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未定  作者: 大倉
争奪の世、三千世界
93/108

XIII:イスカリオテ

全能は天使()を、自身の代わりに世を治める神として作った。


曰く、「自分は人では無いから」だそうだ。私に人の感情らしき物を搭載し、「人の心を持った神」になる事を想定して私を作ったそうだ。



始まりは1200年以上前、崩落が始まる数年前の事らしい。


全能は治世の為に作られたが、それに反旗を翻した…曰く「英雄」達に全能は打倒された。


その数年後、崩落が起こった。これは一応、嘗ての人々が作り出した人災に類するらしい。



曰く、「地に穴を開ける兵器」と「現実」による地下空洞化が合わさった結果…らしい。


風船に針を刺すような事を、何度も何度も繰り返した事で、地平線は文字通り地平(・・)線になってしまったそうだ。


対崩落用結界も、その時作られた物だ。…あの時代に、よくもまああんな物を作れたもんだ。



……話が変わったのは3000年を突破した辺りだ。全能は崩落に巻き込まれ、裏世界へ落ちた。


そうして、全能は神権を得た。どうやら、一定以上の魔力を保有する事が神権を持つ第一条件らしい。



「全能」…起こり得る全ての事象を見通す神権。その時見た未来では、私は上手い事やっていたらしい。


そして、私以外が上手くやっていた未来は見えなかったらしい。


確かにあんな狭い世界じゃ、並大抵の人じゃ先へ行けなかっただろう。





̷̷正̷直̷、̷ど̷う̷で̷も̷良̷か̷っ̷た̷。̷





……私が作られたのは崩落が止まった直後、時期的には3000年辺りだそうだ。


詳細不明の人間()」を受け入れざるを得ない状況にする為、ある程度まで首を絞め、適度に追い詰める。


それの第一段階+天使()の試運転として、都市を一つ落とした。





̷̷私̷じ̷ゃ̷な̷く̷て̷も̷良̷か̷っ̷た̷ん̷じ̷ゃ̷な̷い̷か̷。̷





全能は私を大天使として作った。ただ、最初に作られたからなのか、所謂寿命自体は人と同じぐらいだったそうだ。


……神として運用するにしては、随分と大きなデメリットな気がするが……葉月が感情を搭載できたのは、私が最初で最後だったらしいから。



経過年数を重ねない為に、全能は祝福を頼った。


私が起きたあの場所の時間を固定し、期が来るまで封印する…という事だったらしい。


魔術適正は星系統と光系統、そして保険のセトラ。


もう少し色々持たせてくれても良かったんじゃないかと、偶に思う。




――――

渚の体は現在、不滅が治す以上の速度で破壊され続けている。

――――




まあ、全属性扱える程私は器用じゃ無いか。



最初から私の血は金色だったのだろうか。あの時は怪我をした瞬間、セトラが勝手に治していたから、血を見た事は無い。


…尋常じゃない魔力量と、装束使用後の感覚的に…多分、最初から私の血は金色だったんだろう。







1000年もこんな事を押し付けるなら、私を人として作らないで欲しかった。


記憶を消して、消して、消して、消して消して消して消して消して消して………やっと、やっと真面で居られた。


多分、忘れてしまった事すら忘れてしまっただけで、様々な事を忘れてしまったんだろう。


……人に関する記憶は重点的に消した。そこは私の弱点であり、もっとも大事な物だったから。


人に関われば、少なくとも目の前では消えて欲しくない。



そう思う事は公平では無いから、公平でない天秤を極力公平にする為、私は人と関わった記憶の殆どを消した。


世界を上から、俯瞰して、達観して見れるように。





̷こ̷ん̷な̷思̷い̷を̷す̷る̷な̷ら̷、̷感̷情̷な̷ん̷て̷物̷を̷入̷れ̷な̷い̷で̷欲̷し̷か̷っ̷た̷。̷





結果、私は神になった。そんな物なんかじゃ無いのに。















誰かを守れず死なせた事を覚えている、誰かの思いを託された事を覚えている。誰かの気持ちを受け止めた事を覚えている。誰かと手を取り合った事を覚えている。



自身の不足を嘆いて、狂い咲いてしまった人達を覚えている。





̷̷そ̷れ̷は̷私̷の̷不̷足̷な̷の̷に̷





もう嫌だ。何もかも嫌だ。





幾ら私の不足を嘆いても、私が狂い咲く事は無かった。


私が人じゃないからなのかもしれない。


それとも、私の極点が今だからなのかもしれない。



つまり、私は法則に敵わない、という事なのかもしれない。



――――

渚の体がひび割れ、崩壊を始める。

――――





̷や̷っ̷と̷終̷わ̷り̷が̷来̷た̷





……ああ、手放しちゃいけないなんて、分かってるさ。


ここで折れて後悔するのは私だから。


ここで諦めて後悔するのは私だから。


ここで死んで後悔するのは私だから。



̷本̷当̷に̷¿̷



……例え前を向いたとしても、やっぱり後悔はするんだろう。


ここで折れたい。


ここで死にたい。


ここを終わりにしたい。



̷本̷当̷に̷¿̷








……ああ、禅問答には飽きた。私はここが終わりだ。




――――

渚の髪が白く染まり、頭上に三重の環が展開される。

――――













◇◆


「わっ」


――――

法則を光が襲う。

――――


……不滅か?


――――

法則の背後には、完全に髪が白く変化した「不滅」が浮いている。

――――


「イメチェンした?」


――――

返答は無く、無数の光が法則を襲う。

――――


……光速での攻撃、「法則」じゃ対応が追い付かない!


だけど僕には――


――――

光が微かに暗く変化し、それを食らった法則の体は崩壊する。

――――


法則無視…


――――

「不滅」の背後には、黒い刀が浮いている。

――――


……あれを媒体にしてるのかな。


――――

再び暗い光が法則を襲う。

――――


「【因果逆行】」


――――

光が解れ、単なる魔力に戻る。

――――


「Burst」「【双転ヰ相】」


――――

「不滅」が解れた魔力を起爆するのと同時に、法則が互いの位置を入れ替える。

――――


「【星式・(World)空間調律(Connect)】」


――――

が、魔力が完全に爆ぜる前に、全てが止まった。

――――


…神権反転・無法


――――

法則は「不滅」の時間操作を無効化し、向かってきた「不滅」を迎え撃つ。

――――


「シャーデn「【4:33(Silent)】」」


――――

世界から音が消える。

――――


音が消えた…だけじゃない、詠唱の強制終了!しまった――


――――

「不滅」が法則に手をかざす。

――――


「【Schadenfreude】」


――――

バギン、という音と共に、法則の体が一瞬固まる。

――――


…なるほど痛い!直接のダメージは無いけどっ…シンプルに思考が切れる!


――――

法則が「不滅」の手を掴み引き寄せる。

――――


口頭での詠唱じゃないなら行けるかな?!


法則干渉:精神(シャーデンフロイデ)】!


――――

バギン、という音がした。

――――

◆◇


……煩い。


――――

「不滅」の顔に、新たに二つの目が文字通り浮かぶ(・・・)

――――

◇◆


目が増え――


――――

浮かんでいる目から、光線が放たれる。

――――


あぶなっ!


――――

それは法則の不意を付いたが、法則は間一髪でそれを回避する。

――――


これ以上【法則干渉:精神(シャーデンフロイデ)】を使うのは危ないかな?…便利だと思ったんだけどなあ。


――――

(から)だった空間が、再び摩天楼に変化していく。

――――


幾らか遮蔽があれば、ある程度は回避出来るかな?


――――

二人の間を摩天楼が突いた事で、互いに距離が離れる。

――――


来る、


――――

無数の光がビルを貫き、法則へと向かう。

――――


…【破棄】!


――――

法則付近の空間が消え、そこと重なった光も同じく消える。


が、消えた空間を光が埋める事で、少しずつ光が削れた空間を突破し始める。

――――


うーん尋常じゃない。弾き切れないな。


「【赤放返威(アルターシフト)】」


お、解除されてる。


――――

光と赤い帯が互いに相殺し合う。

――――


うーん…あんま深く練れないけど、やってみる価値はあるかな?


「…『遠距離攻撃は発動できない』」


――――

新たに法則が追加された事で、「不滅」は光を放つ事が出来なくなった。


それに気づいた「不滅」は即座に、幾何学的な形をした六枚の翼を展開し、法則へと向かう。

――――


「【白月(リバース)】!」


――――

それを見越して法則はカウンターを仕掛けた。


法則の掌に生成されたホワイトホールから様々な物体が放出され、「不滅」はそれに押し流された。

――――


…やっぱり、無敵ではあるけどスーパーアーマーは無いみたいだね。


――――

法則が指を構える。

――――


うーん……せっかくだし利用しようか。


「「装填」」


――――

ホワイトホールから吐き出された物体が、法則の指先一点に集約される。

――――


「神権反転・「発射」!」


――――

集約された物体が「不滅」へと、土砂崩れの様に発射される。

――――


「「星灯」、神権反転・「消滅」」


――――

それに「不滅」が触れ、連鎖的に消滅させる。

――――


生命線(それ)を切るのか!?


「「引力」」


――――

法則が「不滅」を引き寄せる。

――――


……装束…


――――

引き寄せられた「不滅」は、白い装束を纏っている。

――――


「【光式(Bright)(Cons)流星(eallation)】」


――――

無数の剣が法則を取り囲む。

――――


前のと同じ……と見せかけて、どれもこれも法則無視が混ざってるね。一個辺りの濃度薄いから見ただけじゃ分かりづらいけど。


――――

赤い帯が剣を弾く。

――――


…だけど、不滅が切れてるのにどうやって……あー、装束で魔力切れを踏み倒してるのか。


――――

法則がそれに気づいた頃には、「不滅」の神権は戻っていた。

――――


白は当分使えないし、赤は迎撃で手一杯……まー、決めれるとするなら黒か蒼のどっちかかな。






「【自己加速(コギト)】」


――――

法則の思考速度が上がる。

――――


僕に追随出来てる理由は多分、というか十中八九、無限の魔力のせいかな。


不滅の血自体が魔力で、それを「不滅」の力で消えないようにしてる……流石、全能お手製なだけある。


確かに、リソース(魔力)が無限にあれば、僕の技も真似出来るっちゃ出来るだろうけど……



どれだけ制御に精神削ってるんだろう。でも直接攻撃しても効果無かったし……あ、そうか。捨てちゃったのか。


…ま、手は抜かないけど。

電灯で発電は出来るだろうか


稲妻で風を起こせるだろうか


水で点火する事は可能だろうか




理論上は可能だろう。膨大なリソースと、それら全てを完璧に完結させる事が出来れば。


そんな芸当が出来る奴は人じゃないが。

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