違反だ」

「雨に濡らしたら切腹ものよ」

「ええい! 高度な心理戦だ! 侵略戦争の方がまだ楽だった!」

夫は決死の覚悟で玄関を出た。


「行ってくる……! この『カイランバン』というバトンを繋ぐために!」



帝都の夜

湊は、そんな庶民(?)たちのドタバタ劇を、報告書で読んで肩を震わせていた。


「くっくっく……。

銀河を渡る超光速船を持っている連中が、回覧板一つで家族会議を開いているとはな」

「平和ですわね、陛下」

玲奈は、スライムまみれになった眼鏡を拭きながらため息をつく。


「ああ。これこそが、私が求めた『支配』の完成形だ。

恐怖で縛るのではない。『日常』と『ルール』という泥沼に沈めて、牙を抜く」

エイリアンたちは、もう地球を侵略しない。

明日のゴミ出しの種類と、特売日の卵の値段を気にするのに忙しいからだ。


「さて、次は『町内慰安旅行』の計画でも立てさせるか。

行き先は……そうだな、熱海あたりで、浴衣を着せて宴会芸でもやらせよう」


ここまでお読みいただき、ありがとうございました!

もし「面白い」「続きが読みたい」と思っていただけましたら、

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ブックマークもぜひよろしくお願いします!

次回は明日20:10に更新予定です。

次の話:『責務』


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