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未定  作者: 大倉
争奪の世、三千世界
91/108

崩落

――――

逃げるエドガーに対して、渚は環を展開し張り付く。

――――


……最大出力と言う言い方、連続的な地震…恐らく、そう長くは戦いたく無いのでしょう。


ならば全力で時間を稼いでみましょう。……醜くそして浅ましい、我が兄弟姉妹の様に。


――――――――


私の世界は暗かった。常に霧がかかっていた上、人々は皆暗い顔をしていた。


私は恵まれていた。上流階級に生まれ、ある程度は自由に過ごせた。…だが、夢を見る事は出来なかった。


眠る時に見る夢も、将来を志すという意味の夢も、どちらも見る事は叶わなかった。


我が親愛なる父上もそうだったらしい。それが、家を継ぐ条件だった。




私は我が兄弟姉妹にそれを譲った。










そうして皆死んだ。もしかすると、我が親愛なる父上も、そうして家を継いだのかもしれない。


――――――――


「がっ……ンんッ!」


――――

エドガーの左腕が飛ぶ。

――――


……後どの位だ、後どれだけその状態で居られる?


――――――――


……別に仲は悪くなかった。寧ろ…あんな世界にしては、結構仲が良かったほうだと思う。


だからこそ、だからこそ夢を見て死んでいった兄弟姉妹を理解できなかった。


達観している、と人は言った。だが私はそうは思わなかった。


――――――――


…腕がどうした、私なら戻せる。


――――

斬られた左腕が元の位置に戻る。

――――


「だが痛覚はあるだろ?」

「――!!!!!」


――――

左腕が先端から輪切りにされ、エドガーは声にならない声を上げる。

――――




――――――――


私が神権を持ったのはとんだ偶然で、とても下らない事だった。







家主になって数十年した頃、私の家にある商人がやって来た。


彼が言うには、「自分は外からやって来た、貴方が欲しい物を売ろう。」という事だった。


値段はとても安かった。私なら十分もあれば稼げる程の値段だった。


……その時、もしかすると私は、夢を見ていたのかもしれない。




彼は私に一粒の錠剤を瓶ごと渡した。私は少し躊躇ったが、それを飲んだ。


――――――――


「があ゛ッ…ンウ……」


――――

エドガーは既に動けなくなっている。

――――

◆◇


……ギリギリ間に合ったか。
















「……あの時、私は夢を見れたんです。良い夢だった……窓から飛び立ち、雲の島で跳ね周り、我が兄弟姉妹達と共に海賊と戦う……そんな夢を見たんですよ。」





……?





「気づきませんでしたか?外の様子に。」


何……


――――

渚が周囲を見渡すと、世界が崩落を始めていた。

――――


…時間切れ、

「渚様!急ぎ神権を神域へ!」


神権付与・「不滅」、


――――

渚の装束が消えると同時に、崩落が止まる。

――――


よし…











「……神権反転・現身(うつしみ)


――――

崩落が再び開始する。

――――


「なっ……!」

「…夢を託す人も居れば、投げ捨てる人も居る……ああ、我が兄弟姉妹達よ。どうやら、私も同じだった様です――」


――――

エドガーは崩落に巻き込まれ、奈落へと落ちていった。

――――




「葉月!状況は!?」

「…一時的にですが、「不滅」による崩落の無効化が無効化されました。」


くそ、


「予備の結界柱投下しろ!」

「承知しました。」


――――

空中から巨大な柱が数本落下してくると同時に、渚が格納庫から取り出したFUに乗り込み、崩落しつつある地面に柱を突き立てる。

――――


「回路接続、起動行けるか!?」

「……起動完了。」


――――

崩落した箇所を囲むように設置された柱が、薄い結界を展開する。

――――


止まっ……てはないが、多少遅くはなったか。


「…崩落の進行度、70%減少。恐らく数十分は持つかと。」


…今の内に後始末を済ませようか。




――――

塔の中へ転移した渚は、無抵抗のレウコスを捕縛した。

――――


「言い残す事はあるか?」

「……いい夢を見れた、満足だ。」


――――

煤がレウコスの首を断ち切る。

――――


次、


――――

エドガーが死んだ事で機能を停止した魔神を次々に処理していく。

――――







塔は砕いた、炎は消した、神域は一応押し戻した…


「渚様、崩落が再び始まります。」


……くそ、時間切れか。


「葉月、後は任せる(・・・・・)。」

「…承知しました。……どうか、お気を付けて。」


――――

渚は格納庫から再びFUを取り出すと同時に乗り込んだ。

――――


回路接続。


――――

FUが多数の環を展開し、浮かび上がる。

――――


世界間移動用機構展開、


――――

FUの背後に、多数の環が翼の様な様相で展開される。

――――


……起動!


――――

FUは急激に加速し、空間を破り、世界の壁を越えていった。

――――







「やあ不滅。」


――――

FUを越さずに、法則の声が渚に届く。

――――


「……虹の空間を通ると聞いていたが?」

「今回の要件は僕でしょ?急いでたみたいだし、ちょっとぐらいは手助けしてあげるよ。」


――――

草原にFUを降ろし、格納庫に仕舞う。

――――


「……君がやろうとしてる事を果たすなら、僕を打ち負かす事が条件になるけど?」

「そのつもりで来た。……その代わり、世界の時間を止めてくれないか?」

「いいよ。せっかくやる気になってくれたのに、萎えられちゃ困るし。」


――――

世界の時間が止まる。

――――


「一応、君の思う万全の状態にしといたよ。何か文句があるならどうぞ。」


――――

二人が準備運動を始める。

――――


「……じゃ、私がお前を一撃で殺せる様にしてくれ。」

「それは駄目だよ。僕が求めてるのはそういうんじゃないし。」


流石に駄目か。


「星灯」


――――

黒い装束を纏う。

――――


戻ってる……


「ちなみになんだけど、僕に勝つ算段はあるのかな?」

「…あっても無くても、やらなきゃ終わるんでね。」

「……ま、会いに来たって事は勝ちに来たって事と受け取ろうか。」


――――

装束が更に強く燃え盛る。

――――


時間は止まってる、神権を私に戻しても…多分大丈夫だろう。流石に法則も、その辺は工面してくれてるだろうし。


「それじゃ、始めようか。」

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