首の無い死体事件
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それから数時間を掛けて、近隣への聞き込みは終わった。
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「…特に有用な情報無かったですね。」
「つまり、犯人…人では無いだろうが…は、人目に付かないで動けるって事だ。それだとある程度絞れる。」
「人目に付きづらいい程小さい、または居る事に違和感が無い…とかですかね。あとは転移とか?」
「魔力の残り香が無いって言ったろ。」
そうだった。
「だが、前二つはいい線行ってると思う。」
「……ま、今日はここらで解散だ。明日もよろしくな。」
「はい。お疲れさまでした。」
「お疲れ。」
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次の日、午前の授業が終わった楓は真司に合流した。
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「昨日は寝れたか?」
「一応は。…星野さんは元気そうですね。」
「日常茶飯事だからな、流すのに慣れただけだ。」
「…それと幸先の悪い事に、また被害者が増えた。」
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二人は、昨日の街より更に南下した、街外れの一軒家にたどり着いた。
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「今日の早朝発見されて、そこの庭で死んでた。…条件は前と同じなんだが、どういう訳か温度がまたおかしくなっててな。」
「温度?」
「魔力の残り香があったから、何者かが魔術を行使した事は確定。森方面だったんで一応追ってはみたが、時間経過と単純な距離で見失った。」
「……魔術が使える魔物or魔獣?」
「温度操作となると炎氷水…固有も含めると絞り切れないな。」
「一応山周辺は封鎖して貰ったが、何せ施行がだいぶ遅れたから当てにはならない。」
「そんな事できるんですね。」
「プトレマイオスに連絡しただけだ。」
プトレマイオス…?
「…あ、一般には話しちゃいけないんだった。忘れてくれ。」
「分かりました。」
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夜が更ける頃……
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「……駄目ですね。」
「結構な時間だけど帰るかい?」
「いえ、明日は学校休みなので大丈夫です。」
「りょーかい。…じゃ、その辺で腹ごしらえでもしようか。」
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二人は近くの飲食店に入った。
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「らっしゃーせー!」
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人の好さそうな店主が声を掛ける。
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「俺が持つから、好きなの選びな。」
……こういう所入るの初めてだ。
「…もしかして初めてか?」
「はい。これまで、あまり外には出なかったので。」
「あーいえ、出ようと思えば出れましたよ。僕がインドア派なだけなので、お構いなく。」
「…他人が口出しするのもあれだな、悪い。」
「…じゃあ僕はこれにします。」
「豚骨か……じゃ、俺は醤油で!」
「あいよー!」
…自分で火出してる。ああいう事も出来るんだな。
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数十分後、二人は店を出た。
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「腹も膨れたし、捜索再開と行こうか。」
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真夜中とはいえど、街中なのでそれなりの明るさではある。
されど真夜中、暗い事に変わりはない。
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「うわあっ?!?!?!」
「星野さん!?」
「あー…大丈夫。ビックリしただけだ。」
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真司の目線の先には、人の顔をした猿の群れが居る。
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魔獣?
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楓が銃を構える。
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「まてまて、それは仕舞え。」
「………」
「…あれは人面猿、魔獣の一種だ。見た目は不気味だが害はない。…暗闇であれ見てビビっただけだ。ほんとになんともない。」
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楓が銃を下す。それを察したのか、猿の群れは去っていった。
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「……あれ?」
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その内の一体の顔を、楓は見逃さなかった。
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……さっきのお店にいた人…の顔?
「…星野さん、さっきのお店に行ってください。」
「おい待て……くそっ」
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真司の静止を振り払い、楓は猿の群れを追った。
それを見た真司は、端末に話しかける。
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「プトレマイオス。」
『ご用件は?』
「南東区4丁目の飯屋の確認を頼む。追って報告。」
『承知しました。』
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連絡を終えた真司が、楓を追う。
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「楓!」
「来たんですか!?店の方は…」
「バックアップ送った。」
「……星野さん。人面猿の顔って、「人みたいな顔」ですよね?」
「…まあそうだな。実際の人と同じ顔の事は無いはずだ。」
「あの猿、店の人と顔が同じだったんですよ。」
「……そうだな。」
僕等が店を出た数十分の間に……そうなったとは考えたくないけど。
「…判断は悪くないが、追うなら俺じゃないか?」
「……それもそうですね、僕の判断ミスでした。」
『星野 真司様、結果を報告致します。』
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真司の端末から声がした。
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『指定された飲食店にて、首が捥がれた死体を確認しました。』
「「!!」」
「…俺が前に出る、楓君は援護頼む。」
「わかりました。」




