『来訪』
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第五十三章:銀河の宣伝マン —— カナタの「口コミ」
銀河の彼方、荒くれ者たちが集まる宇宙ステーションの酒場。
カナタは、異形のエイリアンたちに囲まれながら、ホログラム映像を見せびらかしていた。
『見ろよ、この「温泉」ってやつを。40度の湯に浸かって、雪を見ながら酒を飲む。最高にトブぜ?』
『こっちは「ラーメン」。合成食料じゃ味わえない、暴力的な旨味の塊だ』
『それに、うちの親父(皇帝)は宇宙の管理者さえ手懐けた男だ。あそこに行けば、どんな願いも叶うかもしれないぜ?』
エイリアンたちは唾(あるいは粘液)を飲み込んだ。
彼らは戦いに明け暮れる日々で、娯楽と癒やしに飢えていたのだ。
「その『チキュウ』には、どうすれば行けるんだ?」
カナタはニヤリと笑い、QRコードのようなデータを配った。
『この「紹介コード」を持っていけば、特別に入国できる。
……ただし、金(レアメタルやエネルギー鉱石)はたっぷり持ってけよ? うちの親父は、貧乏人には冷たいからな』
こうして、カナタは無自覚に(あるいは確信犯的に)、地球を「銀河一の観光リゾート」としてプロモーションしていたのだ。
第五十四章:来訪者は「お客様」
帝都・皇帝指令室に、再び緊急アラートが鳴り響いた。
しかし、今回の緊張感は少し違っていた。
「陛下! 太陽系外縁部に、未確認艦隊が接近! その数、数万!」
「識別信号、バラバラです! 戦闘種族、ガス生命体、機械知性体……まるで銀河の博覧会です!」
モニターには、おどろおどろしい形状の巨大宇宙船が群れを成して映っている。
通常なら『調停者(番犬)』が迎撃するところだが、彼らは攻撃せず、ただ道を空けていた。
「なぜ番犬が動かない?」
湊が問うと、オペレーターが呆れた声を上げた。
「そ、それが……彼らは『攻撃意思なし』と判定されています。
彼らが発信している信号は、宣戦布告ではなく……『入国審査願い(予約確認)』です!」
1. 殺戮者の団体様
先頭に立つ、全長50キロメートルのドクロ型戦艦から通信が入る。
画面に現れたのは、凶悪な牙を持つ戦闘種族の長だった。
『我々は、カナタ・スメラギの紹介で来た。
ここが「極上の癒やし」と「究極の美食」があるという伝説の惑星か?
……もし嘘だったら、この星系ごと消し飛ばすが、本当なら全財産を落とそう』
殺気と期待が入り混じった、極めて厄介な「お客様」の到着である。
第五十五章:インバウンド帝国 —— おもてなし迎撃作戦
湊は、呆れを通り越して笑い出した。
「あの馬鹿息子め。厄介事を持ち込む天才だな」
だが、湊の目に商機の光が宿る。
相手が侵略者なら焼き払うが、客だと言うなら話は別だ。
彼らが持っている未知のテクノロジーや資源は、喉から手が出るほど欲しい。
「よかろう。全艦、攻撃中止!
これより『第1次・おもてなし迎撃作戦』を開始する!」
1. 観光特区の緊急設営
湊の号令の下、帝国全土が「戦闘態勢」から「接客態勢」へとシフトした。
* 月面基地: 巨大な宇宙船を停泊させるための「メガ・ポート」へと改装。
* 小惑星帯: カジノと闇市を拡張し、異星人の通貨を両替できるシステムを構築。
* 火星: 重力制御を応用し、どんな巨大な異星人でも快適に過ごせる「多種族対応ホテル」を建設。
「サイズが50メートルある巨人でも、液体状の客でも構わん! 全員収容しろ!」
2. 地球の「文化兵器」
そして、地球(本星)には、選りすぐりの富裕層エイリアンだけが招待された。
彼らを待ち受けていたのは、湊が洗練させた「日本文化」という名の兵器だ。
帝都の高級料亭。
凶悪な将軍エイリアンが、恐る恐る「大トロの握り」を口に運ぶ。
「……!! なんだ、このとろける食感は……!?」
次の瞬間、彼は涙を流してひれ伏した。
「美味い……! 我々の星の『合成ペースト』とは泥泥の差だ!」
温泉では、機械生命体が「源泉かけ流し」の湯(特殊なオイル風呂)に浸かり、回路の疲れを癒やしていた。
「アア……極楽……システムエラーガ、修復サレテイク……」
3. 経済的侵略の完了
カナタの宣伝に嘘はなかった。
暴力と効率に明け暮れる銀河の住人たちにとって、湊が作り上げた「無駄に洗練された文化」は、麻薬的な魅力を持っていたのだ。
彼らは惜しげもなく、超高度な兵器設計図や、レアメタルを置いていった。
「チップだ。これでまた来年も頼む」と。
湊は、山積みになった異星の財宝を見下ろして微笑む。
「武力で奪えば抵抗されるが、サービスで骨抜きにすれば、彼らは自ら富を差し出す。
これぞ、最も平和的で残酷な支配だ」
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次回は明日20:10に更新予定です。
次の話:『隣人』




