『竜宮城』
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第二十一章:青き膜の革命 —— 『深海適応』
月面基地の完工式をリモートで見届けた湊は、すぐに視線を太平洋の深淵へと向けた。
「宇宙は空っぽだが、海は満ちている。資源も、エネルギーも、生命もな」
これまでの海底都市構想は、巨大なガラスやコンクリートの壁で海水を遮断し、その中に「地上の空気」を閉じ込めるだけのものだった。
だが、湊はそれを「無粋」と切り捨てた。
「海に住むのに、なぜ海を拒絶する? 郷に入っては郷に従え。我々が魚になればいい」
1. 人体改造なき進化 —— 『アクア・メンブレン』
国立生体工学研究所。
巨大な水槽の中を、一人の人間が優雅に泳いでいた。酸素ボンベも、分厚い潜水服もない。普段着のようなラフな格好だ。
彼の肌の表面には、肉眼では見えない極薄の《影の被膜》が張り巡らされている。
* 液体呼吸補助: 被膜が海水中の溶存酸素を瞬時に濾過し、直接皮膚と肺へ供給する。肺は液体で満たされるが、苦痛はない。
* 耐圧フィールド: 重力制御技術をミクロサイズに応用。身体にかかる数百気圧の水圧を、皮膚の直上で「相殺」する。
「素晴らしい……。まるで、母の胎内にいるようだ」
水槽から出てきた被膜テストパイロットは、身震い一つせずに言った。水から上がると、被膜は自動的に気体呼吸モードへ切り替わる。
これで人類は、陸上と同じように、深海でも呼吸し、活動できるようになったのだ。
2. 開放型海底都市『ワダツミ』
技術が確立されると、建設は早かった。
マリアナ海溝の近く、水深4000メートル。
そこに建設された都市『ワダツミ』には、天井も壁も存在しない。
海流を利用した発電タワーと、珊瑚のような形状の住居群が、海の中に直接建っている。
住民たちは、『アクア・メンブレン』を纏い、自宅の玄関からそのまま海中へ飛び出し、海流に乗って「通勤」する。
「おはよう」
「やあ、今日の海流は少し速いね」
彼らはイルカやクジラの群れと共に泳ぎ、海底のレアメタル鉱山や、深海養殖場へと向かう。
窓を開ければ、そこには熱帯魚が舞い込む。
重力(浮力)の制約からも解放されたこの都市では、あらゆる移動が3次元的だ。
3. 真の海洋国家の誕生
「陸地など、地球のほんの一部に過ぎなかったのだ」
湊は、自らもメンブレンを纏い、深海の玉座に座っていた。
周囲を巨大な深海魚が回遊している。
この技術により、以下の問題が完全に解決した。
* 食料問題の終焉: 海そのものが巨大な牧場となり、培養された魚介類や海藻が無限に供給される。
* 居住区の拡大: 陸地の奪い合いなど無意味になった。海には、地上の何倍もの居住可能スペースがあるのだから。
湊は、海中から海面を見上げる。太陽の光が、遥か頭上で揺らめいている。
「空も制し、海も制した。
人類は今、この惑星のすべての領域で生きることができる」
陸に縛られていた人類は、文字通り「地球生命体」へと進化したのである。
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次回は明日20:10に更新予定です。
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