事件の前触れ
「昨日の警報、何だったんだろうね。」
「…魔神とかだったのかな。」
「何だとしても、俺等には知らされないだろ。」
「でも気になるじゃん。」
「確かに気にはなるが……」
――――
そんな雑談を交わしながら、一日が過ぎる。
――――
「お疲れ様でしたー。」
「…あそうだ、楓。」
「はい?」
「明日辺り完成品が届くから、調整が終わったら楓も二人と一緒に動いてもらうよ。」
……!
「はい!」
――――
次の日、午後の授業が始まる頃――
――――
「はいこれ。」
「…なんか、見た目変わりましたね。」
――――
楓に渡されたのは、銃身の長い拳銃だった。
――――
「試し撃ちするか?」
「…お願いします。」
――――
二人は校庭に出た。
――――
「ばっちこーい!」
「……ちゃんと受けてくださいよ!」
「――【魔弾】!」
◇
…成程、この魔方陣に飛んでくるのか。
――――
蒼の体には、小さな魔法陣が展開されている。
――――
話では弾丸発射時に魔力を集約する、と言っていたが……発射された弾丸自体もそうじゃないか?
――――
幾重に展開された結界が、溶かされる様にして容易く貫通される。
――――
…盾でも防げないだろうし、何とか弾くか。
――――
空の手に、物体の刀が握られる。
――――
◆
「先生!」
「大丈夫大丈夫。」
怪我は……してなさそう。良かった…
「…中々面白い特性だね。発射された弾丸自体が魔力を巻き込むから、魔力で構築された物に対して特攻がある。」
「……そんな効果あったんですね。」
「対人はともかく、魔物とかには凄い効くと思うよ。」
「ただ……まだまだ制御が甘いし、対人戦するにはちょっと危険すぎるかな。」
………
「代わりと言っては何だけど……」
「お久し振りです、先生。」
「久しぶり。早速で悪いんだけど、この子を職場見学兼助手に連れてって欲しいんだ。」
「懐かし~、俺ん時もそうでしたねえ。」
「初めまして。俺は星野 真司、これでも魔専の三年だ。」
「…初めまして、灯里 楓です。」
三年……二年からは、殆ど学校には居ないんだっけ。
というか星野って…
「そうそう、俺一応御三家なんだよね。才能無いけど。」
「魔術への才が無いだけで、別ベクトルの才はあっただろ?」
「先生のお陰ですよ。」
――――
陽気に話す彼の腰には、刀が差されている。
――――
刀…剣士なのかな。
「で?楓君は何を獲物にしてるんだい?」
「銃ですね。…誤射しないように気を付けます。」
「それじゃ行ってらっしゃい。くれぐれも死なないようにね。」
――――
二人は校舎を出て、歩き始めた。
――――
「えーっと…これからどこに行くんですか?」
「今俺が追ってる案件に関連した場所。詳しくは…あー、グロ耐性ある?」
「…多少はあります。」
「魔物の仕業なのか、それとも魔獣なのかはまだ不明なんだが……最近首ごと頭を捥がれた死体が増えててな。それを追ってる。」
頭を……
「魔獣だったら最悪多神クラス、魔物だったら未記録の新種。魔神…の線は無いと思う。」
――――
転移門を潜り、中央から離れた東方面の都市へと移動した。
――――
…この辺始めて来たな。
「えーっと……あ、ここだここ。」
――――
二人は街中にある、大きな植物園の前に立った。
――――
「変死体の発見場所は徐々に移動しててな。ここの前は北、その前は北西……って感じで遡って行ったら…とある山に辿り着いたんだ。」
「そこには行ったんですか?」
「ああ。あったのは、首捥がれた動物の死体だけだったが。」
「…で、ここでは植物園の職員一名の変死体が見つかった。」
「発見は一昨日だが、死亡推定時刻は不明。」
「不明…って、どうしてですか?」
「体の血が全部抜けてる、発見場所が植物園の温室、どういう訳か死後硬直無し、魔力の残り香も無いと来た。」
……推理物とかでよく見る証拠が全部無いのか。
「…ちなみに楓くん、君は探知とかできる?」
「無理です。魔力に関しては当てにしないでください。」
「…よっし、じゃあ足で探すぞ。まずは目撃情報からだ。…あてにはならないが。」
「どうしてです?」
「明らかに怪しい魔物だの魔獣だの見てたら、俺等が聞く前に大体通報が入ってるからな。」
「それじゃ行くぞ。こういうのは地道にやるもんだ。」




