休暇:一日目
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夕暮れの中を走る列車の振動に、彼は揺られている。
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こうやって帰るのは…大体半年ぶりか。
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窓を開け、咥えた煙草に火を付ける。
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……あ、来るな。
「レイダー来ます、迎撃するんでよろしく。」
『(''◇'')ゞ』
…何言ってんのかわかんね。
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開けた窓から外に出て、列車の屋根に上る。
屋根には既に十数人、表情のない仮面を着けた人が居る。
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顔のない仮面……最近噂の「無表情」ってレイダーかな?
「ココの用心棒カ?」
「…今引くなら無傷で帰す。」
「ホザけ!」
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10人程の「無表情」達が武器を手に取り駆け出す。
それを見て、手袋を介して取り出した銃と剣を構える。
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さて、
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左手で構えた銃を自分の頭に当て、撃つ。
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始めるか。
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直後地を蹴り、向かって来ていた仮面達とすれ違う。
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「天殺星」
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仮面の下から血反吐が滴り、床に倒れる。
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「ナっ…」
「まだやる?」
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残った数人は身構えるばかりで、向かってくる様子は無い。
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…逃げる訳でもない、となるとまだ何か――
『(・∀・; )』
!
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列車の上に飛来した巨大な翼竜の翼をギリギリで躱す。
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魔物……使役出来るのか。
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翼竜は列車の天井を食い破らんとしている。
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『ヾ(・ω・`;)ノ』
…好きにさせる方がまずいか。
「車掌さん、ちょっと全力出しても?」
『(。•̀ω-)b』
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剣を戻し、指を構える。
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「サせルカ!」
バンッ
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左手に持っていた銃で、向かってきた奴の仮面を撃って気絶させる。
そして、空いた右手を銃のように構え、
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「【魔弾】」
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構えた指から放たれた衝撃波は魔物の魔力を巻き込み、そうして魔物は消滅した。
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えーと死にそうなのは……三人か。
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銃に弾を込め、一人ずつ弾丸を撃ち込んでいく。
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回復弾もだいぶ使ったな……
「終わりましたー、収容部屋開けてください。」
『(^^ゞ』
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捕縛された仮面達が、機械の手によって車両に備えられている檻へと収容されていく。
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『次はー、6区ー。6区ー。停車期間は三日を予定しています。』
「それじゃ、今期は契約満了って事で。お疲れ様でした。」
『┏○))』
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列車からホームへと降りた所で、彼は声を掛けられる。
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「やあ楓君。半年ぶりかな?」
「…ご無沙汰してます、唯さん。悠華さんは元気にしてますか?」
「元気にしてるよ。めちゃくちゃ大変そうだけどね。」
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八年前に起こった世界の統合以降、様々な要因から長距離転移が不能になった。
それに対応するべく、人々は世界を回る列車を作り出した。
それは現在でも、文字通り人々の生命線となっている。
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「……まだな感じかな?」
「…茶化しますか?」
「いやいや。…でも、君が思い詰めてると悠華が悲しむからね。義理とは言え、私にも親心はあるよ。」
「……そうですか。」
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かつて崩落していた世界…現在は六区と呼ばれている…は、統合当初の行動の早さが助けとなり、早期に数十の世界と手を結んだ。
そして、七年前に起こった神vs神の「聖戦」時にも、被害があった地域の救難などを行った。
加えて、比較的高水準な魔力の運用技術等が確立されていたのもあり、最初期の段階でかなりの地位と信頼を得た。
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「悠華に散々言われてると思うけど、煙草もお酒も体に悪いよ?特に君は身体強化とか無いんだから。」
「…煙草は酒飲んじゃいけない時だけですし、酒も二日酔いはしないようにしてます。流石に酔いながらは戦えないので。」
◆◇◆
…ちょっと踏み込みすぎたっぽいし、これ以上は悠華に任せようかな。
「ま、ちゃんと人を頼る事。」
「…人はちゃんと頼るようにしてます。」
「言葉に含みを持たせない!…ちゃんと割り切ってるのはいいけども、抱えすぎないこと。」
「…それじゃ、この辺で。」
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……不貞腐れてるだけなのは、僕が一番分かってる。
身勝手な神共は不幸を振りまく事も、幸福を振りまく事もある。……だから、最低限は割り切った。
でも、感情だけで動き続けられるのは、一部の人達だけだ。
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楓は居酒屋の暖簾を潜った。
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「ちわー」
「お!楓さんじゃあないスか!久しぶりっすね!」
「久しぶり、赤司君。元気そうだね。大きな怪我もしてないようだし。」
「いやー、あんまり厄介事に絡まれてないだけっすよ。」
「それもまた才能だと思うよ。俺は厄介事まみれだし。」
「あ、酒注ぎます?」
「いや、自分でやるよ。」
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楓が赤司の正面に座り、酒を飲み始める。
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「……やっぱ長距離線の護衛はキツいっすか?」
「そりゃあなあ。レイダー、魔物、その他諸々…対処すべき物が多いからな。」
「でも、色んな所行けるのはいいっすねえ。」
「ま、それはそうかもな。すいません!ぼんじり下さい!」
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楓が店員に注文を投げる。
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「赤司君は……短距離線の護衛だっけか。」
「はい!相手してるのは…たまーに出てくる弱めの魔物ぐらいっすね。スライムとか蚊柱みたいな。というか法の都合上で護衛してるだけなんで、正直いらないんじゃ?と思うんスけど…」
「…弱めの魔物とはいえ、魔物は魔物だ。気を抜かない方が身の為だぞ。」
「わかってますよ~、まあ必要な役ではありますし。」
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ぼんじりが届く。
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「…最近は、こういう古典的な店も増えたよなあ。」
「ですねえ。楽なのは機械頼りなんすけど、やっぱこういう所の方が個人的には好きっすね。」
「それに関しては、俺も同意見だな。」
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夜も更けた頃。
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「…俺明日もあるんで、ここら辺で切り上げます。」
「……俺はもう少し飲むが…奢ろうか?」
「いえいえ、自分で払いますよ。それじゃ!」
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そう言って会計を済ませた後、赤司は店を出て行った。
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…もうちょっと飲もうかな。時計……あー、読めない所まで来てる……最低でも明日明後日は休みだし、まあいいか。
「へいへい楓君。」
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後ろから肩を叩かれる。
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「…半年いらいぶりですね。」
「呂律回ってないよ楓君。お疲れなのはわかるけど、そんだけ飲んだら明日に響くよ。」
「……悠華さんの方が大変でしょ、僕のことなんて気にしなくていいのに。」
「…気に掛けたいから気に掛けるの。」
「……酒飲んでむりやり憎悪保ってるだけのバカだよ僕は。」
「はあ……自分をちゃんと見るのはいいけど、自罰的すぎ。…この問答もう5回はやったよ?」
「…こうやって僕は繰り返すから、気にしなくていいって言ってるのに。」
「……なんにしても、それ以上は明日に響くよ。」
……これ以上だらだら居座ってる方がよくないか。
「…わかった、今日はここで切り上げるよ。泊まる所は決めてるし……」
「【額縁】」
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楓の動きが止まる。
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動けな……
「結構上達したでしょ?楓君ぐらいなら数分は止められるよ。」
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楓は悠華に担がれて店を出る。
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……ほんとに動けないや。
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そうして楓は無抵抗のまま、転移門を潜った。
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