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未定  作者: 大倉
第三幕
99/108

休暇:一日目

――――

夕暮れの中を走る列車の振動に、彼は揺られている。

――――


こうやって帰るのは…大体半年ぶりか。


――――

窓を開け、咥えた煙草に火を付ける。

――――


……あ、来るな。


「レイダー来ます、迎撃するんでよろしく。」

『(''◇'')ゞ』


…何言ってんのかわかんね。


――――

開けた窓から外に出て、列車の屋根に上る。



屋根には既に十数人、表情のない仮面を着けた人が居る。

――――


顔のない仮面……最近噂の「無表情」ってレイダーかな?


「ココの用心棒カ?」

「…今引くなら無傷で帰す。」

「ホザけ!」


――――

10人程の「無表情」達が武器を手に取り駆け出す。


それを見て、手袋を介して取り出した銃と剣を構える。

――――


さて、


――――

左手で構えた銃を自分の頭に当て、撃つ。

――――


始めるか。


――――

直後地を蹴り、向かって来ていた仮面達とすれ違う。

――――


「天殺星」


――――

仮面の下から血反吐が滴り、床に倒れる。

――――


「ナっ…」

「まだやる?」


――――

残った数人は身構えるばかりで、向かってくる様子は無い。

――――


…逃げる訳でもない、となるとまだ何か――


『(・∀・; )』



――――

列車の上に飛来した巨大な翼竜の翼をギリギリで躱す。

――――


魔物……使役出来るのか。


――――

翼竜は列車の天井を食い破らんとしている。

――――


『ヾ(・ω・`;)ノ』


…好きにさせる方がまずいか。


「車掌さん、ちょっと全力出しても?」

『(。•̀ω-)b』


――――

剣を戻し、指を構える。

――――


「サせルカ!」


バンッ


――――

左手に持っていた銃で、向かってきた奴の仮面を撃って気絶させる。


そして、空いた右手を銃のように構え、

――――


「【魔弾(フレイキューゲル)】」


――――

構えた指から放たれた衝撃波は魔物の魔力を巻き込み、そうして魔物は消滅した。

――――







えーと死にそうなのは……三人か。


――――

銃に弾を込め、一人ずつ弾丸を撃ち込んでいく。

――――


回復弾もだいぶ使ったな……


「終わりましたー、収容部屋開けてください。」

『(^^ゞ』


――――

捕縛された仮面達が、機械の手によって車両に備えられている檻へと収容されていく。

――――




『次はー、6区ー。6区ー。停車期間は三日を予定しています。』

「それじゃ、今期は契約満了って事で。お疲れ様でした。」

『┏○))』


――――

列車からホームへと降りた所で、彼は声を掛けられる。

――――


「やあ楓君。半年ぶりかな?」

「…ご無沙汰してます、唯さん。悠華さんは元気にしてますか?」

「元気にしてるよ。めちゃくちゃ大変そうだけどね。」


――――

八年前に起こった世界の統合以降、様々な要因から長距離転移が不能になった。


それに対応するべく、人々は世界を回る列車を作り出した。


それは現在でも、文字通り人々の生命線となっている。

――――


「……まだな感じかな?」

「…茶化しますか?」

「いやいや。…でも、君が思い詰めてると悠華が悲しむからね。義理とは言え、私にも親心はあるよ。」

「……そうですか。」


――――

かつて崩落していた世界…現在は六区と呼ばれている…は、統合当初の行動の早さが助けとなり、早期に数十の世界と手を結んだ。


そして、七年前に起こった神vs神の「聖戦」時にも、被害があった地域の救難などを行った。


加えて、比較的高水準な魔力の運用技術等が確立されていたのもあり、最初期の段階でかなりの地位と信頼を得た。

――――


「悠華に散々言われてると思うけど、煙草もお酒も体に悪いよ?特に君は身体強化とか無いんだから。」

「…煙草は酒飲んじゃいけない時だけですし、酒も二日酔いはしないようにしてます。流石に酔いながらは戦えないので。」


◆◇◆


…ちょっと踏み込みすぎたっぽいし、これ以上は悠華に任せようかな。


「ま、ちゃんと人を頼る事。」

「…()はちゃんと頼るようにしてます。」

「言葉に含みを持たせない!…ちゃんと割り切ってるのはいいけども、抱えすぎないこと。」




「…それじゃ、この辺で。」



……不貞腐れてるだけなのは、僕が一番分かってる。


身勝手な神共は不幸を振りまく事も、幸福を振りまく事もある。……だから、最低限は割り切った。


でも、感情だけで動き続けられるのは、一部の人達だけだ。






――――

楓は居酒屋の暖簾を潜った。

――――


「ちわー」

「お!楓さんじゃあないスか!久しぶりっすね!」

「久しぶり、赤司(せきじ)君。元気そうだね。大きな怪我もしてないようだし。」

「いやー、あんまり厄介事に絡まれてないだけっすよ。」

「それもまた才能だと思うよ。俺は厄介事まみれだし。」

「あ、酒注ぎます?」

「いや、自分でやるよ。」


――――

楓が赤司の正面に座り、酒を飲み始める。

――――


「……やっぱ長距離線の護衛はキツいっすか?」

「そりゃあなあ。レイダー、魔物、その他諸々…対処すべき物が多いからな。」

「でも、色んな所行けるのはいいっすねえ。」

「ま、それはそうかもな。すいません!ぼんじり下さい!」


――――

楓が店員に注文を投げる。

――――


「赤司君は……短距離線の護衛だっけか。」

「はい!相手してるのは…たまーに出てくる弱めの魔物ぐらいっすね。スライムとか蚊柱みたいな。というか法の都合上で護衛してるだけなんで、正直いらないんじゃ?と思うんスけど…」

「…弱めの魔物とはいえ、魔物は魔物だ。気を抜かない方が身の為だぞ。」

「わかってますよ~、まあ必要な役ではありますし。」


――――

ぼんじりが届く。

――――


「…最近は、こういう古典的な店も増えたよなあ。」

「ですねえ。楽なのは機械頼りなんすけど、やっぱこういう所の方が個人的には好きっすね。」

「それに関しては、俺も同意見だな。」










――――

夜も更けた頃。

――――


「…俺明日もあるんで、ここら辺で切り上げます。」

「……俺はもう少し飲むが…奢ろうか?」

「いえいえ、自分で払いますよ。それじゃ!」


――――

そう言って会計を済ませた後、赤司は店を出て行った。

――――


…もうちょっと飲もうかな。時計……あー、読めない所まで来てる……最低でも明日明後日は休みだし、まあいいか。








「へいへい楓君。」


――――

後ろから肩を叩かれる。

――――


「…半年いらいぶりですね。」

「呂律回ってないよ楓君。お疲れなのはわかるけど、そんだけ飲んだら明日に響くよ。」

「……悠華さんの方が大変でしょ、僕のことなんて気にしなくていいのに。」

「…気に掛けたいから気に掛けるの。」


「……酒飲んでむりやり憎悪保ってるだけのバカだよ僕は。」

「はあ……自分をちゃんと見るのはいいけど、自罰的すぎ。…この問答もう5回はやったよ?」

「…こうやって僕は繰り返すから、気にしなくていいって言ってるのに。」


「……なんにしても、それ以上は明日に響くよ。」


……これ以上だらだら居座ってる方がよくないか。


「…わかった、今日はここで切り上げるよ。泊まる所は決めてるし……」

「【額縁(Photo)】」


――――

楓の動きが止まる。

――――


動けな……


「結構上達したでしょ?楓君ぐらいなら数分は止められるよ。」


――――

楓は悠華に担がれて店を出る。

――――


……ほんとに動けないや。


――――

そうして楓は無抵抗のまま、転移門を潜った。

――――

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