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何も見ないで、考えないで―――

『ただいまの時刻、6時45分です。

戦える者は速やかに自分が配置している場所まで来てください。繰り返します。…………』


いつの間にウミは寝ていた。

もうこんな時間になっていたのだなと少し焦って、起き上がった。

大事なロケットペンダントを壊さないように…失くさないように鞄の中にしまってテントを出た。


――――――――――――――――――――――


淡々とした作業を繰り返した。

昨日最初に戦った人よりも強い人はいなく、苦戦していない。

支障はなかったが、何故か…昨日よりも動きにくかった。

昨日の疲労がまだ残っているのか、それとも―――。


思考を止めた。

そして何も考えずに…何も見ないで歩いた。

前をちゃんと向いてる訳でもなく、下ばかりしている訳でもなく、上を向いている訳でもなく……。


ただ、見ないふりをして歩いた。




「ねぇ」

服の裾を引っ張られた。


一瞬、持っていた短剣を鞘から出そうとしたが制服がウィンケレ帝国の能力者専用服だった事のですぐに引っ込めた。


「…なんですか?」


特に愛想もない顔で言う。

どうせ、あっちはこちらなど見ていない。


「人って食べられると思う?」


何を見ているのだろうと思っていたが……敵国の人の死体を見ていたようだ。

表情は見てない、どんな顔をしているのだろう。

少し、怖いが気にもなった……。

死体しか見ていない金髪の少しふくよかな男の表情が。


「………食べれると思いますけど、感染症とかになる可能性が高いので辞めといた方が良いと思います。」


「焼いても駄目かな?」


「焼いても分解されモノがあるそうですよ。

その病にかかっても薬などがないので死ぬリスクがあるらしいです。」


それじゃあ無理かとしょぼくれた顔をして、立ち上がった。


「死ぬのは流石に嫌だからね」と凄く残念そうな顔をして、トボトボと1人で歩いて行った。


――――――――――――――――――――――


「すまないが、これを第1治療テントに運んでくれないか?」


目の前には白服を着ていて両手に1個の木箱を抱えている男がいた。

少し周りを見渡す。

この近くにも人はいるが……この人はウミを見ているを

1番怪我がなさそうに見えたのかウミに頼んできた。


「分かりました……。」


男から木箱を受け取ると、ありがとうと言って先程までウミが歩いて来た方角の方へと走って行った。


(第1治療テント………何処だったっけ?)


なんとなく此方だったような…という曖昧な記憶で第1治療テントへと向かった。



治療テントがある場所についた。

治療テントは第1治療テントから第4治療テントまである。

第1治療テントは1番重症者が多いらしい。


治療テントの周りの臭いは、戦場みたいな臭いだった。

血の、臭い。

戦場の場所に寄っては此処の方が酷い。


「っ」


息が……詰まる。

此処だけでもイヤな臭いと空気がするのに中は…どうなっているのだろう。

考えたくもないが………勝手に想像をしてしまう。


「これ、貰って行きますね。

此処まで運んで下さってありがとうございます。」


騎士服でも能力者服でもない、鎧を着ているわけでもない女性に木箱を取られた。

その女性は見た目に合わずに案外重かった木箱を容易に持ちながら、第1治療テントの中に入って行った。

その姿に慣れてるのかなと見ていると、…………


「!」


少し、中が見えた。

ぐったりともう死んでいるのではないかと思う程の怪我をしている人がいた。

横たわっている下に、血がまるで水溜りのように出ていた。

遠くからでも見てる程、蛆虫が湧いていた。


――ドクンッ


心臓が跳ねた。

見えたのはほんの一瞬だったが、時間の流れが遅くなっているのではという感覚に陥っていた。


――ドクンッ


また、心臓が跳ねた。

さっきまで戦場にいて、そこで動いていたよりも早く煩い鼓動の音が聞こえてくる。

それは耳を塞いでも聞こえてくるもので…………。


――ドクンッ


また鳴った。

煩い煩いうるさい音が。


取り敢えず、此処にいるのは邪魔だしウミ自身がいたくなかったのでトボトボと歩いて離れた。

まだ脳裏にある。

死んでいるようでまだ生きている人達の姿が。



「お願いします。この通り」


第1治療テントからの帰り道、声が聞こえた。

その方向に、目だけを向かせた。

足は止めなかった。


金髪のふくよかな男が土下座をしている、深々く。


「………仕方ない。認めてやろう。」


溜息を出した後、ソウは言った。


目だけを向かせていたつもりだったが、ソウと目が合ってしまった。

特に動かす足の速さは変えず、目を逸らして歩く。

足音が此方に向かってきていた。


肩に手を置かれた。

止まって、後ろを振り向いた。


「ウミ、彼奴の子守を頼む」

「………命令ですか?」

「まぁ、そうだな」


その後、数分で説明を終わらせて土下座していた人、人の死体を食べようときていたニニナハと一緒に森に入った。

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