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異世界徒然行脚 『Isekai Walking~nothing else to do~』  作者: 雨男
ネクロマンサーと城塞都市カーレ 6
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意外な正体 6


 幸太郎は戦慄した。



『鑑定不能』は今までオーガス、リーブラ、



そしてロストラエルの3人の悪魔だけしか



表示されなかった。





(つまり、こいつも・・・悪魔か!)





幸太郎はイチかバチか『神虹』を使うしかないと思った。



ただし、相手がおとなしく当たってくれるとは思えない。



ただそのまま撃っても、躱されるだけだろう。



そして幸太郎が1時間死んだ後は、



ここにいる全員も



死体になっているのは自明の理である。





(アステラ様やムラサキさんが来てくれるとは限らない!


ナイトメアの時は来なかった。


自分でなんとか切り抜ける策を


考えなければ・・・!)





緊張した顔の幸太郎たちを見た女悪魔は、



美しく微笑んだ。



だが、禍々しい目は何も変わっていない。



その目を見ているだけで、何か冷たいものに



足首を掴まれるような恐怖を感じる。





そして、その女悪魔は



ゆっくりとしゃべりだした。





「そう怖がらなくていい・・・。


お前たちに用はない。


ロストラエル様に『手を出すな』と言われているのでな。


わが名は『ネグリスナガン』。


もう気づいているようだが・・・悪魔だ。


まあ悪魔といっても、


最下級の『ナイトメア』でしかない。


だが・・・。


お前がダンジョンの下層で倒したという、


『名無し』のクソザコなどと一緒にするのは


やめておいたほうがいいと思うぞ・・・?」





そう言って妖艶に微笑んだ。



威嚇や脅しをしてこないあたり、



実力の差がよくわかる。



本当に強い者は



無意味な虚勢を張ったりしないものだ。



『強者』は戦えば相手が必ず死ぬのだから。





幸太郎は前に出て、応答することにした。



戦わずに回避したい相手だし、



戦うなら『神虹』を当てるチャンスを作る方法を



探す必要があった。



『神虹』はチャージタイムが必要だし、



その桁外れのエネルギーを見れば、悪魔ならそれが



人智を超越した大砲であることは



一瞬で理解できるだろう。





「自己紹介ありがとうございます。


私は幸太郎と申します。以後、お見知りおきを。


あなたがここへ来た理由は・・・、


その魂の回収のためですか?」





「ほう。一応礼儀はわきまえているようだな・・・。


そのとおりだ。


この・・・なんと言ったか、ベケボス?


こいつがデーモンを呼び出し、


魂が融合したようなので回収にきた。


魂が弱すぎてデーモンの主人格になることは


できなかったようだが・・・。


まあ、このまま融合を繰り返し、


魂が大きくなってゆけば、


いずれ悪魔に近づくだろう。


そうなればロストラエル様の忠実な手駒になるはずだ」





「そちらの怪物たちの魂は回収しなくて


よろしいのですか?」





「ん? この『出来損ない』どもは


『闇の落とし仔』という。これはただのゴミだ。


人間を超越した存在になりたくて


他者の魂と融合したが、


ろくな知性も無く、大した力も無く、


ただ腹が減るだけの醜態をさらす、ケダモノだ。


回収する価値は無い。こんなバカは数に入らん。


ただ、他者を見下したいだけで、魂に力がないのだ」





「でも、そんなイキりたいだけの人々は、


後から後から湧いてくる・・・ですか」





「よくわかっているじゃないか、幸太郎。


そんな連中には、少し餌をぶらさげてやるだけで、


安易に飛びついてくる。


無償で力を得ることに対して、


不安も疑念のかけらもない。


断る勇気も無い。『取引』ではなく、一方的に


『ほどこし』を受けることを恥とも思わん。


他者を見下したいという欲望のいいなりだ。


その結果がアレだ。


確かに人間を超越した力を得たわけだが、


愚かの極みだな。クックック」





ネグリスナガンは楽しそうに笑った。



だが、幸太郎たちは、その様子にも恐怖しか感じない。





「・・・確かに、あなたの言うことには共感できる


部分がありますね。オーガスさんのオモチャも


人生が滅茶苦茶になっていきました。


オーガスさん自身は能力を与えること以外、


何もしてないのに」





幸太郎はさりげなく『オーガス』の名前を出してみた。



ネグリスナガンの反応を見たかったのだ。





「ルキエスフェル様も変わったお方よ。


別にあれで何か得るものがあるわけでなし、


デーモンを作って


配下を増やそうというわけでもなし・・・。


私ごときの理解の及ぶ方ではないな」





幸太郎はネグリスナガンからの情報に少し安堵した。





間違いなくネグリスナガンはロストラエルの部下だ。



ロストラエルのために動いている。



だが、ロストラエルの右腕が



植物に分解されてしまった事件の



原因の1つが幸太郎なのに、敵意は向けてこない。



無論、ロストラエルの作ったカース・ファントムを



地獄送りにし、誘いを蹴った以上、



好ましくは思われていないだろう。



いや、敵対している事実は何も変わらない。





(問答無用で殺しにこないのは、実にありがたい。


正直、全く勝ち目は無さそうだからな・・・。


こいつは今『デーモン』の魂の回収を優先してるんだ。


たぶん・・・『デーモン』の魂を食えば、


失った『魂の右腕』の修復に役立つのだろうな。


そしてオーガスの名を出しても、困った様子はない。


オーガスと敵対はしていない、ということか。


敬語を使っているってことは、オーガスが格上で、


恐れているのは間違いないが・・・。


ともかく、襲ってこない以上、あまり刺激しないほうが


賢明だろう)





「ロストラエルさんの信者は、全員変身できるのでしょうか?」





幸太郎がそう言うと、ネグリスナガンは



『思い出した』という顔をした。





『デーモン』にくっついている干からびたベークホースの体。



ネグリスナガンは、その左手の中指を『ブチッ』と



もぎ取った。





よく見ると、その中指には黒い指輪がはめてある。



『鑑定』をすると、『呼び声の指輪』と表示された。



そして中指から指輪を外すと、指のほうは



『ポイ』っと捨てた。





「・・・こいつも回収しておかなくてはな。


幸太郎、お前は『冥界門』以外に、


『マジックボックス』も


持っているのだろう?


お前のようなやつに奪われて『封印』されると


少々都合が悪い。面白くない」





「それが変身できるアイテムなのですか・・・?」





幸太郎は、嘘をついた。



『鑑定』したから指輪の能力はわかっている。



この指輪に付与された『呪い』は変身などではない。



もっとえげつないものだ。



幸太郎が嘘をついたのは、『鑑定』を持っていることを



悟られたくなかったからだ。



持っている手札は知られない方がいいに決まってる。





「そうではない。この指輪は別の次元から


デーモンや、闇の落とし仔の魂を召喚し、


自分の魂と融合させるためのものだ。


自分の魂の方が強ければ、融合したデーモンや


闇の落とし仔の主人格になれる。


自分の力にできるわけだ。


指輪を装着していなくとも、近くにいれば


魂を捧げることが可能だが・・・。


ほとんどの場合は、こんなものだよ。


自分の意識が飲み込まれて終わる。


もう未来永劫、意識は元に戻ることはない・・・。


まあ、ロストラエル様の


お役に立てるかもしれないのだ、


こいつらも満足だろう。


幸太郎、お前もこの指輪を着けて、


ロストラエル様に祈ってみるか?


お前ならデーモンの主人格になれるだろう」





「大変ありがたいお言葉ですが、


辞退させていただきます。


今の慎ましい生活に満足しておりますし、


まだ食べてみたいものや、


行ってみたい場所もございますので」





「そうか、気が変わったらロストラエル様へ


祈りを捧げるがいい。


人間を超越することは楽しいぞ?」





幸太郎は苦笑して、頭を下げた。





「まあいい。私はそろそろ行こう。


用事は終わった。


もし人生に絶望した時は私を呼べ。


新しい道を教えてやろう・・・」





そう言うと、ネグリスナガンは霧のように消えていった。



来た時と同じく、まったく音がしない。








「ふううぅぅぅ~~~・・・」





幸太郎は大きく息をした。疲れたのだ。





「大丈夫ですか? ご主人様」





「ありがとう。大丈夫だよ、モコ。


さすがに、ちょっと緊張しただけさ。


疲れた。ははは」





「まさか、5人目の悪魔と遭遇するなんてね・・・」





エンリイもため息をついた。





「幸太郎さんが、丁寧な敬語が使えて良かったわー。


ネグリスナガン、だっけ?


機嫌損ねたら、死んでるトコだったわよね・・・」





エーリッタも眉を寄せ、大きく息を吐いた。





「なあ、コウタロウ、アステラ様とムラサキ様は


来てくださらなかったな」





クラリッサの言うことは幸太郎以外の全員が



思ったことだった。





「アステラ様やムラサキさんも、24時間、いつでも


こっちを見てるわけじゃないのさ。


ただ、オーガス、リーブラさん、


ロストラエルの3人だけは


『どうにもならない』相手だから、


何かアラームみたいなものが


特別に仕掛けてあるんだと思うよ。


確かに、今のネグリスナガンも、


『手を出すな』とロストラエルから命令されてるって


言ってたし。


あの3人の悪魔だけ抑え込めば、


配下の悪魔たちは


『直接は』手出ししてこなくなるって


ことなんだろう」





「でも、さすがに寿命が縮むわよ。


見ただけでわかる。『こりゃ無理ー!』ってね。


あの寒気のする目を見てるだけで、


頭がおかしくなりそうだったわ」





ユーライカも苦い顔をした。








ここで、全員がアーデルハイドが



いないことに気が付いた。





ただし、探すまでもない。



アーデルハイドは・・・。





ノーダルの死体をハンマーで丁寧に砕いていた。





無表情で、ノーダルの下半身を『ぼきっ』『べきっ』



『ぱきっ』『くちゃっ』と



念入りにハンマーで潰し続けている。



アーデルハイドは『大好きなお姉ちゃんを泣かせた』



報復をしているのだ。



指一本ですら、原型を留めているのが許せない。



絶対に許せないのだ。





『・・・』





全員が沈黙した。



『もうやめろ』とか『とっくに死んでるよ』とか



言い出せない雰囲気だ。





「あ、そうだ。あたしたちは使った矢を回収しなきゃ」





「俺は、『闇の落とし仔』の魂を地獄へ送っておこう」





「私は周囲を警戒しておきます」





「ボクも、周囲を見張っておくよ。


今は誰もいないけど、


見通しはいいとこだからね」





「あたいは・・・あー、矢の回収を手伝うよ。


ハイジはしばらく、そっとしておいた方がいい・・・」





全員がそれぞれ仕事にかかった。



幸太郎はエンリイのそばに『陽光』を設置。



MPを回復させる。



穴を掘ってバケモノを埋める時、



『サイコソード』と『如意棒』があると楽だから。








幸太郎たちは・・・少し時間をかけすぎである・・・。



ネグリスナガンが帰ったことで、



気が緩んでいたのだ。






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