表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/23

第11話 人類の大先輩発見!? 尊すぎて細胞レベルでキュンです!

  ふぅ……。

 

 5つのおめめでの3D立体視、まじで視野角広すぎて世界が4K画質なんですけど!


 私は地底湖の底を這いずりながら、新しく手に入れた『オパビニア形態』のスペックに一人で大はしゃぎしていた。


 体長はこれまでの限界を突破して、堂々の【5センチ】。


  頭部の両脇、精度よく飛び出した、全部で5つのウルウルした複眼。


  この5つの眼が捉える光の視差情報を、私の脳内がリアルタイムでレンダリング空間計算しているのだ。


 おかげで前方も、側方も、さらには頭上まで、死角という死角が完全に消滅している。


 4Kどころか、最新のVRゴーグルを装着して360度パノラマ映像を脳内に直接ストリーミングしているような感覚だ。


 ヒドラ店長をバラバラにして『無限おかわり養殖ビュッフェ』した甲斐があったよ、まじで。


 あの不老不死の全能性幹細胞リジェネDNA、めちゃくちゃ美味しかったなぁ……。


 大腕をカチカチと鳴らしながら、私は十対の鰭状のひれあしを器用にくねらせて泥の上を進む。


 現在の目的地は、このミクロの地底湖と、その上にある中層を繋ぐ境界線——。


 通称『汽水スリット』。


 有毒な硫化水素とメタンガスがボコボコと湧き出る玄武岩の割れ目だ。


 もちろん、ここを探索する理由はただ一つ。


 この先にいるであろう、あの宿敵『アシッドスライム』を見つけ出し、今度こそ完璧なお食事リベンジマッチを挑むためである。


 私をドロドロに溶かそうとしたあの強酸の匂いを、私の高精度化学センサーが常に警戒している。


 あの時は逃げることしかできなかったけど、今の私は違うからね!

 

 待ってなさいよ、でっかい青スムージー。


 内側からストローで極上の魔力ゲルごと、ジュルジュルに吸い干してあげるんだからっ♡


 そんな物騒な犯行予告を脳内で垂れ流しながら、泥にまみれた玄武岩のクラックをスキャンしていた、その時。


 パチパチッ……。


 ん……? なに、今の感触。


 私の魔力感知網が、汽水スリットの最も狭い、光すら届かない玄武岩のクラックの奥から、かすかに震える『魔力スタティック』を捉えた。


 それは、他の魔物が放つようなギスギスした殺意に満ちた魔力ではない。


 まるで、生まれたての赤ん坊の鼓動のように、小さくて、か細くて、今にも消えてしまいそうな魔力の揺らぎ。


 おめめレンズ、屈折率の空間計算、ズームイン!


 私は5つの複眼をクラックの入り口に集中させ、光のわずかな反射を計算して、その最奥部をピンポイントで超高解像度ズームスキャンした。


 そして、そこに映し端に映った『生命』の姿を見た瞬間。


 私の中の理系JKとしての全ニューロンが、物理的にショートした。


 い、いや、ちょっと待って……う、嘘でしょ!?!?!?


 クラックの奥。


 有毒な泥が堆積する玄武岩の冷たい隙間で、必死に身を縮めて震えている『それ』は。


 体長、わずか数ミリ。


 パステルブルーの、透き通るようなフニフニとした流線型の身体。


 背中に一本だけ、淡く、青く輝く神経の糸——【脊索(脊椎の起源)】を、はっきりと宿していたのだ。


 頭部から生えた一対の小さな触手をパタパタと弱々しく羽ばたかせながら。


 「きゅ、きゅー……きゅー……」


 と、消え入りそうな細い、かすかな思念を漏らし、まあるく、まあるくフニフニの身体を縮めて、冷たい外気にガタガタと震えている。


 ピ、ピ、ピカイアじゃんッッッ!!!!


 私の脳内で、ダーウィン先生の肖像画がパァァァッと後光を背負って舞い降りた。


 脊索動物門!!!


 すべての背骨を持つ生き物……つまり、カエルも、魚も、鳥も、犬も、そして私たち人間を含むすべての『脊椎動物』の、大・大・大・大祖先様じゃん!!!


 5億年前の奇跡のオリジンが、なんでこんな地獄のダンジョン最下層にぽつんといるのぉぉぉ!?


 信じられない。


 目の前にいるのは、教科書の一番最初のページに載っている、生命進化の歴史における最大のミステリーにして、絶対的アイドル『ピカイア』。


 その、生まれたばかりの子供だったのだ。


 うわあああ、なにこの透き通るブルーのぷにぷに感……!


 キチン質の硬い殻をまとっている私と違って、1ミリも硬い場所がないの!


 尊すぎて細胞レベルでキュン死するッ! 抱きしめたい!


 いや、ちょっと美味しそうだから吸いたい!


 違う違う、保護キープだよ、完全保護!


 乙女の倫理観、しっかりして!


 私がこの子を、絶対安全な三食昼寝付きのロイヤルファミリーの一員として育ててあげるんだからっ!


 悶絶し、大腕をぶんぶんと振り回しながら、私はクラックの奥に向かって優しく、極限まで気配を殺して這い寄っていく。


 ——しかし。


 この運命の出会いを祝福するかのように、汽水スリットの泥底が、じわりと不気味な青い燐光で染まり始めた。


 それは、私にとって、あまりにも嗅ぎ慣れた、すべてを溶かし尽くす「強酸」の匂い。


 泥の奥から、ネバネバとした不気味な質量を蠢かせながら、あの宿敵アシッドスライムが、ちびピカイアちゃんを捕食せんと這い出てくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ