射手
こいつの全力はこんなんじゃない。
――――
弾丸が飛び交う応酬の最中、楓は一つの結を出した。
――――
……「あの人」が言ってた通りなら、この世界にある神権全てを掌握してるはずだろ。
「【魔弾】!」
――――
弾丸は渚へ飛んでいくが、刀で弾かれる。
――――
実体の刀…には見えない、そういう所だけ無茶苦茶やってるのか?
「お前は、何が目的だ。」
「…時間潰そうと思ったから?」
「……本当に、それだけか?」
「お前の知る「神」ってのは、そういう物だろ?」
……その余裕を命取りにしてやる。
――――
渚の翼から、俄かに湯気が立ち上り始める。
――――
◆◇
ちゃんと「不滅」付与してるはずなんだが……
――――
「現実」が翼の温度を下げた事で、翼には霜が着き始める。
――――
……物自体は変わらなくても、それに作用する空間とかは「不滅」じゃないからか。そっちには作用出来ないし、都度冷やすしかないか。
意外と制約多いんだよな…大半の神権は使い道限られてるし、汎用的に使える物もそれなりに制約はあるし。
まあ使わないのは使わないのでリソースに出来るしいいか。
編集開始、
――――
文様が刻まれた翼が六枚を超えて増殖し、楓を取り囲む。
――――
「大見得張ったんだ、相応の力と覚悟はあるんだろうな?」
◆
来る、
「【Freikugel】!」
――――
全ての翼から弾丸が発射される。
――――
幾つかは残す、
「【魔弾」、の弾倉】
――――
翼諸共弾丸を巻き込み、発射する。
しかし、巻き込んだ魔力の半分は白い弾丸として楓の手元に残った。
――――
◆◇
ちぇっ、「不滅」付与してるのに持ってかれたか。
だが再生成は出来る、
「ステラ!」
――――
先程の翼よりも多くの剣が生成される。
直後、剣それぞれに文様が刻まれる。
――――
◆
さっきと同じか?
――――
弾丸が放たれると同時に、楓は先刻と同じように魔力を集めた。
――――
◆◇
待ってました、
「Burst!」
――――
楓の右手が爆ぜる。
――――
「っ…」
攻め時!
「【Freikugel】!」
――――
六つの翼から衝撃波が飛ぶ。
――――
……返された?
――――
衝撃波は楓に当たる事なく、渚の右腕を消し去るように撃ち返された。
――――
「別に右手じゃなくても撃てますよ。」
――――
楓は左手を渚に向けている。
――――
「……そりゃそうか、固有魔術にそういう制約はないし。」
――――
回復弾を撃ち込んだ事で、楓の右手が再生する。
時を同じくして、渚の右腕も「不滅」の力で治る。
――――
◆
……削り勝負だとどう足掻いても僕の方が不利だ…なんて、そんな事は最初っから分かってる。
一撃で吹き飛ばす…なんて芸当が出来る奴が居たなら、こいつはここまでになってない。
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短く、されど深く息を吸い込む。
――――
…割り切るって決めたんだ、前を向くって決めたんだ。
――――
手袋を介して、一つの弾丸を取り出す。
――――
……だから、やるんだ。
――――
渚の鼻から、僅かに金色の血が滴る。
――――
◆◇
…やっぱ負荷が高いな……回路編集と「全能」とその他諸々、こいつらの管理を頭蓋の中だけでやるのはちょっと無理があったかな。
まあ動けば何でもいいか。
「「混沌」」
――――
渚の魔力回路がブラックボックスになるが、依然として機能は変わらない。
――――
よし。やっぱり全部を見なければ何とかなるな。
ブラックボックスをコピペしていけば、だいぶ楽に運用出来る。
――――
楓が左手に銃を構え、自身の頭へ向ける。
――――
◆
……大丈夫、いつもと同じ事だ。
――――
迷いなく引き金が引かれ、弾丸が楓に取り込まれる。
その衝撃を受け、楓の頭が右に跳ねる。
――――
◆◇
……?
「何をした?」
――――
飛んできた衝撃波を弾く。
――――
……さっきの弾丸、もしかして…
――――
再び飛んできた衝撃波を弾――
――――
!
――――
いたが、両断した衝撃波が再び渚へと向かってくる。
――――
追尾…
――――
背後の翼二枚から衝撃波を放ち、背後から迫る衝撃波を相殺する。
――――
「…それは君が抑えられる物じゃない。」私でも御しきれてるとは言い切れないし。
「………」
――――
楓は何も発さず、再び衝撃波を放つ。
――――
……ちょっと遊びすぎたな。
◇◆◇
…げ、寝ちゃってたか。
――――
唯が目を覚ます。
――――
魔力は…うん、これぐらいあれば自力で……
――――
周囲の魔力が唯に取り込まれていく。
――――
「悠華、私も入れて。」
「…行けるの?」
「もち。というか行かなきゃでしょ?」
「まあそうだけど………わかった、ちょっと待って…」
――――
悠華が掌を唯へ向ける。
――――
「【水鏡】!」
――――
空間が屈折し、唯は別の空間へ引きずり込まれる。
――――
えーっと、外壁部か。さて、二人は……!?
――――
唯が空間に侵入した直後、その真隣にボロボロの渚が着地した。
――――
「おー、どうもどうも。」
――――
唯が渚を睨む。
――――
「…ちょっと話でもどうだ?」
「……いいよ。」
――――
唯の返答と同時に、二人以外の時間が止まる。
――――
「今の楓君は「全能」の力を取り込んで暴走状態にある、どれぐらい効果が持つのかは分からないがそろそろ限界になると思う。」
「限界ってのは彼の肉体的な話だ。多分「全能」は不完全なんだがどのみち人の体で耐えられるような代物じゃないから近寄って没収したい、協力してくれないか?」
「……今やってるみたいに時間止めたらいいんじゃないの?」
「魔弾は時間操作貫通。体は止められるけど近づいたら撃ってくる。」
「…言っとくけど調律も貫通するからね。何すればいい?」
「私が楓君の相手するから、唯は限界まで気配消して楓君に近づいて、楓君が今保有してる魔力を排出してほしい。援護はする。」
「…楓君を止めれたとして、その後あなたはどうするの?」返答次第じゃ……
「やる事がある。これ以上君達に何かする気はない。」
嘘では…無いかな。
「わかった。協力する。」
「…そろそろ時間が動き出す。始めるぞ。」
――――
そう言って、渚は唯の元から飛び去る。
同時に、時間が再び動き出す。
――――
◆◇
……さて、
――――
無数の剣が展開される。
――――
ちょっと張り切って行こうか。
「【Freikugel】!」
――――
無数の光線が楓へ放たれるが、一纏めになって撃ち返される。
それが繰り返されるその中で、
――――
◇◆◇
――【消え往く風】
――――
唯の体が透け、見えなくなる。
――――
装束は…一応使えるね。使うなら、もっと近づいてからだけど。
――――
白い衝撃波と弾丸、そして剣が無数に飛び交う中を唯は駆け抜けていく。
――――
二人とも私が居るところわかってるんじゃないの?
――――
唯の眼前すれすれを弾丸が掠めていく。
――――
ん-…そろそろ使うか。
「――「風詠」」
――――
装束と共に、唯が姿を現す。
――――
◆◇
何で出て…あいや、装束使ってるのか。じゃあ遠慮なく、
「夜!」
――――
刀から放たれた斬撃も巻き込まれ、弾丸として渚へ撃ち返される。
――――
「夜!」
――――
撃ち返された弾丸を斬撃で相殺する。
――――
やっぱり発射後も魔力を巻き込むのが面倒だな。半端な威力だとただの燃料にされるし。
――――
渚が高速で飛び回り、楓の攻撃を唯から逸らす。
――――
さて、唯が楓君から魔力を抜いたタイミングに私も合わせないとなんだが……
◇◆◇
!
――――
唯が楓に近づいた直後、楓は構えた手を渚ではなく唯へと向けた。
――――
大丈夫避けれはする!
――――
衝撃波が唯を飲み込む。
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やばい装束持ってかれた!
――――
装束こそ巻き込まれたが無事に衝撃波の中を突き抜け、楓に迫る。
――――
ここで何とかしないと――
――――
楓が両手を構える。
――――
◆◇
!!
――――
渚が唯と楓の間に割り込み、魔力を抜いて生成した盾を張る。
――――
◆
…それを、
――――
左手に現れた銃から放たれた白い弾丸は盾を貫通し、
――――
◆◇
「がぁっ――」
貫かせるなぁ持たせろ!
――――
渚の体を貫き、唯を庇う様に移動した六枚の翼を破壊してやっと止まる。
――――
大丈夫唯には届いて――
――――
顔中から血を出しながら、血走った眼で楓は渚を見据える。
――――
…今撃つのか!?
◆
待っていた。
「【魔弾】」
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考える間もなく渚は行動を始める。
――――
【結界光】、【境界線】
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唯と渚の間に二重の結界が張られる。
――――
「【FullBurst】!!!」
――――
渚の持つ魔力全てが爆ぜる。
――――
――――
渚を起点とした連鎖爆発が発生し、弾丸を搔き消す。
――――
◆
…次、
――――
再び楓の右手に魔法陣が展開され――
――――
?
――――
る直前、楓の顔が掴まれる。
――――
「その程度で「全能」とは片腹痛い!」
――――
楓の中にある魔力と神権が抜き取られ、砂の様な状態から戻りつつある渚に差し込まれる。
――――
「「全能」使う前の方がぁ!まだ楽しかったぞ!!」
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そのまま外壁部へと楓を投げる。
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◆◇
はあ………空間調律、
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体の修復が終わると同時に、渚は空間を解体し始める。
――――
…そろそろ時間か。
――――
星が煌めいた。
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