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ウミの支え

(どれくらい、寝たんだろ?)


ふと、そう思った。

昨日が何時に寝たのかは時計を持っていないので知らないが、確実に11時は過ぎていただろう。


(思ったより、眠たくないな………)


横をみた、相テントをしているココラスはいない。

昨日の夜もいなかったから、他のテントで見ているのか…ずっと働いているかだろう。


そんな事は、ウミにとっては関係のないことだろう。

働いていて忙しそうだったら声を掛けてみようと思いながら、テントを出た。



テントが張り巡らされている中央よりのテントの中に入った。

その中には、段ボールがある。

段ボールの中にあるペットボトルを撮った。

そして違う段ボールの中にあるゼリー飲料も。

ここは人が多いので、2つとも空けずに元のテントへと戻った。


テントに戻って、アウトドアベッドに掛ける。

とりあえず、新しいペットボトルの水を飲んだ。

喉が渇いていたので、ぬるくてもそこまで億劫ではない。

蓋を閉じて、アウトドアベッドの上に置く。


昨日とは違う味のゼリー飲料の蓋を開けて、吸った。

少しぬるいゼリー飲料を口にした途端、吐き気が襲って来た。

ゼリー飲料を持っていない手で口を覆った。


何とかゼリーを飲み込んだものの、これ以上食べれる気がしない。


ゼリー飲料の吸い口に唇を当てるが、さっきの感覚が襲って来て咄嗟に離した。


昨日浴びてきた生暖かい血を思い出させる温さだった。

目を閉じると、浮かんでくる情景。

死体が転がっていて、空気が重い。

ウミをみる視線は冷たいモノばかり。

死体には蛆虫が湧いていて、それを踏まないように気をつける。

それでも少しは踏んでしまう、その死体は温くもないが…そこまで冷たくもない。

でも、新しい血は…すぐに体から出てきた血は生暖かい。


「っ…………」


また吐き気が襲って来た。

ウミは目を開けて首を振った。

少し浅く…下手すると止まっていたかも知れない息を整えて…………ゼリー飲料を一気に飲み干した。

噛まずに、全部を流し込む。

口の中は温かいから、もっと生暖かくだらないように。


全部を飲み干した。

本当に………今すぐ出せそうなくらいの吐き気がする。

今思えば、掛かってきた血よりもまだ生暖かくはなかった。


だが明日からは?

今日は、寝て記憶の整理がついたからか昨日よりも時間が経ったのに鮮明に思い出せる空気感と臭いと情景。


そして、段ボールの中でずっといるので今日よりも温かくなっているはずだ。

ゼリー飲料は冷たいモノとして毎回飲んでいるからか…温かいと違和感と不快感が凄い。


(逆に…温かすぎると、大丈夫…?)


そうすれば、血より温かくなれば一生だとは思わないだろう。

ウミにはその思いに縋るしかなかった。




気分転換にとテントを出て、1人で歩いていたココラスがいた。

朝に決意を固めたが、やはり勇気がいる。

だが、その勇気を出して話し掛けてみた。

本音はココラスの為でもなく、仲を良くする為でもなく、緊張で…吐き気を誤魔化したかった。


「何かっ……手伝える事ってありますか?」


少し意外な人物からの声掛けだったからなのか驚いていたが、少し考え始める。

そして、

「…特にないわよ。好きなように過ごしてて」と、優しい顔付きと優しい声色で言ってくる。

それは…優しい嘘だったが、今のウミにとっては苦痛を感じる嘘だった…………。


「………暇なら、本でも読む?」

「本、ですか…。」

「日本語で書かれている本よ。恋愛ファンタジーの本。」


ウミが暇してるとでも思ったのか、聴いてきた。

確かに、時間を持て余してはいるが………それにウミは首を振った。


「私も持参している本があるので大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます。」


一礼をして、ウミはそこから立ち去った。



横には、鞄がある。

一人ひとりに配られているであろう鞄だ。

少し古そうで、本は小さいのならまだしも大きい物ならば入らないであろう大きさだ。

その中には、同じく支給された服や下着、貰ったロケットペンダント、持参してきた唯一のブランケットしかない。

小さい本1つ、入っていない。


まぁ鞄を見られない限り、この嘘はバレる心配はないだろう。


―1冊ぐらいは持ってくれば良かった…。


別に本を持って行くという考えがなかった訳では無い。

ただ、汚れたりしたら本はブランケットみたく落とせないし誤魔化せないからだ。

新しく買えるが…そこまでして読みたい本は特にないので持ってこなかった。


―ココラスさんって、日本語いけるんだな……。


名前的に此方側の人間だと思っていたが、違うのか。それとも此方の世界の住人でありながらも日本語を興味本意か命令かで覚えたのかも知れない。


そんな事を考えても意味はないので辞める。


「っ、………」


ウミの頭の中に、嫌な情景が浮かんで来た。

ぼぉーとすると出てくる情景にまた吐き気がする。

ウミはブランケットが無雑作に入っている鞄の中からロケットペンダントを取り出した。


―本当にっ、使えるのかな?


思考をするはずにとった訳ではない。

縋る為に、取ったのだ。


今のウミにとってこのロケットペンダントは“1番の支え”と言っても過言ではないほどのモノだったからだ。


だってっ絶対に来ないと思っていた日を、またっ…体験出来るかも知れないからっ…!

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