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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 6
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小さな幽霊屋敷 2


 幸太郎、モコ、エンリイの3人は、



孤児院のそばまでやってきた。



すでに孤児院の建て直し工事は始まっている。



畑は全ての作物を引き抜いて食べてしまい、



今は資材置き場だ。



孤児院の建物も解体中である。



孤児たちは、すでに空家へ分散して引っ越していた。





ついでにオーガス教の教会も建て直し中。



イベントの競売で信じられないような



莫大な収入を得た結果だ。





だが、幸太郎の血も涙もない作戦のせいで、



オーガス教は苦境に陥っている。



世間の評判は悪くなり、信者は減り、



誘拐された奴隷を解放するために



リーブラ教にアゴで使われている。



それでも、オーガス教の信者は



黙って耐えるしかない状況だが・・・。



すでに、我慢できなくなって



流血沙汰のケンカ、そして



死人が出る事件も発生しているのだ。





もちろんサイコパスの幸太郎は



『もっと泣け』としか思っていない。



どうせオーガスも、信者の苦境、イザコザを



笑ってみているだろうから。



幸太郎が心配しているのは、



孤児院などの社会インフラのほう。





幸太郎は『問題が発覚した場合は、



いっそ問題を可能な限り大げさ、



大ごとにして炎上させるべき』だという



一般人に迷惑な考え方をしている。



『その方が解決も速いし、再発も防げる』と



思っているのだ。





ただ・・・残酷なことに、それは間違っていない・・・。



例えばイジメなどでも



『話が世間に広まらないように』とか、



『加害者含め関係者に影響が』などと



事件を小さくしようとすると、



結果として解決もしなければ、



再発も防げなくなる。



SNSなどで、大々的に拡散し、警察の介入、



弁護士を使った損害賠償請求など



『事件』にした方が



『犯人、学校関係者、世間など』が



『悟るのが早い』のである。



『あ・・・これ、割に合わないんだ』と。



『反省』? 



するかしないかは、犯人次第。



被害者はそんなことより、



まず被害を止めてほしいのだ。



犯人たちの反省については心配いらない。



どのみち地獄で泣き叫びながら



『もうしません! もうしません!』と言うのだから。



閻魔には嘘も言い訳も通じない。





ちなみに、オーガス教には



さらなる追い討ちがあった。



『ナイトメアハンター』が



『デーモン』を討ち取ったせいだ。



リーブラ教もそうだが、人々から



『あいつら、何の役にもたたねえ』



と、言われだしたのだ。



悪魔と戦ったこともないし、



二コラの正体を見破ったりもしなかった。



カース・ファントムと戦ったこともないし、



『デーモン』を討ち取ったこともない・・・。



ナイナイ尽くし。



反対に『ナイトメアハンター』の名声は



うなぎのぼり。



グリーン辺境伯から情報が漏れたのか、



『ナイトメアハンター』を真似て、



毎朝、太陽に手を合わせる人々まで現れだしたのだ。



幸太郎は



『アステラ様、よろこんでくれるだろうか?』と



のんびり考えていたが、



オーガス教、リーブラ教は



半分パニック状態に陥っている。



信者からの寄付が減ったのだ。



どちらの宗教も、枢機卿や教主は



『ナイトメアハンターを探し、家族として迎えよ!』と



号令をかけた。そして



『聖騎士たちは、目に見える手柄をたてよ!』と



命令が出ている。



具体的には悪魔か、デーモン、



そして『黒フードのネクロマンサー』を



討ち取れということだ。





『ナイトメアハンター』を味方につけろと言い、



『黒フードのネクロマンサー』を殺せと言う。



そして彼らが信仰している神の正体は悪魔。



奇妙な事態だが、彼らは切実、真剣だ。



信者が減ると、寄付が減る。



カネ・カネ・カネ・カネ・・・。



神の名で商売をしていれば、そんなもんだろう。



寄付が減っても、



神は自分の仕事を放りだしたりしない。



が、言ってもわかるまい。



人類が生まれる何十億年前でも、



太陽は登っていたのだが、



それを理解する知性を彼らは持っていないのだ。








クリストフのアトリエの敷地は、けっこう広い。



建物も普通の民家よりは大きい。



元々倉庫だったせいだろう。



荷物を動かしやすいように、



余裕をもって作られているのだ。



まあ、商人ギルドの建物が新築、引っ越した後は、



全然使わなくなってしまったのだが。





門から2階建ての倉庫を見上げる・・・が、



窓には何も見えない。



噂通り、夜にしか見えないようだ。



ただ、幸太郎には関係ない。





「では、『霊感』オンっと・・・」





脳内でステータスウインドウを展開。



『霊感』のスイッチをオンに切り替えた。





これで幸太郎には見える・・・倉庫の『本当の姿』が。





「な、なんだ、こりゃあ・・・?」





昼間なので、見えにくいが、倉庫の建物全体に



蜘蛛の糸みたいなものが



たくさん纏わりついている。



いや、蜘蛛の糸というより、何かネバネバした



粘液と言った方がより近い。



『鑑定』をすると『崩れかけた魂の残滓』と出た。



もちろんイベントの時には、



こんなもの無かったのに。





そして、『いた』。





「確かに、窓のところに人影があるな。


こっちに背を向けているが、


間違いなくクリストフだろう」





「迷って出てきたのですね」





「おとなしく死んどけばいいのにね」





「モコ、一応聞くけど、倉庫の中に誰かいるか?」





モコは耳をすませる。





「・・・いいえ、建物の中には誰もいません。


何の音もしないです。いるとすれば、


ご主人様に見えているクリストフだけでしょう」





「噂通り、無人の『幽霊屋敷』ってわけか・・・」





「ゴーストなら幸太郎サンの敵じゃないでしょ。


さ、中へ入ろうよ」





「そうだな。さっさと霊界へ送ってやるのが


最後の親切だろう」





幸太郎は商人ギルドで借りてきた鍵で、



門を封鎖している



南京錠みたいな大きな錠前を開錠した。





ガチャン。キイイイ・・・。





幸太郎が敷地内へ一歩足を踏み入れたとたん、



『ゾクッ』とした。



モコが幸太郎の腕を掴んで立ち止まる。





「ご主人様! 急に中で物音が!」





「ボクにも聞こえるよ! 


なんかドアがバタンバタン


音を立ててる!」





もちろん幸太郎にも



ドアが開いたり閉まったりする音は



聞こえている。



しかし、問題はそちらではない。





幸太郎は2階の窓を凝視している。



今まで背を向けていた男が、突如向きをかえ、



幸太郎を見ているのだ。





「クリストフ・・・お前・・・」





確かに、それはクリストフだった。



だが、美しい顔の半分がひどい火傷を負っている。



おそらく処刑される前に拷問を受けたのだろう。



エメラルド嬢をあんな苦しい目にあわせ、



殺そうとしたのだから、



報復を受けるのは因果応報としか言いようがない。



ルキエスフェルの口車に乗らなければ・・・



自己顕示欲と承認欲求を



コントロールできていたなら、



クリストフは今でも絵を描いていたはずなのだ。





だが、幸太郎が眉を寄せたのは、



それとは別のことに対してだ。





クリストフの顔、頭、体が



溶けかかっているのだ。



最初は、倉庫にまとわりついている



粘液みたいなものが



クリストフにもくっついていると



幸太郎は思った。



それは違った。



間違いなくクリストフ自身が



『溶けかかっている』のだ。





(魂が崩れかけてる・・・のか・・・)





そして、クリストフの表情が変化した。



明らかに怒っている。



しかも、歪んで気味が悪い。





(そうか、俺たちのことを少しは憶えているんだな)





「ご主人様、倉庫の中の物音が激しくなっています!」





「こ、これ、なんかマズいんじゃ!?」





モコとエンリイが心配して



幸太郎を引き留める。





「これはポルターガイスト現象だな。


原理はよくわからんが、


倉庫内の物音は霊が引き起こしている。


2階の窓に見えるクリストフは、


俺たちを見て怒っているようだ。


恨んでいるのだろう」





「えええ!? こ、幸太郎サン、やめようよ! 怖いよ!」





「ご、ご主人様、私も、エンリイに、賛成です!」





だが、幸太郎は2階の窓に見える



クリストフの顔を凝視し続けている。





「・・・ふーん・・・。よし、モコ、エンリイは


敷地の外で待機しててくれ。


これは『命令』だよ。


俺だけで行ってくる」





「だ、大丈夫ですか!?」





「いくら幸太郎サンでも・・・」





モコとエンリイの心配は当然である。



だが、幸太郎はサイコ野郎なのだ。



そして、好奇心が強い。





「いやあ、興味深いんだよ、これ。


初めて見るし。


元の地球でもポルターガイストって存在してさ、


どんな仕組みになってるのか、


不思議に思ってた。


今なら『霊感』があるから


いろんなものが見えるだろう。


楽しみだな。


あ、ついでにクリストフも成仏させとく」





クリストフは『ついで』に格下げされた。



サイコパスはこれだから始末に困る。






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