第14話 スライム完食で一気に15センチ!最強マルチ装甲JK、爆誕ですっ☆
ガチで、ガチで溶けるっ!!
骨はないけど身も殻も残らずドロドロに溶かされるやつじゃんこれ!!
前後左右、上下。
視界のすべてが、あらゆる有機物を溶かし尽くすpH1以下の極限強酸。
オパビニアの自慢のキチン質装甲に強酸が容赦なく襲いかかり、全身からジュワジュワと激しい白煙が立ち上る。
皮膚の表面に生えた化学センサーが、これまでになく狂ったような危険信号を脳内に連打し始めた!
『警告:外部pH1.2。キチン質外骨格の損耗率急増。融解まで残り40秒』
強酸の粘液が私の複眼を焼き、息が詰まる。
スライムは私を体内で完全に包み込み、確実に消化しようと締め付けてくる。
スライムからすれば、外から攻撃されるなら中へ引き込んで胃袋で消化してしまえばいいという、これ以上ないほど合理的で冷酷なカウンター。
もがけばもがくほどゲルが体に絡みつき、キチン質の殻がジュワジュワと薄くなっていくのがリアルに伝わってくる。
『融解まで残り30秒』
背中にしがみついているピカちゃんを守るために、私は十対のヒレをさらに固く縮めて彼女を包み込んだ。
「きゅ、きゅぅぅ……っ」 怯えるように震えるピカちゃんの柔らかい皮膚。
私のキチン質の殻が溶ければ、脊索動物の奇跡である彼女のぷにぷにの肉体なんて、一瞬で消えてなくなってしまう。
ふざけんな。
私の大好きな脊索の美少女(予定)を、こんなドロドロの栄養にされてたまるかっての!
『融解まで残り20秒』
意識が遠のきそうになる。
だけど、私の中の生物オタクの魂が、冷徹にこの絶望的ピンチをハックし始める。
焦るな、私……。
胃液という、これと同じ極限強酸の中で、ケロッと生きている地球の微生物がいただろう?
胃潰瘍や胃癌の原因にもなる、あの悪名高き、でも生存戦略としては超一流の極限バクテリア……!
『融解まで残り10秒』
あれだよ! あれあれっ!
ウレアーゼ活性DNA、強制ハッキング――水平伝播!!
私は、泥を啜っていたレベリング期に、極限環境バクテリアから獲得していた設計図を脳内で呼び出し、全身の細胞を狂ったように書き換えた。
アンモニアの分泌だ。
『融解まで残り5秒、4、3……』
体内の尿素を急速分解! 強アルカリ性物質、大放出ォォ!!
胃酸という極限強酸の中でケロッと生きる、あの『ピロリ菌』と同じ原理!
私は全身の皮膚の隙間から、強アルカリ性物質である『アンモニア』を、ドバドバとスプレーのように周囲へ噴射した。
酸性のスライム体内で、私の体表から放たれたアルカリ性のアンモニアが、激しい化学中和反応を起こし始める。
ジュワジュワという凝固音と共に、私の周囲の強酸が瞬時に中和され、無害な中性の液体へと変わっていく。
――ふぅ! アンモニアまじ臭っ!
乙女の体表から放っていい匂いじゃないんだけど!
でもこれで、アンモニア中和バリアの完成だよっ♡
中和された透明な気泡のバリアに包まれ、私は溶けるのを完全に防ぐことに成功した。
完全に形勢逆転だ。
スライムは、自らの体内にある溶かせない異物で、完全にパニックに陥って粘体を激しく波打たせている。
さて、散々私を追い回してくれた因縁の青スムージー、あなたも私の進化のダシになってもらうからね!
バリアの中で安全を確保した私は、魔石に突き刺さったままのノズルを再びガチッと固定し、口元へ持ってくると吸引を再開した。
「じゅるるるるるっ!!!」
今度は抵抗する余力もない。
内側からアルカリで中和され、さらに魔石からダイレクトにエネルギーを吸い尽くされるアシッドスライム。
もはやゲルを維持する保水力すら失っていく。
見る見るうちに青い粘体は色を失い、最後はただの、なんの魔力も害もない「無害な水」へと崩壊し、地底湖の底へと洗い流されるように消滅した。
水たまりの底に、ぽつんと私とピカちゃんだけが残される。
捕食、完了。
その瞬間、私の頭の中に、意図した通りの膨大な魔力因子と機能特化されたDNAの奔流が流れ込んできた。
『獲得DNA:アシッドスライムの「衝撃吸収ゲル(物理耐性)」、「強酸分泌」を完全インストール』
『進化臨界エネルギー、最大値を突破。脱皮プロセス開始!』
き、きた……! エネルギー過多で、身体がはち切れそう……っ!
オパビニアの5センチの身体が内側からビキビキと悲鳴を上げ、まばゆい魔力の光が地底の暗闇を白く染め上げた。
古いキチン質の殻が粉々に砕け散り、私の肉体は、光の中で急激に質量を膨らませていく。
5センチ。
10センチ。
そして、一気に、体長【15センチ】へと急成長を遂げる。
光が収まったとき、私の身体を覆っていたのは、これまでのような単一のペラペラな殻ではなかった。
美しく、規則正しく並んだ幾何学的なセグメント装甲。
あらゆる物理衝撃を滑らせていなす、究極のキチン質マルチシールド。
やった……。やったよダーウィン先生……!
それは、カンブリア紀を代表する絶対的アイドルにして、最も完成されたキチン質外骨格構造を持つスター古生物。
【エルラシア(三葉虫)形態】
「きゅいきゅーっ!」
背後からパタパタと泳いできたパステルブルーのピカちゃんが、私の新しく、そして硬くて頼もしい三葉虫の背中に、うっとりとした表情でピトッと抱きついてきた。
そのフニフニとした柔らかい脊索の感触と、パスを通じて伝わってくる「大好き尊い……! 一生ついていきます!」。
私は思わず「えへへ、可愛いから何でも許す!」とデレデレになってしまう。
宿敵スライムを美味しくスムージーにして、最強のマルチ装甲と、最高の相棒ピカちゃんを手に入れた私。
這行する私の複眼の先には、いよいよ中層の入り口である「汽水域の泥地」へと繋がる、巨大な岩のスリットがぽっかりと口を開けていた。
待っててね、上の世界。
最強の三葉虫JKが、今度はそのマルチ装甲で、あらゆるファンタジーの常識をバッキバキに粉砕しに行ってあげるからねっ☆




