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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 6
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小さな幽霊屋敷


 ギブルスの話によれば、



クリストフがアトリエにしていた倉庫に



幽霊が現れるというのだ。





「クリストフのアトリエって、


先日のイベントをやった


孤児院と墓地の隣にあるやつですか?」





「そうじゃ。あの倉庫の中を片付けて、


誰かに貸すか、売りに出そうと


商人ギルドが考えたのじゃ。


前の住人はもう帰って


こないからのう」





あの墓地の隣にある倉庫は、元々商人ギルドが



タダ同然でクリストフに貸し出していたという。



あくまで持ち主は商人ギルド。





墓地の隣というロケーションと、



商人ギルドの建物から遠いせいで、



長年誰も使っていなかった。



それを商人ギルドの『作業員』だったクリストフが



二束三文で借りて使っていたのだ。





「イベントの時に墓地の霊は


成仏させてまわりましたが、


あの倉庫に幽霊が出るとは


気づきませんでしたね・・・」





「夜になると、窓に人影が見えたりするそうじゃ。


また中から物音を聞いたという警備隊の者もおる」





「クリストフが迷って出てきたのでしょうか?」





「たぶん、そうじゃろ。


すでに『クリストフの幽霊』だと


商人ギルドでは噂になっておる。


クリストフは表向き『行方不明』のままじゃが、


さすがに『もう死んでる』と誰もが気づき始めた。


仕事もしてないし、家賃の支払いもない。


描きかけの絵なども、


そのまんま放置されておるからのう」





「しかしよ、ジジイ、そりゃあオーガス教や


リーブラ教に依頼するべきことじゃねーのか?」





教会には『拘束』の魔法を改造した『浄霊の奇跡』がある。



霊に『拘束』をかけて動けなくした後、



一時的に地面に埋めてしまうという。



埋まっているだけで、成仏はしない。



成仏するかどうかは、あくまでも霊次第である。





「すでにオーガス教、リーブラ教、双方の司祭が


失敗しておる。いや、もちろん双方ともが


『失敗ではない、日を置いて続きをする』と


言っておるがのう。


しかし、倉庫に入った商人ギルドの


作業員の中に、


体調を崩す者が複数出ておる。


実害が出ておる以上、


教会の祈祷とやらは効果が無かったのじゃろう。


ともかく、未だに夜になると窓に


人影が見えるそうじゃ」





「ふーむ、しかし、私は表向き『ヒーラー』ですよ?


ネクロマンサーとしては動けません」





確かに幸太郎は表向き『ヒーラー』として



冒険者ギルドに登録してある。



ネクロマンサーではないかと



疑われるわけにはいかない。





「ひっひっひ、心配はいらんぞ。


その辺は、なんとでもなる。


お前さんが『成仏』であの世へ送っても、


『描きかけの絵を墓地で燃やしたら幽霊が消えた』とか


適当に理由をつけておけばええ。


どーせ誰も原因など、わかりはせんのじゃからの」





「あ、言われてみれば、その通りですね・・・」





幸太郎の頭はぽんぽこぷー。





「おそらく、明日か明後日には商人ギルドから


『倉庫の除霊』の依頼が


掲示板に張り出されるじゃろう。


お前さんは


『もしかしたら絵を燃やせば未練が消えるかも』と


言って引き受ければいいのじゃよ。


おそらくじゃが、この依頼を


成功させることができるのは、


この町では、お前さん以外におるまい。


それに、アステラ様から依頼された本業でもあるじゃろ」





「なるほど、確かにそうですね。


それにクリストフを捕まえたのは私たちですし、


責任とって幽霊にもトドメを刺しておきますか」





幸太郎は発言がサイコだ。








この日は夕方まで、海で遊んだ。



ギブルスは仕事があるのでカーレに帰ったが、



ジャンジャックとグレゴリオはそのまま。





全員で釣りをしたり、砂浜でバーベキューしたり



日頃の疲れを癒した。



幸太郎は基本的に一日おきにしか、



働いていないが・・・。



ジャンジャック、モコ、エンリイは釣りが上手。



3人で競うように釣りまくる。



幸太郎はウキを眺めて、うつらうつら・・・。





この世界の魚はスレてないので、バンバン釣れる。



釣り人ばんざい。





ジャンジャックとグレゴリオは『おにぎり』が



食べたいと言った。



どうも気に入ったらしいので、



大量にお米を炊いて、



数十個もお土産に持たせた。



世界樹とドライアードが白米を



大量に作ってくれたので、



数年分は『マジックボックス』に残ってる。



そして、ステーキに味噌をつけて食べるのも



気に入ったようなので、数キロ譲った。



確かに味噌バターステーキは、滅茶苦茶うまい。








モコ、エンリイ、エーリッタとユーライカ、



クラリッサとアーデルハイドも『おにぎり』が



気に入っている。





ただし、美味しいだけでなく、別の意味もある。





(ご、ご主人様が、直接、手でにぎってくれた


『おにぎり』・・・。幸せ・・・。


なんか、食べるだけで、胸が温かくなるような・・・。


こんなにシンプルなのに、


こんなに幸せを感じる料理があるなんて、


ご主人様の故郷は天才の国なんだわ・・・)





この世界では日本人はモテモテになるかもしれない。



ほとんどの日本人はすぐに死ぬだろうけど。








翌朝。



幸太郎がギルドの依頼掲示板を見ていると、



ギブルスの言った『商人ギルドからの依頼』が



張ってあった。





『幽霊屋敷の除霊もとむ』





報酬は銀貨5枚。防壁の中だし、命の危険が少ないと



判断されたのだろう。期限も決まっていない。



誰かが成功させるまで有効な依頼だ。



受注に必要な冒険者ランクは『E』。



要は『新人』以外、誰でも受けることができる。





ただし、『教会はすでに失敗』と注意書きがあった。



もちろんオーガス教、リーブラ教、双方が



失敗とは認めていないが、冒険者相手に



回りくどい言い方をしても伝わらない。



説明は相手に理解できるように言わないと



意味が無いのだ。





(もしかして、自分以外にもネクロマンサーが


いたりしないかな・・・?)





幸太郎はそう思って、朝食をとりながら



掲示板を見ていたが、まったく、誰も



『幽霊屋敷の除霊』に興味を示さない。



依頼の紙を見る者はいるが、



最後まで読む者すら皆無。





当たり前の話ではあるが、冒険者たちは



全員『プロ』だ。



自分のパーティーの得意なこと、苦手なことを



正確に把握して、



『依頼の達成ができそうなもの』、



そして何より



『生き残れそう』なほうを選ぶ。



勝算が無い依頼を引き受けるなど、



時間の無駄。愚の骨頂。



『よーし! とりあえずやってみよう!』なんてのは、



命の危険が無い、平和な世界の人間の発想だ。



もしくは自分に何ができるか把握してないバカか。








朝食を食べ終わると、幸太郎たちも動き出す。



エーリッタとユーライカ、



クラリッサとアーデルハイドの



4人組新パーティーは今日も哨戒任務だ。



報酬は低めだが、運が良ければ歩いて偵察するだけで



終わる任務である。



しかもエリアが違うだけで、毎日ある依頼だ。



クラリッサの新パーティーは、全然報酬に拘って無い。



なにしろ、食費、宿代、消耗品など、必要経費は



全て幸太郎が支払ってくれる。



極端なことを言えば、



毎日遊んでいたって困ることは無い。



さらにクラリッサとアーデルハイドは、



元々C級へのランクアップは



目指していないのだ。



アーデルハイドが人見知りするから。



そしてエーリッタとユーライカも



D級ランクを目指すのは止めた。



幸太郎さえいればいいからだ。



クラリッサの新パーティーは



『ゆるゆる、のんびり』である。





ただ、このパーティーは滅茶苦茶強いので、



出会った敵は速やかにあの世行き。



『デーモン』と戦ったあと、



クラリッサとアーデルハイドが身に着けている



漆黒の鎧と盾を



全員でチェックしてみた。



結果は『まったくの無傷』・・・。



『大火球』や『大風刃』、デーモンのパンチを



受け止めたのに、何の跡もついてない。



さすがは名工『エドヒガンブラザーズ』の業物。



そして『アルカ・オオカブトムシ』の外骨格の



脅威の頑丈さである。



クラリッサとアーデルハイドのパワーに加え、



エーリッタとユーライカの援護射撃を考えれば



通常名前を聞くような魔物や盗賊では



相手にならないだろう。



まずエーリッタとユーライカの狙撃を



かいくぐって、接近できるかどうか・・・。








幸太郎、モコ、エンリイは『幽霊屋敷の除霊』の



紙をはがすと、カウンターへ持って行った。





「え!? この依頼を受けるのですか?


まさか、幸太郎さんは


『浄霊の奇跡』が使えるのですか?」





カウンターのルイーズが驚く。





「いやいや、そんなわけないですよ」





「じゃ、じゃあ、もしかしてネクロマンサー・・・?」





「違いますって」





幸太郎は一瞬『ぎくっ』としたが、



営業モードで誤魔化す。



考えてみれば、ルイーズの驚きは当然だ。



除霊できるのは教会の僧侶か、ネクロマンサーだけ。



アステラが幸太郎をネクロマンサーにしたのは、



この世界の僧侶はオーガスかリーブラへ祈るから



亡者を成仏させることができないためである。



この依頼を受けるというなら、幸太郎が



僧侶かネクロマンサーか、どっちかの能力を



保有していると考えるのが普通だ。





「私は教会に在籍してたこともないし、


ネクロマンサーでもありません。『ヒーラー』ですよ。


ただ、この倉庫の噂は聞いてます。


『クリストフのアトリエ』ですよね?


実は昔、イーナバースで同じようなケースを


見たことがあるのです。


ある人形師が亡くなったのですが、葬儀の後、


毎晩アトリエの人形たちが動き出すというのです。


紆余曲折あったのですが、


最後は作りかけの人形を燃やしたら、


ピタッと騒ぎは止まったそうですよ。


人形師は作りかけの人形に未練があったんでしょう。


もしかしたら、今回も、


同じ手が通じるかもしれません。


絶対成功するという保証はありませんが、


試してみる価値はあるかと・・・」





「なるほど・・・。似たような前例を


知っているのですね。


わかりました。受注を許可します。


この依頼は失敗してもペナルティはありませんから、


無理はしないでくださいね。


むしろ引き受ける人が現れたことに


ビックリしてるくらいですから。


あ、失言です。うふふ」





ルイーズは口元を抑えて、笑った。



引き受ける人がいたことに、



本当に驚いているのだろう。



幸太郎のデマカセを信じてくれたようだ。






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