兄の家に帰る
その日の夜、ウミが帰った。
次に来るのは4日後、戦争が始まってしまうのはそろそろだろう。
「彼奴は?」
「帰った」
「じゃあ、一緒に遊んでよ、お姉ちゃん」
「良いよ」
「ホント!!」
嬉しそうな顔をする、昨日会った少年。
少年は陽菜の弟で名前は結陽11歳、此処ではユウで陽菜と同じ青だ。
紺藍の髪色と、陽菜と一緒の朱色の瞳。
「何しようか」
「トランプしよ、スピード」
それにニコリと微笑む。
「良いよ。どっちの部屋でやるの?」
「俺の部屋。頑張って片付けたんだよ」
「あははは〜、チェックしてあげるよ」
少しやらかしたという顔をしながら、階段を上がっていった。
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ハルから貰ったイヤリングを使って、日本らしい所に帰って来た。
本当の日本かはまだ分からない。
今海月がいる所は全部、コンクリートか鉄で出来ている部屋だからだ。
扉が開く音がした。天井からだ。
「お前がウミか」
「そうです」
少しして、簡易ハシゴが垂らされて来た。
何も言って来ないし、降りても来ない。
登れという事なのだろうか。
揺れる簡易ハシゴを登る。
ギシギシというハシゴは少し、海月は怖かった。
登り終わると、少し安堵した。
海月のいた部屋から此処までの距離はおそよ5メートル程で以外に高さがあった。
最後らへんで落ちると、運が悪ければ痛い思いをする高さだ。
「ついてこい。お前の住んでる街まで送ってやる。建物の中では靴は脱いで歩け。」
そう言った、濃藍の髪とセピアの瞳と185cm程の身長を持つ男性の声は少し低かった。
その男性に、何も言わずに何も聞かずに従った。
この家らしい物は、ほとんどが木で出来ていそうだ。床も壁も多分木だろう。
ログハウスか何かだろうか。
玄関で男性が靴を履いた。其処で海月も靴を下に置き、履いた。
扉の向こうの外には、自然と海があった。
少し斜めになっている土を踏みながら前に進む。
降りた先には、小型船があった。
海月には知識はないが見た目具合で行くならば、乗れそうなのはせいぜい4,5人程度。
その小型船に2人で乗った。
15分ぐらい掛けて陸に着いた。
小型船を降りて、男性が誰かと話している。
5分程話し終わった後に行くぞと声をかけられて、もう歩いている男性の後を慌てて追った。
車に乗った。
途中2回休憩(道の駅)をして、3時間程揺られていたら車が止まった。
窓から見ると、どうやらコンビニの駐車場に止まったらしい。
「お前の家から近い街だ。此処からは分かるだろ。ほら、さっさと降りろ。」
言われるがまま、助手席から降りた。
「ほら、お前の持ち物。
それと俺の連絡先だ。じゃあな」
扉を閉められて、車は走って行った。
其処から、スマホのナビを頼りに30分程歩き兄の住んでるマンションの前まで行けた。
どうやらスマホは充電されていたようで、拉致された時よりも30%程多く85%になっていた。
そして荷物にも、拐われた時に持っていた持ち物全てが入っていた。処分はされていなかったようだ。
エントランスを鍵で開けて、エレベーターに乗った。
8階に止まるボタンと、ドアが閉まるボタンを順番に押した。
『ドアが開きます』とその通りにドアは開き、エレベーターの外に出た。
その頃には、夕陽が見えた。
幻想的だった。今日や昨日見た方が凄く幻想的だったのに、こっちの方が綺麗に見えた。
見慣れた上から見る景色に、夕日の光と夜の暗さが混じりあって凄く凄く綺麗だった。
飽き性な海月でもずっと、見ていられそうなくらい。
804の部屋の鍵穴に、鍵を差した。
鍵を回して、カチャと音が鳴った。元に戻して、抜く。それをもう1回やって、扉を開けた。
ガチャ
中は真っ暗ではなかった。
いや、ほとんどが真っ暗だったが、夕日の光が照らしているのだ。部屋の中と一緒に海月も照らされている。
それは少し眩しくて鬱陶しい、だがそれ以上に美しい物。
海月が自分よりも価値がありそうな、自分よりも美しく綺麗で儚そうな物と思える程に。
それをもう一度だけ見て、顔を背けてしまった。反射的に、それを見たくないと思った。
鼻の奥がツンとした。
いつも通りに、それを止めた。
扉を閉めて、鍵を閉めた。
部屋の中は、暗かった。真っ暗だ。
海月に似合う暗闇だ。
シャワーを浴びて、着替えて、髪を乾かして、歯磨きをした。
自分の部屋に戻り、夏休みの宿題をしていた時、解錠の音と扉が開く音が聞こえて来た。
兄の蒼空が帰って来たのだ。
それから少しして、コンコンと海月と呼ぶ声がした。
玄関に靴があったから、帰ってきているのが分かったのだろう。
扉を開けて、おかえりなさいと言った。
「あぁ、ただいま。
友達の家、楽しかったか」
「うん、凄く楽しかったよ」
少し口角を上げて、照れくさそうな顔をしながら言った。
スイレン島実験の実験体だったという事は、蒼空は知らない。
無論、日本じゃない国に行っていた事も知らないだろう。
「そう、用はそれだけだ。いきなり呼んで悪かった。」
蒼空は海月に背を向けて、自分の部屋に入って行った。
海月も扉を閉じて鍵を掛けた。
そのまま電気を常夜灯にし、ベッドの中で眠った。
昨日、慣れて居なかったベッドだったからか、気を抜けなかったからか、よく眠れなかったのですぐに眠りに付いてしまった。
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午後11時程、陽菜が7回勝ち、結陽は3回だった。
「もう1回、もう1回だけ、ね」
トランプを片している陽菜の腕を揺らしながら訴えてくる。ねの部分は首をこてんとして可愛いらしく頼んできた。
「もう寝る時間だよ。
という事でおやすみ〜」
「あ、ちょっ、お姉ちゃん!」
呼び止められたが部屋を出て、自分の部屋に戻った。




