ノアとの喫茶店
「凄く賑やかなんですね、」
(戦争で、この景色がなくなるかも知れないんだな……)
実際にそうなのかは分からないが、戦争が始まると物価高や人がピリピリしたりすると言うのを聞いた事がある。
「そうだよ〜、楽しい所がいっぱいあるんだっ」
ウミの右手とノアの左手が繋いでいる。
その手をノアは少しだけ、揺らしていた。
はぐれないようにと言われたが、私情の方があるのではと思ったが何も言わずに、従った。
あの後は30分、あの部屋で待たされた。
ノアが何処かへ行ったと思うと30分後に帰ってきて、許可は取ってきたから行こうと元気よくウミの手を引いた。で、今はこうなっている。
「彼処のお店、凄く美味しいんだよ。
入ろっか」
有無を言わさずに、引かれる。
ウミはそれに付いて行くだけ。
「ウミはどれが良い?」
お店の個室に案内されて、2人切りの部屋で、メニュー表を渡されながら聞かれる。
「別に、いりません……。」
「んじゃ、ウミはクリームメロンソーダね。
僕はどれにしよっかな〜」
ノアがウミにクリームソーダを選んだ時、少し冷や汗をかいてしまった。
たまたまなのかも知れない、杞憂かも知れないが、今1番ウミが気に入っている飲み物だった……。
「よし、決めた。」
さっきからぶつぶつぶつぶつと何かを言いながら悩んでいたノアはいきなり声を発した。
ノアが、テーブルの端にあるボタンを押すと、此処の店員が入って来た。
「クリームメロンソーダといちごパフェ下さい」
「承知いたしました。少々お待ちください。」と言って店員は、部屋から出て行った。
少しして沈黙の空間に、2つ共運んでいる店員が入り、置いて行った。
「お待たせいたしました。ごゆっくりどうぞ」と言って。
「僕の奢りだから好きに飲んでいいよ」
流石に初対面の人に奢られるのは怪しさ満点だが、ウミは一銭も持っていないし、もう頼まれてしまったからには仕方が無い。
アイスを一口食べた。
「どう、おいし?」
「凄く美味しいです」
少しだけ笑顔を作る。
「ふ〜ん、そっか。それなら良かった」
何か、勘付かれている感が半端ないがお互いに何も言わない。
ノアが笑顔をウミに見せて来て、いちごパフェを食べ始めた。
一瞬バレたかと思ったが、杞憂だったようだ。
「そう言えばウミはどうやって連れてこられたの?」
パフェを全部食べ終わったノアがいきなり聞いてきた。
此方はなんでそれを知らないの、と純粋に聞きたいが質問で質問を返すのは怒られる事を知っているウミは答える。
「家に帰ろうとしたら、ナイフを突き立てられて仕方なく付いて行きました。」
「それで?全部教えて?」
前のめりに聞いて来る。
それに少し戸惑ったが、正直に全部話す事にした。
「それで、車の中に入るなり脅されて注射を打たれました。
打たれた後、嫌な感覚とかもありましたが耐えられなくなり眠りました。
気付いたらベッドに横たわっていました。
これで終わりです。」
「起きた時、どんなだった?
嫌悪感とか吐き気とか、あったんじゃない?」
「まぁ、ありましたね。
平衡感覚がおかしくて歩けませんでした。
寝ようとしても吐き気と平衡感覚のせいで邪魔されて結局寝れませんでした。
呂律もまわりませんでしたし………。」
そう、ハンカチで眠らせて起きた時に歩くとか絶対に不可能なのだ。
それが麻酔薬だとしたら尚更。
首をチョップして気絶なんてもってのほか。
注射も、抵抗していたらもっと苦しかっただろう。
それを思うと、あの時抵抗しなくて良かったと本気で思えてしまった。
起きた後もそれはそれでヤバかった。
手術した後はこれよりも苦しいのだと思うと、手術を受けた人達を尊敬をしてしまった程だ。
それと、誰か教えて置いて欲しかった。
こんなに苦しいという事を…………。
――――――――――――――――――――――
「美味しかったでしょ、僕のお気に入りなんだ〜」
「はい、美味しくいただきました」
「んじゃ、次の所に行こうか」
ノアが会計を済ませて、店を出る。
その頃にはもう、午後15時近くだった。
「皆が憧れの冒険者ギルドにでも行く?
ウミもそういうの憧れてたよね、今はどう?」
どうして知っているのかは気になるが、
「冒険者ギルドに入るのは禁止と聞きました」
「連れないな〜。
じゃあそれ関係無しにさ、冒険者ギルドは行きたいと、入りたいと思う?」
(魔物とか魔族とかエルフとか、本当にいるのかは知りたいが………)
「興味ないです」
興味はあるが、規則は破りたくはない。
少し悲しそうな顔をしてそうなんだとノアは言った。
ノアはウミと会った事があると言ったが、ウミはその事を覚えていない。
だが、ウミが異世界や冒険者といったファンタジーが好きというのを言っていたのは幼子の頃だ。
本当にウミが覚えていないだけで、会った事があるかも知れないと、脳裏を掠めた。
「図書館でも行こうか」
手を引かれる。
いつの間にか、手を握られていたようだ。
ウミは、引かれるがままに歩いた。




