ストーカーもどき?
ウミが入った後に何人か来て時間になったのか、豪華な椅子の横で立っている50代程の男性が声を上げた。
「今から、話を始める。
此処での話は、他言無用とする。
もし話した場合は、その関係者を全て始末する。」
誰もその言葉には驚かない。
予想はしていたのか、全てを諦めているのか…。
其処からも、豪華な椅子の隣に立っている人がずっと喋っていた。
玉座に座っている人は何も話さなかった。
人形みたいに微動にもしなかったし、何処を見ているのかもさっぱり分からなかった。
本当に人形なのかも知れないと思ったが、その真意は分からない。
知らない方が身のためだろう。
話が終わり、玉座に座っていた人とその隣でずっと喋っていた人達は、奥へと入っていった。
ほとんどの人が、部屋から出て行った。
ウミも、緊張しながら部屋を出る。
ほとんどの人が、同じ方向だったが、何人かは違う。
だが、通ってきた道は大体覚えているので、その記憶を頼りに、前を歩いている黒髪ショートの男の子らしい人にストーカーもどきをした。
(こんな道通ったっけ……。)
本当に、1日前の久しぶりの任務よりも緊張している。
能力者塔が微かに見えて来て、それも無事に終わったと思っていたが、前に歩いていた人が突然止まった。
怖いが、此処で自分も止まったら怪しいだろうと突き進む。なるべく、前の人と距離を離してながら。
(行けた)と思ったのも束の間、後ろで声が聞こえた。
「何で俺についてきた。」
気の所為で、これは違う人に声を掛けている事を願ってスルーして進むが、手首を掴まれてしまった。
「何で俺についてきたんだ。
答えるまで、一緒離さない。」
薄い茶色の目で見つめられる。
声色とその目が物語っていたので、正直に話した。
元から偽るものなんてないんだし……。
「この道しか、帰り方を知りませんでした。」
「この近道はほとんどの者は知らない。」
「それをたまたま知っていただけです。」
「じゃあ何で遠回りの所まで俺について来たりついて来なかったりしたんだ。」
最善の言葉を考えて、震える口を開いた。
「…道に迷ってしまい、ついて行きました。
ご不快な思いをさせてしまい、申し訳ございません」
ずっと付いてきた男の人に向き合って、謝罪をした。
「で、この道はどうやって知った?
それを教えてくれたら離してあげる。」
ウミの手首を掴んでいる手が、更に強くなる。
少し、痛い…。
(言っても良いかな、早く解放されたいし。
でも、もしあっちの方が不快に思わせてしまったら権力とか力で居場所がなくなるかも知れない。
それは嫌だけど、けどっ)
「黒であるノア様に教えて頂きましたっ。」
「何で教えて貰ったのっ、どういう関係っ」
近くになった壁をドンッとさせる。言わば壁ドン状態で、心臓がドキドキとなっている。
手首を持っている手は更に強くなる。
(力、案外強い)
ウミよりも幼そうな顔つきで、小学高学年ぐらい。
だが身長は160cmぐらいあり、ウミと同じぐらいだ。
単に顔が幼いだけなのか、単に身長が高いだけなのか………。
「何してるの?ルシエラ」
ノアがいきなりルシエラと呼ばれている、ウミの手首を掴んでいる男の肩にポンと自分の手を置いていった。
「ノア様っ」
「その人から手を離して、離れてくれる?」
ノアはショタボの部類に入る高い声だが、この時はいつもより低く、笑顔もほとんどなかった。
ルシエラで良いのだろうか。
ルシエラはウミから手を離して、距離を取った。
「ルシエラは其処で待っててね。」
可愛さもなく、あるのはただのギャップと威圧だけがあった。
「僕の能力使うからちゃんと閉じててね」
その言葉には、優しさがあった。
ウミに向けてくるのは柔和な笑みだ。
目を瞑ると、握られていた手首とは反対の左手を握って、移動する感覚に入った。
それは、ほんの一瞬だった。
3回目のこの感覚にまだ慣れない。
今日はその中でも時間感覚が早く思えた。
「ごめんね、すぐ助けてあげれなくて。」
それだけ言って、消えていった。
前は見覚えのある道が、後ろを向くと、能力者塔だった。
(送ってくれたんだ…。)
コントロールルームを尋ねて、開けて貰った扉で能力者塔に入った。
部屋に戻って冷静になると、(何でノア様が謝ったんだろ)と思ったが、その理由は考えても答えに辿り着ける気がしないので考えるのを辞めて、持って来た宿題に手を付けた。
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「知らなかったのかも知れないけど、僕の大切な人を傷つけて楽しかった?」
わざとルシエラの後ろに瞬間移動して、後ろから声を掛けた。
ビクッと肩を震わせながら、首を全力で横に振って、小さな子供が親に言うように言った。
「ごめんなさい…。」と。
「何に対して?」
全力な笑顔をルシエラに向ける。
それにルシエラは、怯えていた。
「傷つけてしまった事に対して、です。」
「分かれば良いよ。
僕もそこまで責める気はないからね。
次から気をつけてくれればいいから。
じゃあ、僕も行かないと行けないから」
ルシエラの頭を撫でて、来賓室の扉の前までとんだ。
「ノア様っ、すみませんが、皇城での転移は辞めて頂けると…」
「あぁごめんね、すっかり忘れてたよ。」
口調は先程から変わらないのに、声のトーンと表情も違う。
(とんだ醜態だな。)
ノアは萎縮している騎士の変わりに自分で来賓室の扉を開けて入った。




