八百万もいるんだ、良い奴もいる
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「【魔弾】!」
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銃を介して、弾丸が放たれる。
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「凄まじい。…手加減していては、私も無傷では済まなさそうです。」
「そのまま手加減して欲しいんだがね!」
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真司が落ちていたレンガを拾い、
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「『天退星』!」
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男に向かって投げた。
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「……おや、お気に入りのステッキだったのですが。」
「もう少し効いて欲しかったんだがね!」
「…ですが分かりましたよ。貴方のその技、空間に作用していますね。」
「ちっ」
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真司が楓にだけ聞こえる様な大きさの舌打ちをした。
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「最初を抑えればそこまで脅威では無い…のは、恐らく斬撃だけですね。先程のレンガは、元から空間を無視して飛んで来てました。」
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男が二人に近づく。
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「【魔弾】!」
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が、楓の攻撃を避けた為再度距離が離れる。
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「そちらの攻撃は……中々特異ですね。私でも未だ、解析しきれない。」
……さっきこの人は「夢想」と言った。でも、名前から"解析"は連想出来ない。…つまり、まだ僕達を舐めている、または手加減をしている。
「直に食らえば解析できるんじゃないですか!?【魔弾】!!」
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真に受けたのか、男は弾丸の直撃を受けた。
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「ナイスだ楓!そこ降りるぞ。」
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二人が廊下から飛び降り、反対側の数階層下の廊下へと飛び移った。
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「……成程、魔力の消滅…否、集約……成程成程…」
◇
「ハイネス!」
濡らして、
「ハイシス!」
固める!
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男?は凍り付いた…が、即座に氷を砕き、再び奏楽へと向かい始めた。
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「……逃げるばかりか?」
「私とあなたじゃ釣り合わないって言ってんでしょ!」
「そうか。」
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結界を解除しつつ校舎の上へ飛んだ奏楽だが、男?が即座に追いつく。
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「ネクト!」
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男の振りかざした腕を、奏楽が間一髪で弾く。
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っ…腕逝った!
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更に距離を取りつつ、弾いた際に骨が砕けた腕を治す。
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あー転移使えたらな!どうして星系統だけ使えないんだか!
「イグニス!」
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火球や槍が飛んでいくが、男?の体に傷は付かない。
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……武器とか作れるのはありがたいけどさ!
「メイレム!」
私の練度じゃ先生程の物は出せないんだよね!
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奏楽が剣を構え、男?と競り合う。
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純粋な膂力で負けてるよねやっぱ!
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剣が折れるが、奏楽は攻撃が届く前に距離を取る。
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「…逃げ足の速い事だ。」
「そりゃね!」
……私から真面に攻撃が通らない以上、逃げるのが一番か?!
「見逃してくれたりしないかな!」
「…構わない。戦う意思が無いのであれば、殺す事はしない。」
………え、いいんだ。
「先刻の貴様には戦う意思があった、だから戦士として相手したが……なるほど、ここはそういう世界では無いのだな。」
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男が胡坐をかいて座った。
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「この神域も、閉じてしまうとしよう。」
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赤黒く染まった街が、元の色を取り戻していく。
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…悪い人じゃ、なさそう?
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男は沈黙して、動きを止めた。
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………取り合えず、プトレマイオスに連絡だけ。
◆◇
「あはは。」
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極彩色になった都市のあちこちから飛び出た棘が、渚に刺さる。
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うーん厄介。言葉も碌に通じなさそうだし、さっさと殺すか。
「夜」
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棘を振り払いつつ飛ばした黒い斬撃が女?に直撃する。
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「あれ。」
「悪いが、狂気だけで勝てる程私は弱くないぞ。」
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直後零距離へ転移した渚に、女?頭から足まで切り刻まれ…
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…よし、神域が消え始めた。
「葉月、状況は?」
「…「狂乱」の反応は消え、「災害」は動きを止めています。「夢想」は…不明です。」
「不明?」
「神域がかなり特殊で、私やスターゲイザーでも観測できていません。」
「成程ね。…じゃ、まずは「災害」の方から対処しようか。」
「どうもー。」
「貴様か、ここの主は。」
…さっきまで誰かと戦ってたみたいだけど、もう戦意は無さそうかな?
「戦う気は無いみたいだね。話が通じて助かるよ。」
「この世界と、俺の世界では礼儀が違うという事に気づいただけだ。」
「さて、君の道は三つある。元の世界に戻るか、私に従うか、私に殺されるか。どれを選ぶ?」
「……私の居場所は既に無い。」
「ほう?」
「私が居た世界は、惑星によって砕かれた。」
惑星……
「だからここに来た。俺の世界の仇を取ってくれた事……大方意図した物では無いだろうが、礼を言おうと思ってな。」
「それと…俺と戦った人に、後で詫びを入れたい。」
「了解、それは確定事項にしとくよ。」
「……じゃ、私に従うって事でいいのかな?」
「…それは保証できない。貴様が善だと、俺は思えない。」
「随分と辛辣だね。」
「……私、というかこの世界は常に人手不足なんだ。私しか対処ができない相手とかざらだからね。」
「だから、君みたいに協力的かつ神権を持っている人は逃したくないんだが……」
「…いいだろう。貴様には付かんが、戦いはしよう。」
「よし、それじゃこれ着けて。」
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渚がチョーカーを差し出す。
――――
「神権を持ってる人は、それ以外の人に対して常時威圧状態なんだ。心当たりあるでしょ?」
「……」
「で、それはGPS兼そういった威圧を介する魔力操作を緩くする効果を持ってる。」
「君のそれは取り外し自由にしとくから、持ち歩きだけしといてね。」
…次行くか。




