この世界では偶によくある、一般的な事件とその被害者の話
「…で、どれだ!」
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二人は猿の群れを追い、気づけば山の中へと足を踏み入れていた。
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「わかりません!」
……数が数だし、暗すぎて判別が…
「……撃てるか?」
「まだ制御出来ないので、他の猿も巻き込みますよ?」
「ここで魔物を逃すぐらいなら構わん、撃て。」
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楓が拳銃を構えると同時に、銃身に魔法陣が展開される。
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「――【魔弾】!」
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詠唱と同時に、山を抉る程の広範囲に衝撃が走る。
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「やっぱり制御が…」
「いーや、十分だ。」
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抉れた際に生じた土煙の中から、一体の猿が出てくる。
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……顔が、「構えろ。」
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真司が刀を抜く。それを、人の顔をした猿が見つめる。
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◇
……魔獣じゃない、魔物か。
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真司と猿が競り合う。
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…すいません、気づけなくて。
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爪を弾いた直後、真司に向けて猿が火を吐き出した。
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基礎…じゃない、固有魔術。…元の人の魔術を奪ってる?
「…一心、明鏡止水。」
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炎が眼前に迫る中、真司が刀を振り上げる。
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「――『天殺星』」
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眼前の炎ごと、猿を両断する。
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◆
…刀の射程じゃない……
「……楓、来い。」
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二人は猿に近寄る。
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頭が…無い?
「…多分、自分の頭を挿げ替える事で、その頭の持ち主の能力を使える…とか、そういうのだったんだろう。」
「………」
「こいつの気配に気づけなかったのは俺の落ち度だ、お前は何も背負わなくていい。」
「…はい。」
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週が明け、再び学校が始まった。
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「おはよー!…あれ、元気ないね。」
「まあね。…ちょっと色々あったから。」
「……何か吐き出したいなら聞く。そうじゃないなら、当分はあまり触れないようにする。」
「…ありがとう。」
…心配かけちゃった。
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数日後、楓は真司に呼ばれた。
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「よ。…元気か?」
「…まあ、何とか。…それで、ここは……」
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あの日二人が入った飲食店は、閉店してしまっている。
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「…被害者の人が店主で、もう作れる人が居なくなったから店じまいしたらしい。」
「……美味しかったですね、拉麺。」
「な。」
「……まあ、なんだ。それを忘れるなよ。」
「…はい。」
「…で、どうする?」
「どうする…と言うと?」
「いや、これからも俺と動くか?って話だ。」
「勿論です。……僕の手の届く範囲は小さいですが、それでもやれるだけやるつもりです。」
「その為に、僕は魔専に来たので。」
「殊勝な心掛けはいいが…あんまり背負いすぎるなよ?」
「…ありがたいことに、僕は結構恵まれてるので。多分、大丈夫です。」




