「不滅」の渚
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渚は塔の最上階、円卓が安置されている部屋に辿り着いた。
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「お座り下さい。」
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既に円卓に腰掛けていたエドガーの反対側に座る。
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「降伏する気は……無いか。」
「ええ。まだ負けていませんから。」
「そうか?互いに手札は出し切っただろ。」
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机の下、エドガーに見えない角度で渚の手が煤を構える。
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「…始めてく――」
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エドガーが口を開いた直後、椅子を蹴って飛び出した渚が首を刎ねる。
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【蘇生の祈祷】
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エドガーの首が再び胴体にくっつく。
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治っ――
「【慈悲、均衡】」
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渚が塔の上空へと転移する。
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弾き出――
「【勝利、栄光】」
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爆発をもろに食らい、都市に貼られている結界まで吹き飛ばされる。
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……気絶して無いだけ上々、だが今のは…
「葉月、南宮は?」
先刻魔神と相打ちになりましたので回収しました。現在治療中です。
………まさか、
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エドガーが塔の外に出る。
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「…何でこっちの魔術をお前が使える。」
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それを見た渚は転移し、エドガーと競り合う。
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煤で切れない、さっきの魔神と同じ法則無視か。
【夜刻】
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世界が動きを止める。
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「……私の神権は、物体へ私の解釈を押し付ける事が出来ます。」
「魔神を自由に封印、解放したり、新たに作り出したり…私がある程度理解している物であれば、更に多様な事が出来るでしょう。」
「無論、他者を完全に理解する事は出来ませんので、貴女に私の神権を行使する事は出来ませんが。」
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世界が再び動き出す。
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【結界光】
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渚とエドガーの間に結界が生成される。
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…本当にどこから……
◇◆
【王国、、王冠、基礎】
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塔を中心として、「夢想」の神域が広がる。
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【理解、星幽】
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エドガーの脳内に、これから先の盤面が複数見通される。
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……少ないとはいえ負け筋がある…ならば潰してしまいましょう。
「……渚さん、どうか全力で。全力で私に負けてください。」
「嫌だね。…全力を出すなら、私は勝たなきゃいけない。」
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塔の門が開く。
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「――【大群】」
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門から無限かに思える数の魔神が湧き出した。
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◆◇
そう来たか!
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渚が塔から離れ、空へと昇る。
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「葉月、結界と砲台を全力に。出来る限り食い止めろ。」
承知しました。
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魔神の群れは世界を蝕むかの様に突き進む。
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量が尋常じゃない、
「【天の川】、」
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空が白く多重に染まり、面と言える量の剣が降り注ぐ。
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「【近接信管】」
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地に落ちた剣が順に爆ぜていく。
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「結界で魔神の軌道逸らせるか!?」
……一時的には可能です。
「一時で良い。」
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各所に結界が展開され、魔神の流れがある程度統一性を持ち始める。
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数十秒後には結界が崩壊します。
「いいさ、どの道残り一回だし。」
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地に降り、魔神の群れに狙いを定める。
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「――夜!」
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群れに向けて横薙ぎに斬撃を放つ。
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…ある程度は処理出来たか?
「星灯」
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黒い装束が消え、白い装束に切り替わる。
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崩壊します。
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結界が崩れ、魔神の群れが飛び出す。それに呑まれる前に、渚は空へと飛び出した。
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「後どれぐらい持つ?」
数時間は持ちます。
…考える時間は十分あるかな。
「この魔神の群れを「夢想」に由来する物と断定します。」
「…本体のエドガーを倒せば止まるかな。」
「……少なくとも、無尽蔵で無くなる可能性は高いですね。」
「よし、じゃあまずはエドガーから叩こう。…とはいえ、このまま籠城されるとな……」
天の川はフル稼働中、ちょっっっとだけ残弾が不安だけど……まあ多分大丈夫。
夜はもう撃てない、でも煤は強制装備……大火力が無いのがなー……
………あれやるか。
「葉月、完全開放やるぞ。準備にどれくらい掛かる?」
「準備は終わっています。どうぞご自由に。」
魔神共は塔から出てきてる、正面から堂々と行こうじゃないか。
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渚が装束を閉じた直後…世界が一瞬、揺れる。
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全開ならある程度は連打出来る。
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部分的に白くなっていた渚の髪が、完全に黒になる。
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「持続可能時間は5分です。」
「それ以上やったら?」
「世界が再度崩落を開始します。」
「了解。」
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渚の体から魔力が漏れ出し始める。
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……下がった分の出力が戻って、自己補完の範疇を超え始めたか。
「……カウント開始。」
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渚が環を解除し、群れの只中へと落下した。
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「【拡大】、「星灯」」
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黒い炎が燃え上がる。
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…再装填は出来てるけど、まあ撃てて2回か……十分十分。
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塔へと駆け出す。
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◇◆
「……まさか。」
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魔神の群れを飲み込む黒い炎が、エドガー達の方へと向かう。
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【理解、星幽】で見えた、最悪の盤面……いや、それよりも……
「ヘーテ、【勝利、栄光】」
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指示した直後、黒い炎の周囲が爆発を起こす。…が、炎は消えない。
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「……源斗さん、」
【雹氷】
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雨が降るが、炎は消えない。
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…ああ、これが貴女の言っていた全力なのですか。
◆◇
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まるで燃えているかのような煤を振り、魔神を捌いていく。
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「残り3分」
ギリギリ間に合うか?
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群れの勢いは苛烈を増していくが、渚はその大半を捌き、残る少数を剣で貫いていく。
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……ちょっと捌き切れなくなってきたな。一回リセット入れるか。
「葉月、都市部の結界強度上げろ!」
「…完了しました、何時でもどうぞ。」
「――Burst!!」
◆
「うわっ」
また揺れた……結界の外で何が起きてるんだろ。
…気にしないようにしてたけど、源斗君も居ないし……無事だといいんだけど。
◆◇
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渚が辺りに散らしていた魔力全てが連続的に爆ぜた事で、無限かに思えた魔神の群れが一瞬、途切れた。
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見えた、
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一瞬、塔の入り口が渚の目に映った。
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「【星海を越えて】」
◇◆
「……お久しぶりです。」
…自動発動にしていた【慈悲、均衡】を無効化している……あの尋常ではない魔力の所為か?
「あの群れ、お前が死ねば止まるか?」
「…ええ、無尽蔵の源は私ですので。」
「………」
…どうぞ、行ってください。契約は果たしますよ。
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塔の中から何かが、都市部へ向かった。
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◆◇
…葉月、そっちに何か行った。対処頼む。
お任せください。
「…気兼ねなくやろうか。」
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互いに円卓の上で競り合う。
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「…その状態、どれだけ持つんですか?」
「さあな。あんまり長く持続させた事が、無いんでね!」
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弾かれたエドガーは塔を変化させ、外へと離脱する。
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「タヴレーフ、【第四世界】!」
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不発に終わる。
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◇◆
…外からの干渉を魔力で弾く?……何たる無法!
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エドガーを追う渚に向けて、虚空から生まれた魔神が噛み付く……が、渚は意にも介さない。
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「……枠を決めて、その枠の中身が変化しないようにする…それが私の神権だ。」
「まあ出力が下がってると、変化しないようにする部分がかなり弱体化してな、ある程度の衝撃を食らうと怪我っぽい挙動になるんだ。」
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噛み付いていた魔神に剣が刺さり、爆ぜる。
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……つまり、貴女のその状態は…
「…溢れた魔力で魔術弾いたのは初めて見たが…この通り、大体の攻撃は無効化できる。それと、これは最大出力だからな。普段はここまで溢れないさ。」
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焦燥するエドガーとは裏腹に、渚の顔には笑みが浮かぶ。
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……ああ、届くのはきっと貴女なのでしょう。
では、みっともなく足を引っ張らせて頂きます。




