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深い森の彼方に 改訂版  作者: とも
19/24

-19-

変質者の妄想や行為を削除しました。

「女性になったのですね。おめでとうございます。」

セーラー服の美少女に言われて、何と答えたらいいのかわからなかった。曖昧にうなづきかえした。

「今日はお帰りになって、ゆっくりお休みなったほうがいいと思います。」

彼女に促されて、家に戻ることにした。


「その日はゆっくり」という程度ではなかった。

翌日もその次の日も一日中家にいた。下腹部に鈍痛が続き吐き気もする。初めての生理痛の経験だ。外に出て活動しようとする気力が全くわかない。生理休暇の必要性をひしひしと感じた。生理中でも平然と仕事をしていた女性もいたが、彼女たちの体調は大丈夫なのだろうか。

とにかくわかったことは、この世界は私の妄想がベースにあるということ。その妄想は「女になりたい」という妄想から出発したこと。しかし、私は性同一性障害だったわけでもないし、同性愛者でもない。性嗜好は女性に向いていた。その結果、女だらけの世界に没入し自分も女になってしまったということなのだ。

それも、自分の体は実在のものである。それが女性化するための手段として一方的な性転換手術、そして男性との関係、この二つで現実の肉体が女性になってしまったということなのだろう。そして、初潮まで来て、ということは妊娠もあり得るということだ。

おまけに、この世界には男がいないというややこしい状況にあるものだから、一時の性交渉のために元の世界(だろうと思う)に移動し、それも深い森を通過するのと同じような状況を再現しなくては移動もできないのだ。全体を整理すると、辻褄が合うというばそのとおりだが、自分の今後を考えると頭が混乱するばかりだった。


生理も過ぎ去り体調も落ち着いたところで、「お仕事」への欲望が高まった。また、本部の美少女のご厄介にならざるを得ない。本部に向かおうと部屋を出ようとしたときチャイムが鳴った。

そもそも、この世界で家を行き来するような友人・知人もいないし、配達や集金などあるわけもない。部屋を間違えたのだろうと暫く放置すると、再度チャイムが鳴った。ドアの覗き穴から外を見ると軍服姿が見える。びっくりしてドアを開けた。

「おはようございます。朝早くからもうしわけありません。」

軍服姿の運転手だった。

「司令官より伝言です。緊急事態のためすぐに司令部来てくださいとのこと。外に車を置いてありますので、お支度ができましたらすぐに。車でお待ちしています。」

「ちょっと待って、何が起きたの?」

「それは、司令官からお聞きください。」

「わかった。でも私は軍服も持ってないし・・・」

「服装はかまいません。いつものスーツでお越しください。」

彼女は出ていった。

緊急事態であれば行かなくてはならないが、何で私が。私が軍を指導するような立場にはないはずだし。それに、何を報告されても、何の判断もできないだろうし、いいのだろうか。すくなくとも、本部に行ってあの仕事の斡旋をお願いするなどという余裕がなさそうなのはわかった。

マンションから外に出ると、軍用ジープが停まっていた。助手席に乗り込むとすぐにスタートした。それと同時に緊急時の赤い回転灯を点けると、猛スピードで走りだした。石畳の道を跳ねるように走っていく。運転手に聞きたいことは山ほどあったが会話ができるような状況ではなかった。

10分たらずで基地の敷地内に滑り込み、司令部本部前に停車した。門前にいた衛兵が飛んできて軍用ジープのドアを開けた

「司令官室で司令官がお待ちかねです。」

運転手の先導で司令官室に向かった。

司令官室に入ると、司令官すなわち地下街の管理人が一人でソファに座っていた。

「朝早くから御足労いただいてもうしわけありません。これをご覧ください。」

傍らの床に目をやった。一人の男が横たわっていた。全裸でときおりうめき声を発する。***********切り落とされ、左腕の付け根に大きな切り傷がある。

「どうしたのですか。」

「突然、城壁内部にこの者が現れ、基地周辺を徘徊したあげく倉庫内で腕を切り落とそうとしていたようです。自分で切り落とすことができずに痛みで転げまわっていました。この醜い*****************************切断しました。本人の脳内部は我々は理解不能の欲望で渦巻いています。どうしましょうか。」

「このような者はよく来るのですか。」

「最近不審者の目撃情報は増えています。これまでは情報だけで実際に捕らえたことはありませんでした。今回のように不審者を捕らえたのは初めてで、なぜ捕らえられたかもよくわかりません。それに、自分で自分の肉体を切断するような人については見たことも聞いたこともありません。」

私は、うめき声をあげている男のそばにしゃがみ手で直接触れてみた。皮膚の感触がはっきりわかった。間違いなく実態のある人間だ。左腕の付け根の他にも体中には傷がある。体を裏返してみると背中から尻にかけては無数の傷があり、化膿したような跡もあった。しかし、うめき声をあげる男の顔をよく見ると、単に痛みによる苦痛で呻いているだけではないようだ。目元には恍惚感を表す笑みがわずかに浮かんでいた。

私は、男の耳元でささやいた。

「***を自分で切り取ることができてうれしい?」

わずかに肯いた。

「腕もきちんと切り落としたかった?」

肯いた。

「あなたは、四肢不一致症候群なの?」

肯いたようだった。そもそも彼本人が四肢不一致症候群などという精神医学用語を知っているかどうかはなはだ疑問だ。

司令官に言った。

「この人は、マゾヒストで手足などの身体切断願望を持った人のようですね。妄想の世界に落ち込んだのではないでしょうか。」

「このような見苦しい物体を股間に着けている人間は、この世界に存在してはなりません。直ちに処刑すべきだと思います。」

「私の妄想とは全く種類が違います。妄想世界が錯綜し意図せず迷い込んだのではないでしょうか。城外に放逐し妄想世界から脱却させ元の世界にもどしてやればいいのではないでしょうか。ところで、この者の頭の中、考えていることがあなたはわかるのですか?」

「私に限らず何人かはわかる者はいます。しかし、誰もが完全にわかるわけでなく、何人かでわかったことを纏めてなんとなく全容がつかめます。我国のような女の社会を切望する者であればだいたいわかります。しかし、こいつの頭の中は全く理解不能です。思考が混沌としていて我々にはその欲望は理解不能です。」

「わかりました。早く放逐しましょう。」

「その前にこの股間の*********は、どうしましょう。」

「どうせ放逐するのですから、わざわざ手を掛けることはないでしょう。せいぜい見えないようにしておけば・・・」

「わかりました。」

司令官は兵士にガムテープを持ってこさせると、股間に直に張り付けた。何重にも重ね見えないようにすると、部屋外の部下に命令した。

「こやつを縛り、城外へ連れて行き放逐せよ。すぐにだ。」

3人兵士が部屋に入りロープで縛り引き立てた。そしてロープで引きずりだすように軍用トラックの荷台に乗せ、城郭へ運んで行った。

「ご相談をしてよかったです。部下たちは問答無用で刺殺しようとしていましたから。この手の侵入者を捕らえたらどうしましょうか。」

「原則として、放逐すべきだと思います。でも一応本人の妄想を確認してからのほうが間違いないはずです。それと、放逐はあの森の入口にある城門で行われるのでしょうか?」

「そのはずです。外界との接点はあそこしかありませんから。」

「私も放逐の現場に立ち会うわけにはいかないでしょうか。」

「あの者のいっしょに行くということですか?」

「はい、是非。」

司令官は少々考えていた。

「わかりました。いいでしょう。警備兵が大勢いて錯綜していますが、行幸を伝え準備を指示します。しばらくここでお待ちください。」

司令官は出ていった。

私が行くことを「行幸」と言った。まるで天皇が出かけるかのような表現だ。私はここでは同じような立場なのだろうか。


いつもの運転手の軍用ジープに司令官とともに乗り込んだ。

基地の門から外に出てしばらくすると、城壁の手前の小高い丘が見えた。

「この丘の周囲で、不審者の目撃情報がよくあります。」

「巡視は強化しているのですか。」

「先月から、基地の外側、丘の周囲、城郭沿いについて、24時間体制で巡視をしています。しかし、範囲が広いので2人一組にしてもせいぜい1日4回程度しか回ることができません。」

司令官の説明の直後、ジープは急停車した。

「司令官、灌木のむこうに人らしき怪しい姿が・・・」

運転手の声に、司令官は双眼鏡をあてて暫く眺めていた。

「ふつうの女のように見えるが、そもそも一般人が立ち入る場所じゃない。そばに近づいてみろ。」

そろそろとジープが動きだし灌木のそばに近づいた。

「木の向こう側にいるぞ。」

私にも肉眼ではっきり見えた。超ミニの原色のワンピースを身に着けた男だった。立木に寄り掛かったまま、*************************************していた。司令官はジープから降りピストルを手に近づいていった。そのとき、男は*********************************************姿が薄れ始め、ぐったりと地面に横たわったとたん姿が見えなくなった。

司令官はジープに戻りピストルをベルトに装着したホルダーに収めた。

「最近の目撃情報に酷似している。3日前にもあのような報告があった。私が直接見たのは初めてだが。」

「あの者がどのような妄想をしているかわかりますか。」

「わかりません。わかるレベルに達する前に消滅してしまうようです。」

「そうですか。現れた始めたところを見た人はいるのですか?」

「今とは逆にぼんやりと見え始めます。見え始めから、得体のしれない動作を延々と繰り返しています。クッキリと姿が見えてからは得体のしれない動作が激しくなるようです。その後、何やら身を震わせてぐったりすると姿が薄くなり消滅してしまうようです。」

「あのように、白濁した粘液を放出させているのですか?」

「いや必ずしもそうではありません。1週間ほど前の報告では、縄で全身を縛られた全裸の女でした。股間に自動的に蠢く棍棒状のモノを突き立てていたということだそうです。その時はかなり長く見え始めから消滅するまで1時間近くかかっていたそうです。消えるときも消えたかと思えばまた現れというようなことを繰り返していたそうです。」

「なるべくたくさんの情報を収集して分析してみましょう。」

そうは言ってみたが、だいたいの想像はついた。アブノーマルな妄想をしながら******************こちらの世界に現れる。それが***に到達するとその後徐々に姿が薄れ消滅する、そんなところだろうか。そして、恐らく実体は存在せず幻影だけが現れているだけのような気がする。ピストルで撃ってみればわかる。妄想が高まった時にこの世界と共鳴してしまったものだろう。いずれにしろ、我国に実害はなさそうなので情報がまとまってから話を聞けばいいことだ。


「到着しました。」

運転手の声に、外を見るとあの城郭があった。先日運転手から案内してもらった施設だ。司令官の先導で中に入った。運転手はここまではついてこない。私にとってのこの世界の入り口に間違いない。どこの部屋だったかはわからないが、あの切断された時に入れられていた小部屋と全く同じ造りの部屋がいくつか並んでいた。

基地や町のある方角と反対側に、大きな窓のある広い部屋に入った。窓からは百mあまり先にある鬱蒼とした深い森が見渡せた。あれが私の歩いて来た深い森だ。間違いない。初めて森の実在を確認することができた。床には先ほどの全裸で体の一部を自損した男が縄で縛られたまま横たわっていた。

両側に軍服の兵士が立っている。

「これから外に放逐しますが、このままでよろしいでしょうか。」

兵士は二人とも深緑の上衣に腰にはピストルを装着したベルトをしている。そして下半身は膝丈のタイトスカートに軍靴だ。男の目が輝いているのがわかった。頭のすぐ脇に兵士の一人は立っているのだ。明らかに男は兵士のスカートの中を覗いていた。思わぬ光景を目にして喜んでいるのだ。ガムテープで塞がれていた男の**********************************になっていた。

私は、男のそばに近づき顔を靴で踏みつけてやった。うめき声をあげたが、マゾヒストであれば女に踏みつけられてうれしいはずだ。もう一回踏んでくれといったような表情をしている。踏んだ時に、私のスカートの中を覗いたはずだ。見せてくれという獣じみた欲情が顔に現れていた。

「どうしたのですか?」

「やつは、兵士のスカートの中を覗いていました。」

「この、不埒なやつめ。」

司令官は唾を吐きつけた。

「そういうことをやるとやつはかえって喜びます。放っておきましょう。どうせ放逐すればもう戻ってくることはないはずですから。」

男は、傍から離れた私のほうばかりを見ていた。私の顔ではない。視線は下半身に向けられている。私はスカートの中を覗かれない位置まで移動したはずなのに、何を見て喜んでいるのだろうか。ふくらはぎを見れば十分ということは、足フェチなのか。マゾヒストで自損願望があるくせに、フェチでスカートの中を覗いたり足を見て喜んでいる。あの男の妄想の世界はどのような世界なのか。自損だけなら自分を切り刻むだけの世界になろうが、あらゆる妄想が混在した世界なのか。あの男も自分の妄想の世界に入り込んだのだろう。明らかにここの世界とは妄想の種類が違う。まして、単なる自損マニアであれば自分だけで完結した妄想となろうが、他者を苛むことによって妄想が成り立つとしたら、背景や脇役は尽く犠牲者にならなくてはならない。

リーダーの言っていたことは、妄想の世界に入った人は、同じ事象を対しても、各々異なる妄想を抱いている、長身の娘やピンクハウスに会ったのは、同じ対象を見ていながら異なる妄想と認識をしている、それがたまたま重なっただけだろう、というようなことだったと思う。この男はどうなのか。縄で縛られ、司令官と兵士と私の4人の女に囲まれている。私は自分が女になり、元の世界ではふつうは男が演ずる役割を全て女がしている。私にとってはこれでもう十分妄想だ。あの男にとって私たちやこのシチュエーションはどのように見えているのだろうか。

「あの男を森の中に放置することはできるのですか。」

「多くの兵士は森に近づくと人事不肖になります。今ここにいる勤務中の兵士で、近づくことができるのは3人ぐらいしかいません。それでも、森の際までであって中に入り込むことは誰もできません。私も近づくことはできますが中には入れません。」

「それでは、あの森の中に投げ込むようにしましょう。いずれ森の奥に勝手に入っていくでしょうから縄もほどいておいたほうがいいでしょう。それから、連れて行くときは兵士たちの服装は、スカートはやめたほうがいいです。ズボンはありませんか? あの者はスカートの中を覗きこんであのようになっています。」

男はまだ私の足に目が釘付けだった。膝の上から太もものあたりまで見えるのかもしれない。突然、男の体の中央部分を塞いでいたガムテープが弾け飛んだ。先端が切断されているにも関わらず異常な力だった。切断された物体**********************************************つやつやと輝いていた。

「わかりましたそうしましょう。それにしても汚らしいやつめ。」

私をはじめ司令官や兵士たちは全員、醜い物体を臆面もなく晒している男に汚物を見るような侮蔑の視線を投げかけた。

ズボンに履き替えた兵士が縄をほどき、そのかわり筵にくるんだ。頭の先端とつま先だけが出ている。目だけはキョロキョロ動かしているがスカートの中はもう覗けない。筵でまかれた男を、ズボンに履き替えた司令官と兵士の4人で抱え、森の前に広がる空地に出た。男は私の足を見る代わりに、目の前にある司令官の豊かなバストに視線が釘付けになっていた。4人は、森の入口で勢いをつけ森の下草の生えている獣道に放りだした。司令官と3名の兵士が城郭に戻っても筵にくるまれた男は身動きもしなかった。

「これでいいでしょう。皆さんご苦労様でした。」

司令官から城郭の施設(といっても部屋が並んでいるだけだが)の視察の案内をしてもらい、運転手の待つジープに戻った。

「司令官はあの森の中に入ったことがあるのですか。」

「いいえありません。入口までは行けますが、あの下草の生えた場所に足を踏み入れると踏み入れた足の力が抜け動かなくなります。うっかり体ごと入ってしまうと、自力で戻ることができなくなります。一度、両足をうっかり入れてしまって動けなくなりました。幸い森の外側に倒れたので、兵士に引きずり出してもらい助かりました。森側に倒れたら助からなかったかもしれません。」

「そうですか。」

あの森がこの世界と元の世界とを遮る場所なのだ。そして、この妄想の世界の住人は森まで行くことはできない。森に入ることができるのは、妄想の主体である私や、長身の娘、ピンクハウスだけなのだ。あのマゾヒストの自損男は私たちの妄想の世界とは妄想の種類が違う。はたして戻れるのだろうか。それは本人しかわからない。

ネットの連載だと、いったいいつまで続くのか、ちゃんと完成するのか見当つかないですよね。

それに、10万字を超えると、読むのも飽きてくると思います。

ということで、先の見通しを表明します。

下書きレベルですが完結させました。あと5話で完了です。

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