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第34話 石炭紀はオシャレな森カフェ!? 極上スイーツ芋虫で女子会♡

 登り、きった。

 死の汽水域を抜け、私たちはついに絶壁の上の新エリアへと足を踏み入れた。


 えっ、やば。なにここ、空気めっちゃおいしいんですけど!?


 私――ユーリプテルス形態(体長四十八センチ)の全身を、未曾有のマイナスイオン(高濃度酸素)が包み込んだ。

 ここ、絶壁の上はまるで石炭紀(せきたんき)。大気中の酸素濃度が約三十五パーセントという、現代の地球のほぼ二倍に達する狂気の高酸素エリアだ。

 控えめに言って、クーラーがガンガンに効いた、最高におしゃれな森の中の隠れ家カフェに入店した時みたいな爽快感!


 一気に酸素を取り込んだ私の脳内シナプスが、限界までクリアに冴え渡る。

 酸素のデバフ(活性酸素毒性)? そんなの体内の抗酸化物質(ビタミンC過給)で秒でデバッグ(中和)よ!

 はぁ〜……お肌(キチン質)の調子、一瞬で爆上がりしたわ。控えめに言って最高。


『きゅいきゅーっ!☆』


 隣では、四十センチに成長したピカちゃんが、新しく獲得した「プロト肺」で深呼吸している。

 私たち、泥まみれのドブ沼生活から、一気に超絶おしゃれなオーガニック空間にランクアップしちゃったんじゃない!?


 見上げれば、そこはパステルグリーンの巨大シダやリンボク(レピドデンドロン)が日差しを優しく遮る、最高のテラス席。フカフカの腐葉土の絨毯は、高級ソファ並みの座り心地だ。


 よしピカちゃん!

 地獄のサバイバルもおうちの崩落も全部乗り越えたご褒美に、今日はこのおしゃれカフェ(森)で、二人きりの『スイーツ女子会』しちゃおっか♡

 ……あれ? ピカちゃんって女の子? 男の子?

 まいっか!


『きゅ、きゅいーっ!☆』


 ピカちゃんが、かわいいおててで私の前脚をぎゅっと握りしめてきた。

 四十センチの等身大バディと手を繋いでのカフェ巡り。まーじで尊みが深い。


 カサカサ、と緑のテラス席を這い進むと、巨大なシダの葉の裏に「本日の限定スイーツ」を発見した。

 体長三十センチ。丸々と太ったパステルピンクのイモムシ。石炭紀ならではの、プロトファスマ(原始的な昆虫)の幼虫系モンスターだ。


 あ、見てピカちゃん!

 めっちゃ『映え』なピンクのお団子(イモムシ)があるよ!


『きゅ、きゅい……?』


 ふふん。あれはね……この高酸素ジャングル限定の『新作オーガニックスイーツ』だよっ♡


 私は右のハサミ(鋏角)を伸ばし、ピンクのイモムシを『プチッ』と優しくホールド。

 半分にカットすると、中からエメラルドグリーンに輝く、とろりとした透明なクリーム(肉汁)が溢れ出した。色合いのコントラストが最高にフォトジェニック! スマホ(ないけど)で連写したいレベル!


 まずは私から。いただきまーす♡


 ハグッ。


 ッッ!?!?!?!?

 あ、甘ァァァァァァァイッッ!!!


 なにこれ!? 表参道の行列ができるパティスリーの新作!?

 私の消化酵素(アミラーゼ)と、イモムシが蓄えた高純度のグリコーゲンとデンプンが口の中で奇跡のケミストリーを起こし、【最高級の濃厚カスタードクリーム】みたいな極上の甘みがジュワァァァァッと大爆発!!

 今まで私が泣きながら食ってきた「強烈な硫黄味」や「泥味」のマズ飯はなんだったの!? この極上スイーツへの壮大なフリ!?


 やばい、おいしい……っ、疲れが一瞬で吹き飛ぶぅぅっ!


『きゅ、きゅわぁぁっ!?』


 ピカちゃんも早く! あーんして☆ はい、あーん♡


 切り分けたスイーツ(イモムシ)を差し出す。

 ピカちゃんは、おててでそれをお上品に受け取り、自慢のコッコステウス兜の奥にあるアゴで――。


 カチリ。モグモグ、ゴリゴリ。


『( ‐ ▼ ‐ )きゅ、きゅいぃぃぃーーーーっっ!!!☆』


 おマヌケ正面顔、キラッキラ。

 フカフカのシダのソファの上で、嬉しすぎて尾ビレをフリフリ。半透明の身体の中央を走る脊索が、イルミネーションみたいに青白くパチパチ明滅している。


 ……あ、ダメ。

 美味しいスイーツ食べて幸せそうにしてる相棒、可愛すぎて致死量。私の全セグメント甲殻が、尊みで内側から爆発しそう。


 あー、最高。そうだピカちゃん! スイーツの後はやっぱり、おしゃれな『ドリンク』だよね!


 私はハサミを器用に動かし、巨大シダの硬い葉の根元を切り抜いて、即席の『オーガニック・リーフカップ』を二つクラフト。そこに、木の幹からポタポタと滴る、メープルシロップみたいに甘く発酵した糖蜜をたっぷりと注ぎ込む。

 石炭紀の森が贈る、天然のキャラメルマキアート(樹液)。


 はい、新しいコップで。これからの二人に、かんぱーい☆


『きゅいきゅーっ!☆』


 カポッ。葉っぱのコップが、優しく鳴る。

 甘酸っぱい糖蜜ジュースを啜りながら、お互いの手の温もりを繋ぐ。青いネオンに照らされた巨木の影で過ごす、至高のカフェタイム。


 これまでの苦しかった窒息死の地獄も、重力の絶望も。

 全部、全部、この甘くて尊い「女子会」を楽しむための、最高のスパイスだったんだ。


 ピカちゃん。これからも、ずーっと一緒に美味しいもの食べようね♡


『きゅ、きゅいーっ!☆』


 絶壁での死闘を忘れさせるほどの至福の糖分で心を満たし、私たちはしっかりとパス(絆)を繋いだまま、濃厚なマイナスイオンと緑の匂いが立ち込める「巨大シダの腐海」のさらなる奥地(次のカフェ)へと、幸せそうに這い進んでいくのだった。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


絶望の1G重力と過酷な崖登りを乗り越え、ついに新エリア「巨大シダの腐海」へと到達しました!


「無事に上陸できて本当によかった!」「芋虫カスタード、ちょっと美味しそうかも…?」「二人のイチャイチャが尊い!」と思っていただけた方は、

ぜひページ下部の【ブックマークに追加】や、評価の星【☆☆☆☆☆】をポチッと押して、頑張った二人への『ご褒美スイーツ』を分けていただけますと幸いです。


皆様からの応援が、作者のモチベーションを限界突破させる最強のエネルギーになります!


ここから始まる未知の高酸素ジャングルでのサバイバルも、引き続きよろしくお願いいたします☆

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