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部活動勧誘会に参加させられる

 本日の部活動勧誘が終われば通常授業が始まる。今までのオリエンテーション続きの生活が終わると知って生徒たちは若干気分が下がっているが、部活動の活動を知ることの方が楽しみなのか憂鬱(ゆううつ)な雰囲気はまったく感じない。

 生徒たちを体育館に移動させて整列させると、俺達教員は体育館の後方に横一列でずらっと並ぶ。部活動の顧問の先生は数人いないが、俺は教師になりたてという事もあって顧問に任命されることはなく、部活を新たに設立するときに生徒の助けになってくれと言われている。

 もっとも、部活を新たに申請するような生徒は今の所見受けられないので、俺は今年も部活動の顧問をすることはないのだろう。

 ……一応、お手伝いさんのような形で様々な部活動に顔を出してはいる。それと若さを頼られてかは知らないが運動部にしょっちゅう誘われるのだ。体育の授業ができるようにと体づくりはしていたが、やはり生徒には劣ってしまうのが現実だった。プライドが揺らいでしまったのは気にしない方向にしている。


「そろそろ始まりますね。冴島(さえじま)先生は部活の顧問をするとなったらどこが良いですか?」


 隣に立っている浅羽先生が語り掛けてくる。彼は高校時代にバンドを経験していたこともあり、軽音楽部の顧問をしており今でもたまにギターを弾いている。

 去年の文化祭でも教員でバンドをしていたので印象が強い。ちなみに俺はピアノを弾けるので、なんとかキーボードを弾けるようになり担当した。


「そうですね……でもやっぱり、運動部の顧問は大変そうですよね」


「高校生なんて一番体力のある時期ですからね。ついていくので精いっぱいだと思いますよ、それに最近の夏は暑いですし」


「となると文化部……って考えちゃいますけど、文化部も文化部で大変そうで」


 俺は決して運動部の方が文化部よりも圧倒的に大変、だなんて考えたりはしない。それぞれがそれぞれのするべきことにまっすぐ挑戦するのが部活動であり、そこに優劣など存在しないからだ。

 部活動の顧問は経験者かそうでないかで変わるところは大きい。ただ名前を置くだけの顧問だって存在する。しかし俺は顧問になるのなら部員一人一人に寄り添えるような顧問になりたいのだ。……顧問じゃないけど。

 来年度はどこかの顧問を任命されるだろうか、と若干の期待を胸に秘めていると部活動勧誘会の準備をしているはずの二年生がこちらに走ってきていた。


「冴島先生!ちょっと助けてください!放送用の機械が不具合で……」


「分かった、今行く」


 彼は放送部員で、去年俺が放送部の顧問の先生に連れられて部室に行ったときに知り合った。なお、その時に放送用の機械をいくつか手直しして色々解説もしたのでこうして頼られることが増えたわけだ。

 放送部の悩みを解決し、浅羽先生の元に戻ると、今度は三年生が俺の元に現れる。


「ちょ!さえちゃん、ピアノ弾く予定の子が今日欠席でさ!代わりに弾けない?」


 今度は合唱部の女子。文化祭で俺のキーボードを凄く褒めてくれて、その後の合唱部のピアノの演奏として何度か参加させてもらった。合唱部の子たちともそこで仲良くなることができた。


「え、あれって冴島先生?」


「合唱部の顧問じゃないよね?ってかピアノ弾けたんだ」


「っていうか上手くない?メロいんですけど」


 俺が合唱部の出し物に出たことにより、一年生の間は混乱に包まれてしまった。あとで説明する機会を得られればいいが……。

 演奏を終えて盛大な拍手に迎えられた後、戻っている最中に今度は演劇部の部員たちに引っ張られた。どうやらお題を箱の中から引いて即興劇をやるらしく、出てほしいとの事。それこそ顧問に頼んでほしかったが、演劇部の顧問は定年間近のおじいちゃん先生なので仕方ない事なのだろう。


「顧問の先生に変わり~なんと冴島先生が参加してくれま~す‼」


「フ~!」


「頑張って~!」


 演劇部の子たちが盛り上げると、観客の一年経ちも大きく盛り上がる。期待値が上がっていくことに恐怖しながらも、俺はなんとか即興劇をやり遂げた。

 その後も様々な部活の応援、問題の解決に呼ばれのんびり見れたのは運動部の一部と将棋部と茶道部くらいだ。


「なんか、冴島先生ってすべての部活の顧問感ありますね……」


「はは、頼られてるなら嬉しい限りですよ」


 体育館後方に戻ってきた俺は浅羽先生にねぎらいの言葉と共にそう言われ、本当に顧問のように見えているのならこれほど嬉しい事はないと感じながら言葉を返した。

 部活動勧誘会の最後のトリは浅羽先生は自分が顧問をしている軽音楽部の出し物だ。部員と仲が良いのか、一人一人の動きをしっかり見ていて「いい先生だな」と小さく呟く。

 そんな小さな呟きは軽音楽部のライブの音圧に潰されてかき消される。ライブの雰囲気に圧倒され、盛り上がりがどんどん増していく。

 なんだか懐かしい気持ちになりながら、俺達教員もノリに乗っていた。ライブも一曲だけでなく、他の部活よりもかなり持ち時間が長い事もあり二曲目を演奏し始める。

 ライブも終わり、部活動勧誘会が完全に終わった。この後から仮入部期間が始まるが、この調子なら今年も軽音楽部に加入する生徒が多いのではなかろうか。

 教室に戻ってきてHRを終わらせると、少人数のグループで仮入部に向かう生徒たちが多く見受けられる。他クラスの友達と合流する生徒も、個人で仮入部に向かう生徒もいた。

 みんながどんな部活に加入するか聞くのを楽しみにしながら明日からの授業の準備をしようと職員室に向かおうと教室の扉に手をかけて開けた瞬間、目の前に神木と上条、背後には(みお)がいた。


「先生、話があるんだけど」


 ピンク色のボブカットが特徴的な小柄な少女である上条すみれがフランクに口を開く。神木と一緒に来たわけではないらしいが、言いたいことは同じらしい。


「多分、後ろの桜庭(さくらば)さんも同じことが言いたいと思うんだけど……私が作る部活の顧問になってくれない?」


「……え?」


 こくりと頷く神木と桜庭を見てすみれと同様の事を言いたかったのだと思い知らされ、う~んと唸る。力になってやりたいのはやまやまだが、簡単に答えを出せることはできないのだ。


「分かった、が……部活を新しく作るためには部員が五人必要だから……あと二人いるな」


「それなら、私にあてがあるから明日までに話通しといてね」


「あぁ……まぁ良いけど」


 俺が返事をすることで、すみれたちは去っていった。恐らく残り二人の部員を勧誘しにいったのだろう。まぁ上手くいくことを願っておこう。

 神木が自信満々に言うものだから気おされてしまったが、部活動の名前だけは聞いておいてよかったかもしれない。後日聞くことを心に決めて、職員室に戻っていった。

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