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未定  作者: 大倉
第二章:2999
58/75

四人の放課後

「まず楓君。」

「はい。」

「動きは悪くないけど、魔術を使わないのはどうして?」

「…そうですね。制御が効かないので、極力使わないようにしてます。」

「それならそれで、何かしらの搦め手を持っとく事だね。格納庫は使える?」

「……いえ。僕は魔力を保有できない体質なので、僕の固有魔術以外は使えません。」


ふむ……


「だったら、銃とか使ってみるのはどうだ?」

銃…?


「意外と有効だぞ?足切り性能高いし、格上相手にもある程度通じるし。」

「……はい、良さそうなの選んどきます。」


「次に悠華君。大体楓君と同じだね。同じ事を聞くけど、魔術を使わないのは何で?」

「私の魔術は望遠鏡と同じ事しか出来ないので、前に出て戦う私が使う理由が無いからです!」

「ふむ…戦い方は悪くなかったし、強化術も使えるから筋は悪くない無駄にするのも持ったいないし…まずは魔術の拡張かな。固有魔術だし、色々な知見を増やす所から始めようか。」

「はい!」


「最後に源斗君。」

「はい。」

「素の体が貧弱気味、基礎しか使えないなら使えないなりにそれを拡張する事。それと経験不足、それに伴う判断の遅さ。この辺かな。」


◇◇

…ちょっと言い過ぎたかな?いやでも、このまま表に出しても死にそうだし、ちゃんと言ったほうがいいよね。


「……頑張ります。」

「奏楽に色々教えてもらうといいと思うよ。私を見るより、彼女を見たほうが学べる事は沢山あると思うし。」

「はい。」


「それじゃ、今日は解散。明日の午前は通常授業で、午後からこの組での個別授業ね。」



――――

桜の花弁が地面を埋めつつある道を、三人が歩いて行く。

――――

「…先生、強かったね。」

「……星図に、柄海 蒼って名前は載ってない。」

「あえて登録してないだけだと思うよ。載ってたら、最低でも二等星は行くだろうし。」


忙しくなる事とか嫌そうだし。


――――

星図とは、対象の強さを基準とした称号である。


六等星から一等星まで存在し、これを基準に依頼や任務が飛んでくる事が多い。


個人が依頼する事も可能だが、大抵は中枢からの依頼に奔走している為、当人に依頼するよりは中枢に依頼を飛ばしたほうが早かったりする。


現在、一等星に名を連ねている人は、僅か五名である。

――――


「あれでも全力じゃ無いんだよね…」


本気出したら魔物どころか魔神の相手も出来たりして…?


「……まあ、いい先生が付いてくれたと考える事にしたよ、俺は。」

「初狩りは趣味じゃないって言う割には全然ボコボコにされて、私すっごいくやしい。」


――――

悠華の頬がむくれる。

――――


「…僕も、結構悔しい。」

「……一日二日では無理だが、いずれは勝つつもりだ。二人はどう思う?」

「私も賛成。」

「僕も。」


「……改めて、これからよろしく。」

「よろしく!」「よろしくね」


――――

そうして、三人はそれぞれの帰路についた。

――――


…仲良くやって行けそうで良かった。


――――

楓の足は摩天楼が立ち並ぶ、都市の中心部へと向かっている。

――――


……明日からも頑張ろう。


――――

その中でも一際大きいビルの中に、楓は足を踏み入れた。

――――


「ただいまー。」

「おかえり~」「学校の初日どうだった?」

「上手くやって行けそうです。」

「良かったー。」


――――

足を踏み入れた直後、楓は研究室に転送され、そこで複数人の職員に話しかけられた。


その足のまま、楓はとある部屋に入る。

――――


「…ふう。」


学校の雰囲気も良いけど、やっぱり自分の部屋が一番落ち着くね。


『それじゃ、隔離始めるねー』

「了解でーす。」


――――

楓の部屋が、空間的に外界から隔絶される。

――――


……早めに寝ようかな。やる事無いし。


◆◆

「ただいま。」


――――

源斗の声が響く。

――――


飯と風呂と…あ、石鹸切れてんだった。買い行かねえと。


「おかえり。」

「ただいまー!」


――――

部屋の外では、空間全体を星空が覆っている。

――――


「学校どうだった?」

「楽しかった!先生も凄く強かったんだ!お母さんと同じぐらいじゃないかな?」

「その先生って、どんな人だった?」

「光系統の人で、剣とかを作って戦ってたよ。結局一本しか使ってなかったけど、ほんとはもっと沢山使うんじゃないかな?」

「……成程ねえ。」

「あーあと、ここってネット使えるっけ?」

「使えるけど、急にどうしたの?」

「先生からさ、「私の魔術をちゃんと生かすなら、もっと知見を増やそう」って言われたんだよね。」

「なるほどね。…なら、私も何かお土産とか持ってこようか。」

「おねがーい♡」

「…それじゃ、ご飯にしましょうか。」


「「いただきます。」」


◇◇

灯里 楓。幼少期に魔神と神の戦いに巻き込まれ、以後アルケミストの管理下に置かれている。


固有魔術の詳細は不明。…後でアルケミストに聞くか。


天草 源斗。両親は幼い頃、魔神に殺害された。御三家の一つである天草家最後の一人。


固有魔術は無し。代わりに焔、氷、水、風、雷の五属性を扱える。


愛宕 悠華。孤児だったが一等星の「調律者」に拾われ、現在はその養子になっている。


固有魔術は「望遠」


「…一昨年の真司が可愛く見えるぐらいだな、ここまで来ると。」


あれもあれで大変だったが。


「お疲れ様でーす。」

「…奏楽か。どうだ、校長二年目は。」

「大変ですよ全く。先生に校長やって欲しいぐらいです。」

「いやいや、私は人の上に立てる様な人じゃないよ。」


「…立ってたでしょう?」

「……いやいや。私は人の上に立てるような者じゃないよ。」


「まあいいです。それで、今年はどんな感じですか?」

「皆良い子だよ?問題は多いけど。」

「まず全体的に経験不足…まあこれはしょうがないけど。一昔前だったら、もう実戦経験積んでた子供がゴロゴロ居たもんだ。」

「…ま、そんな子供を減らす為に皆戦ってるんだから、幸いと言えば幸いだな。」

「まだまだですよ。福祉はともかく、前線はまだまだ崩壊一歩手前、踵が水に浸かってます。」

「……魔神もだが、最近は魔物もヤバいもんな。」

「そうです。私も明日には死んでるかもしれないですからね。」

「死なないようにしてくれよ?私は人見知りで、新しく友達を作るのは苦手なんだから。」

「…ま、頑張りますよ。何とかおばあちゃんになるまで長生きします。」


「……先生、貴女は何時まで……いや、やっぱりいいです。」

「…聞かぬが花、触らぬ神に祟りなし。分かってくれて嬉しいよ。」


「それはそうと、最近のゲームは面白いのが多いね。」

「先生魔術師用のVR買ったんですか!?」

「いやー高い買い物だったよ。でも、その分の価値はあったね。」

「いいなー。私の分も買ってくださいよー。」

「奏楽は自分で稼げるでしょうよ。」

「私の持ち金は常にすっからかんなんです、たまには奢ってくださいよ。」

「氷室に貸して貰ったらどうだ?」

「………」

「…わかった。今度買ってあげるよ。」

「よっしゃ。言質(げんち)取りましたからね?約束ですよ?」

「はいはい。」

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