百葉箱と無名
◆
「ここだよね?」
「…プトレマイオスの指示ではここだな。」
――――
三人は街中の幼稚園の前に立っている。
――――
事前説明通りなら、ここで魔物が出たらしいんだけど……
「魔物っぽい気配ある?」
「ないね」「無いな」
「…なら、もう別の所に行ってるんじゃないかな。」
「まあ、あり得なくは無いが…」
「…せっかくだし試してみていい?」
――――
悠華が指を構え、
――――
「――【看破】!」
――――
指で模られた長方形の枠越しに、世界を覗いた。
――――
◇
無色の魔力ばっか……残り香もしないし、やっぱりもう……!
「すっごい薄いけど見つけた!…うん、続いてる。」
「追うぞ。」
「…そこで途切れてる。」
――――
僅かに残った魔力を追った先には、百葉箱があった。
――――
なんだこれ?
「百葉箱…?」
「本当にここで途切れてるのか?」
「うん、途切れてるのはほんと。」
◆
……この中に何かあるのかな。
――――
楓が百葉箱の扉を開ける。
――――
◆◆
「待て楓――」
――――
扉を開けた瞬間、楓が姿を消した。
――――
「愛宕、今の…」
「私も見たよ。……扉開けたのがトリガーかな。」
……この百葉箱、もしかすると魔物の類か?
「…追うぞ。」
――――
二人も扉に手をかけ、開けた。
――――
……神社?
――――
開けた先には、木々に囲まれ、朽ち果てた神社があった。
――――
「楓くーん!いるー?」
「いまーす!」
――――
楓が社の裏手から顔を出す。
――――
◆
良かった、二人も来てくれたんだ。
「何か見つけたか?」
「特には無いかな。…この建物って何だろう。」
「神社だ。昔は良く建てられてたらしいが、今では殆ど現存してない。」
「詳しいねえ。」
「家柄な。」
「中に入ろうとはしてみたんだけど、この扉異様に硬くて。…魔術的な物じゃないかな。」
「破壊…は無いな、したら多分社自体が崩れる。」
――――
悠華が再び覗く。
――――
「…さっき見つけた魔力、ここに続いてる。」
「……何とかして開けるか。」
――――
悠華と源斗が身体強化を使いつつ、それがまだ甘い源斗のサポートに楓が回る。
――――
「せーの!」
――――
強引に社の扉を開けようとする…が、扉は一切動かない。
――――
「――これ以上は無理だ!」
「僕も限界…」
「だめそー!」
――――
手法を変え、悠華が取り出した小刀でこじ開ける事にした。
――――
「わっしょい!」
――――
が、やはり開かない。
――――
「単純な力不足…ってだけじゃなさそうだよね。」
「ここまでやってもダメなら、私たちだけじゃ無理そうだね。」
「一度連絡を……圏外だ。」
――――
それを聞いて、楓と悠華も端末を確認する。
――――
「…ほんとだ。」
「僕も圏外。」
「となると、ここは……」
――――
唐突に扉が開いた。
――――
「わ」
びっくりした……ホラー系の映画じゃ無いんだから…
「…とりあえず行ってみる?」
「行ってみるか。」
――――
三人は社の中に入った。
――――
「人形……?」
――――
薄暗い社の中には、小さな人形が安置されていた。
――――
「……御神体って奴だ、多分。」
「ねえ、魔術使うのってダメかな。」
「…傷つけなければいいんじゃないか?」
「それじゃ――」
――――
悠華が先程とは違う形で指を構えた。
――――
「【観察】――あ、これ魔物だ。」
――――
看破されると同時に、暗闇の中から対の手が出てきた。
それを見るやいなや、三者三様に攻撃の構えを取る。
――――
「…敵対してると思う?」
「どうだろうね。」
「……入口に百葉箱があるのは確認した、逃げ場はある。」
――――
徐々に後退し、社の外に出る。
――――
「何もして来ない……?」
「…存在するだけの魔物なんだろ。」
「蚊柱とかと同じタイプって事?」
「多分な。」
「一回出ない?電波入らないの割と不味いし。」
「そうしよ。」
――――
三人が鳥居まで下がり、百葉箱に手を掛けたが、
――――
!?
――――
…扉を開ける寸前で、上から落ちてきた足に百葉箱が壊された。
――――
「…まずい」「まずくない?」
「イグニス」
――――
源斗が社に向けて火球を放ったが、口の様な物に飲み込まれた。
――――
魔物相手なら……
「下がって、【魔弾】」
――――
銃口から発射された弾丸は口を貫通したが、何かに弾かれた。
――――
弾かれた…
「魔力じゃない何かがある!」
「【型抜】!」
――――
二度の攻撃によって発生した土煙に、四角い枠が浮かび上がる。
――――
「ごめーん焼石!」
「全員構えろ。3、2、1、」
「エレシト」「【魔弾】」「【型抜】」
――――
三種の攻撃が飛ぶ。
――――
……通らない。
「ちっ……」
「一応さ、私達に攻撃はしてきてないよね…?」
「…まあそうだけど、百葉箱を壊されたのは確かだよ。」
「……愛宕さん、周りの森って入れそう?」
――――
悠華が枠を通して辺りを見渡す。
――――
「…魔力は外に向かって流れてるね。結界とかは無いと思う。」
百葉箱を介してここに来たのが不安要素だけど……
「二人とも、一回逃げない?…ここがどこか分かんないけど。」
「…了解。目くらましだけするぞ。」
「3、2、1…イグニス!」
――――
火球の爆発によって発生した土煙に乗じて、三人は森へ逃れた。
――――
プトレマイオス:星図に登録されている者の端末に追加される支援機能 ネットが繋がっている限りどこでもサポート可能




