Wecon
ーこれはパイロットのミスだなー
そう呟きながら、一人の兵士…レイランは伏せていた体を起き上がらせた。
凄まじい衝撃によって軽い脳震盪を起こしていたレイランは濃い土煙の中、おぼつかない体を傍らにあった木の幹で支え、無線を繋いだ。
「…ファイアイーグル4、目標は…吹っ飛んだぞ。…危うく俺も吹っ飛ぶとこだったがな」
[すまない、レイラン。また必要があれば連絡してくれ、今度はしっかり命中させてやる]
「…ったく、毎回命中…させてくれよ、ベテランなんだろ?」
レイランはそう愚痴を零しながら乱れた装備と呼吸を整える。
意識も大分しっかりしてきた頃、衝撃によって破壊された日干しレンガの建物の向こう側から、名前を呼ぶ声が聞こえた。
「おーいレイラーン、いたら出てこーい」
レイランは立ち上がり、建物の壁を飛び越える。
すると少し崖を下った先に同じ装備をした兵士が3人見えた。
「こっちだこっち、早く来い」
3人は声の主がレイランだとわかると、駆け足で崖を登ってきた。
レイランと3人は合流し、衝撃を免れ原形を留めていた建物に入る。
「レイラン、大丈夫だったか?予想より爆撃が大きくなかったか?」
無精ひげを生やした兵士が心配する。
「ああ、パイパー。辛うじてな。俺が少し近づき過ぎたのかもな。それよりお前はあの後どうしたんだ?」
レイランがパイパーに問う。
「俺とドレイクは、アドミックと偶然出くわしたんだ。ここへ来る途中にな。レイランがここで敵拠点を先に爆撃しておくって、アドミックから聞いたから、急いでここに来たんだ」
「哨戒班がいくつかあって、少し手こずったけどな」
ドレイクがそう付け加えた。
「まあ、全員生きてて良かった。まだ任務は終わって
無いからな、1人でも欠けたらそこで終わりだ」
「これからどうするんだレイラン?見たところ敵拠点があった所もそこそこ広かっただろう?爆撃で更地になったし、回収地点として十分じゃないか?」
アドミックが提案する。
「それは俺も思ったがダメだ。ここは丘で、周りからチヌークが丸見えだ。これじゃRPGのいい的にされちまう。作戦通り崖の中腹あたりにしよう」
「了解」
3人はうなづいた。
「よし、気を引き締めて行けよ」
レイランはそう言って扉を開いた。土煙も収まり、澄んだ青空が見えた。
山脈の天候はコロコロ変わる。昨日は雪が降っていたようで地面が滑りやすくなっていた。4人は足元に注意しながら崖を下って行く。
ふと、先導していたレイランが足を止めた。
「屈め、屈め、話し声が聞こえた。音を立てるな」
4人は静かに、声のあった方へと近づいた。
そこは開けた場所にあったキャンプで、数人が銃を構えて周りを警戒しているのが見えた。
「さっきの爆撃であいつらもビビってんだろう、片付けちまおう」
バイパーがそう言って、4人は奇襲出来る位置についた。
「敵は…4人だな、1人ずつ仕留めよう」
アドミックがそう言い、指でカウントを始める。
3…2…1…
同時に4つの発砲音が鳴り響き、敵の頭に穴を開けた。倒れ伏した敵はピクリとも動かない。
「クリア」
レイランが確認すると、4人はキャンプへと歩を進めた。
「随分溜め込んでやがるぜ、吹き飛ばしたら気持ちいいだろうな」
アドミックが、敵の弾薬倉庫に手を当てて呟いた。
「そうだな、C4でも設置しておこう。花火が拝めるぞ」
レイランがそう笑いながら答えた時、無線に連絡が入った。
[レイラン、こちらブラッティ。通信障害が起きて、しばらくの間連絡が取れなかった]
「ああ、だろうなとは思ったよ。オペレーターは仕事が出来なくてイライラしてただろう、気の毒だな」
レイランが微笑する。
[まあ、そうだな。それはともかく、そちらに回収用チヌークヘリが向かっている。グレイ4だ。レイラン達は回収ポイントを探し出しヘリに連絡しておけ]
「了解」
レイランはそう言い無線を切った。
その頃、倒れた兵士の装備を確認していたバイパーが辺りを見回し言った。
「ここで良いんじゃないか?ちょうど開けているし、回収ポイントとしてもってこいだろう」
崖からしばらく降りていったここは、高すぎず低すぎず、ちょうどいい場所であった。
ここであれば無事に帰還できるだろう、レイランもそう考えた。
「そうだな、そうしよう。グレイ4、こちらチームマッドオプス、レイランだ。ちょうどいい場所を見つけた。こちらに来てくれ」
[マッドオプス了解。急行する]
そうして数分後、ヘリが到着した。4人は急いで乗り込んでヘリは離陸し、駐屯地へ向かう。
アドミックとレイランは、窓から眼下に広がる山脈を見下ろした。
「もうすぐだ」「ああ、そうだな」
短い会話を交わした瞬間、回収ポイントだった敵のキャンプは光に包まれ、爆発した。
火薬に引火して四方八方に飛ぶ銃弾は、まるで花火のようであった。
「インスタントコーヒーがある、飲むか?」
ヘリの乗務員がバイパーに聞いた。
「ああ、頂こう。喉が渇いていた頃だ」
日も傾き始めた夕方の光陽が窓から差し込み、兵士たちを赤く照らしていた。
登場した兵器
C4爆薬…粘土状のプラスチック爆弾。暴発することが少なく、耐久性、信頼性、化学的安全性が高い。
RPG…携帯対戦車擲弾発射器。安価、簡便で効果的と、開発後各地の紛争で使用されている。
CH-47チヌーク…大型輸送用ヘリコプターで、開発から半世紀の今も、各国の軍で現役で使用されている。




