星空
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渚は転移で空間を抜け、更に上空へと昇っていく。
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「「星灯」」
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消えてしまった装束を再び展開する。
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…さてさて、前哨戦も終わった事だし…本番に向けて少し休もうか。
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空が暗い青を超えた頃、渚は大気圏を抜けていた。
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……世界を繋げたからかな、私の記憶より星の量が多い気がする。
にしても疲れた。何だかんだ長生き…いやそうでもない……そうでもないか。ややこしいなもう…
「私」が私である前も含めると…ざっと1200年か?まあ法則よりは年下か。
唯は心配いらないし、楓君は……まあ、周りの人が助けてくれるだろ。悠華君とも仲いいみたいだし。
皆から私の記憶でも消しておこうかな?私なんかを覚えていてもしょうがないし。
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そんな事を考えていると、空間が緩み始める。
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……時間切れか。ま、悔いの残らないように頑張ろうかな。
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緩んだ事で発生した隙間から、木の根が渚に向けて伸びてくる。
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――驚いた、
「夜」
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第一陣の根が切断されるが、さらに大量の根が伸びてくる。
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「ステラ」
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地上から離れつつ、精製した剣から衝撃波を飛ばしていく。
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これ、ただの木の根か。魔力を一切保有してない…
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斬撃や弾丸で根を片っ端から破壊していく。
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…なら、どうやって外から来た?
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触れないよう、根を破壊し続ける。
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………?
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気づくと、渚の腕を根が貫いていた。
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いつの間――
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が、即座に抜ける。
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…何をした、何をされた?
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困惑しながらも、渚は根を切断し続ける。
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何を持っていかれた?
違和感はある、だがそれはなんだ?致命的な物じゃないからと言って放置する訳には……
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再び根が渚を貫き、即座に抜ける。
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……まさか、
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一度目に、渚は「全能」を始めとする神権の殆どを取られた。
二度目に渚は、天使の力を抜かれた。
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環が消えた、というか環が無い状態をデフォルトにされた…のか?
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自身の指を噛み、血の色を確認する。
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赤色………
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再び根が刺さる。
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……これ違うな。私の想定と違う。
「おい!」
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木の根の動きが止まる。
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…やっぱり、
「持っていくのは構わん、だが説明はしてくれ。納得がいかない。」
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根は緩やかに動き、渚に何かを伝えようとしている。
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……労い、感謝…あと謝罪?
「…目的は?」
………回収、無害、白旗……これは敵意無しの意か?………同意……
「……お前…ら?は何だ。」
…観測、回収、謝罪……
どうも意思を汲み取りきれない……私の所為か?
「目的は何だ、命か?」
否定…
「なら神権か?」
肯定……
……訳が分からん、こいつは何なんだ。
「神権を取ったら、お前はどうするんだ?」
……記録、帰属、同期、■■………読み取れない……
「……私がこの状態になるまでの事をお前が知ってるなら、それについてはどう思ってる?」
謝罪、謝罪、謝罪、謝罪、謝罪――「わかった、分かったよ。」
「……じゃ、私の中にある諸々を持っていったら、二度と来ないんだな?」
肯定、
「じゃ持ってけ。…わざわざこんな面倒な手順を挟む必要はあったのか?」
肯定……こいつだかこいつらだかも、何かしらの事情があるのか。
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枝が渚に触れると同時に、渚の中にある神権全てが抜き取られていく。
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気がつくと、渚は地面で寝転がっていた。
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…意外と融通効くんだな……
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髪と目の色は白や金ではなく、ただの黒色に戻っている。
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……神権、というか神権に関連する全てが持ってかれたか。
第六感と天使の力…あと諸々の感覚……「不滅」で再構成した私の体自体が消滅しなかっただけ奇跡かもな。
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星空を見上げる渚の視界に、銃口が映る。
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「…やあ楓君。元気そうで何より。」
「……まず、止めてくれた事についてはありがとうございます。」
「今の私は神権を持たないただの人間だ。魔術も…」
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掌から、蝋燭程度の光が出現する。
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「これぐらいが精一杯だ。で、どうするんだ?」
「……………………僕は、あなたが嫌いです。」
「…私個人、というよりは神全体か。」
「はい。……自分達以外の事を何とも思わず、自由気ままに力を振るう。…同じ盤上に立とう物なら即座に弾かれるような、理不尽の天災があなた達でしたから。」
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トリガーから震える指を外す。
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「……でも、あなた達は神じゃなくて人だって事を、盤外に飛び出るだけの力を持った「人」でしかない事ぐらいは分かってます。」
「実際僕だってそうなりかけましたから。……だから、そこについては感謝してます。」
「……神はもう現れないから、そこは安心するといい。」
「そうですか。」
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銃が消え、楓は渚に背を向ける。
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「……僕は二度と、あなたに関わりません。なので、あなたも同じように関わらないでください。……これ以上、憎みたくないです。」
「…この気持ちが揺らがない内に行きます。」
「わかった。………元気でな。」
「やっほー、渚ちゃん。…うん、私の見覚えのある雰囲気に戻ってるね。」
「…私と君は、そこまでの仲じゃないと思うんだが。」
「……冗談だ。久しぶりだな、唯。いつ思い出したんだ?」
「渚ちゃんが庇ってくれた時に、何となく。」
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唯が渚の隣に寝転ぶ。
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「…置いてっちゃってごめんね。」
「こっちも世話掛けたな、すまない。……特に怪我とかしてないか?」
「だいじょうぶ、全部軽傷。」
…ちゃんと加減出来ててよかった。
「…渚ちゃんはさ、これからどうするの?」
「今悩んでる所だ。…一応それなりに悪い事はしてるし、このまま生きるのも……とは思ってる。」
「かといって、今すぐ死ぬのもそれはそれで駄目な気がしてる。…唯はどう思う?」
「……好きにしたらいいんじゃない?」
「いやそれはそうなんだが、それにしても道理とかあるだろ。そういうのをどうしようかと思ってるんだ。」
「うーん……じゃ、それを探す所から始めたら?一概には言えないけどさ。」
「…大人しくしてるのは性に合わないし、まあ何かしら…人助けとか?はしていこうと思ってる。」
「なんで人助け?」
「私のやった事の尻拭いとして、ぱっと思いついただけだ。これから詰めていくよ。」
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二人とも立ち上がり、どこかへ歩き出す。
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「ちなみに、今はどれぐらい魔術使えるの?」
「蝋燭と、…ちょっと空を踏めるぐらいかな。それ以外は無理だ。」
「…じゃ、私もついてこうかな。二人旅も楽しそうだし!」
「別に楽しむ事が目的じゃないんだが……というか、二人についてはいいのか?」
「まー大丈夫かな。楓君の憑き物は今後剥がれていくだろうし、悠華は居たい所に居るし。」
「そういう訳で役割が無くなった私は、渚ちゃんが道を踏み外さないように見張ろうと思います。」
「……わかった。じゃ、監督よろしく。」
「………困ったら頼ってよ?」
「そうするよ。」
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ふいに渚が手を伸ばして、何かを引き寄せるような動きをする。
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…長く使ってた割には、結構あっさり使えなくなるもんだな。
「星系統も使えなくなってるの?」
「…ちょっと不便にはなるかな。」
「……なんか淡泊だね。そこまでショック受けてる感じしないし。」
「そもそも自分で得た物じゃないし、この手の事に対して何とも思わないのは……私がそういう人だからだろうな。」
「……じゃあ!もっと色んな物見て、手放したくない大事な物作ろうよ!」
「…それも考えてみるか。」
「……まずは剣の撤去から始めようかな。流石に出しすぎた。」
「あれはちょっとやりすぎだと思うよ。」
「…責任もって片付けます。」
さて、どうやろうかな。
次が最終話です
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