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深い森の彼方に 改訂版  作者: とも
18/24

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私は公園のベンチでぽつねんと座っている初老の女性の傍らのベンチに腰を下ろした。

「基地に行ってきたんだね。」

突然隣にいた初老のスーツ姿の女性が話しかけてきた。

「え・・・」

いったい誰? なぜ突然? 何で知っているのだろうか。

「城郭にも行ってきたようだね。」

初老の女性は顔を正面に向けたままだった。

「なぜそんなことを知っているのですか?」

私はびっくりして立ち上がり初老の女性の顔を覗きこんだ。

え、まさか。ひょっとして。

私と同じようなダークグレーのスーツ。薄化粧の美しい顔、でも歳相応に皺が寄っている。たっぷりとした髪後ろで濃緑色のリボンで纏めている。しかし、既に白いものがかなり交っている。

そして、その顔立ち。もう50歳代、いや60歳ぐらいに見えるが、忘れるはずもない、リーダーだ。

「リーダーですか?」

「・・・」

「なんで、こんな姿に。」

「・・・」

暫く声が出なかった。確かにリーダーに違いない。なんでこのように老けてしまったのか。

私はリーダーの座っているベンチの隣に腰を下ろした。

「いったい、何で。今まで、どうしていたのですか?」

「私のことなどはどうでもいい。それより、基地の司令官の言っていることはわかったか。」

「よくわかりませんでした。あまりに予想外の対応をされて。」

「運転手から詳しい話を聞いたか。」

「まあ、それなりに。」

暫く沈黙が続いた。

「あのノッポの娘と話し合ってずいぶんこの世界のことがわかってきたようだったが、その後はどうだ。」

「この世界が、私の妄想の世界だろうということは想像がついています。でもあの娘は私の妄想の中なのか・・・」

「そのとおりだ。ここはお前の妄想の世界だ。そしてお前だけの世界であって、あのノッポの娘の世界ではない。あの娘はあの娘として自分で妄想を抱え妄想の世界を持っている。」

「でも一緒に色々話し合いもできました。具体的なこともです。お互いに体に触れることもできました。」

「あの娘も実在の人間だからだ。実在の人間どうしは何でもできる。」

「私の妄想の世界なのにできるのですか。」

「あの娘もお前と同じ妄想を抱いていたのだろう。同じような妄想の世界が、時折共鳴しあっているのではないか。」

「同じ妄想をしている者どうしが、妄想の世界で遭遇するというのですか。」

「たぶんそうだ。でも私はこの世界を研究し分析しているわけではないので、くわしくはわからない。」、

「あの娘も、同じような人が二人いたと言ってました。私も最近ピンクハウスの服を着た人にも会いました。その人たちもそうなんでしょうか。でも私はどこにもここに似た別の世界に行ったことはないし・・・」

「ノッポの娘がこの世界に迷い込んだという証拠はない。お前が向こうに迷いこんでいたのかもしれないがその証拠もない。そもそも、ノッポの娘とお前が一緒にいて一緒に見ているつもりの光景も、本当に同じものなのかどうかもわからない。「あなたが今見ているあの店員はどういう人?」とその都度相手に聞いてそれを自分の見ているものと比較して初めて同じものかどうかわかる。それは、この世界でもお前がいた元の世界でも同じだ。」

「同じ絵を見て、美しいと思う人もいれば、不気味と思う人もいる、ということですか。」

「まあ、だいたい似たようなことだ。そもそもこの世界はお前の想念だ。お前が思っていることが「事実」として具象化している。だから、同じ物を見てもその人が感じた「想い」が異なれば実質的に違うモノとなってしまう。自分が見ている光景を、目の前にいる人も同じものを見ているに違いないと誤解しているだけなのかもしれない。」

「私が見ているこの世界は、私が思っていることがそのまま具象化したもので、他の人はどう見えているかわからないということですか。」

「だいたいそのようなものだと思う。しかし、単に「思っていること」というわけではない。こうでありたいと「思っていること」だ。」

「でも、あの嫌なOLの上司は何なのですか。私はああいう人と仕事をしたいとは何一つ思っていません。」

「だから、背景だ。我々が「こうありたいと思っていること」はわずかなことしかない。だから、思っていることだけでは世界は構築できない。絵を画くにもカンバスがいる、画きあがっても額がいる、ただ絵を画いた紙しかなかったとしてもその絵を置く場所がいる。思っていることをより具体化させるための道具だ。」

「司令官もですか。彼女も背景なんですか。」

「額縁と壁のちがいだ。思っていることを具体化させるため、その背景自体の来歴や位置付けを明確にしてあたかも実在にように存在しているものと、単なる壁紙との違いだ。それでも壁紙は自分の意図が入るが、コンクリート壁には意図は入れられない、それでもコンクリート壁は選べるが外に放置しただけでは選ぶことすら必要がない。背景にも濃淡があるということだ。」

「セーラー服の人と・・・」

「お前の妄想だ。自分の好みが形に現れたに過ぎない。」

「あの、本部の美少女も・・・」

「お前がこの妄想の世界をうまく立ち回るために、自ら構築した自立した共演者だ。背景が奥行のない大道具のようなものとすれば、あの二人は助演女優だ。あの二人をうまく使っていくことが大事だ。」

「わかりました。でももうひとつどうしてもわからないことがあります。」

「なんだ。」

「リーダー、リーダーは・・・」

「知らなくてもいい。」

「でも、そんなに変わってしまって、あんなに若くて美しくて、どんなに殴られてもリーダーに憧れて、理想の女性で・・・」

「変わったのはお前だ。お前はすっかり女になった。あのフリヒラ女を見ろ。お前がこの世界に来たばかりのころは、あんな状態だった。女の服をきた醜い男だ。しかし、お前は今、誰からも、どんなところでも、どんな状況でも、美しい女、そのものだ。私は単に歳をとっただけだ。」

「・・・」

「もう、私にはお前に話してやることはひとつもない。もう行け、あのセーラー服の二人とうまくやっていけ。」


リーダーは口を閉ざした。いくら私が話しかけても返事をしてくれなかった。目を閉じ、塑像のように微動だにしなかった。私はやむなくベンチから立ち上がった。

「わかりました。お世話になりました。」

リーダーに向かって深々と頭を下げた。何でだかわからないが涙が溢れ止めどなく流れ出してきた。そして、やはり何でだかわからないが足は自然と「本部」のほうへ向いた。何度振り返っても、リーダーは向こうを向いたままベンチに腰かけ、その姿勢は全く変わらなかった。


本部についた。奥の管理職の席には誰もいない。

手前に座っているブラウスとプリーツスカートの女性に声をかけた。

「あのいつものセーラー服の女性はお出かけですか。」

「総裁なら本日外出ですが・・・」

こちらを振り向いた女性は、私に気付くと慌ててたちあがった。

「失礼しました。気が付きませんで。どうぞこちらに。」

彼女は私を案内し、総裁(!)の席の横にある扉をあけ、奥の廊下を進んだ。そして一番奥まった重厚な一枚板の扉を開けると

「どうぞ、こちらに部屋を用意させていただきました。すぐにお茶をお持ちいたします。」

中は巨大なマホガニーのデスクと、同じ材質の立派な応接セット、向こう側は明るい窓、手前は書棚、入って右側にはパリらしき町の風景を描いた油絵が掛けられていた。

私はソファに座り、今日の司令官、運転手、リーダーの言葉を振り返った。

この世界は私の妄想が具象化した世界、そしてその世界をコントロールしていく責任者がセーラー服の二人ということか。一人が軍服を着た司令官、当然軍人。この世界の防衛と治安を司っているということか。それに対し本部の美少女、「総裁」と呼んでいた。文官の長ということか。

それでは私は。私は何なのだ。私の妄想の世界ということは私がこの世界の・・・

それでこの部屋は、私の執務室ということなのだろうか。

先ほどの女性がお茶を持って入ってきた。

「先ほどは、大変失礼しました。総裁は本日外出しておりまして、本日は戻れないかもしれないおっしゃっていました。明日は朝から執務室にいらっしゃいます。」

「わかりました。ところで、この部屋は・・・」

「総裁からすぐに用意しておけと言われましたので、昨日中に準備いたしました。」

「そうですか。ご苦労様でした。」

「失礼します。」

部屋から出ていった。


私が女になったということ、そしてこの世界が女だけで成り立っている世界だということ、これがこの世界の二つの大きな事象だ。

そして、リーダーが言っていたように、私も今までのことを繰り返し振り返って想像したように、この世界は私の妄想の世界だということだ。すなわち、私は「女になりたい」そして「女だけの世界で暮らしたい」と強い願望が妄想となって現実化したというのだろうか。

この世界に入り込んで、男のシンボルを取られた、女の服を与えられた、性転換手術を受けた、そして形がまず女性化していった。そして、リーダーのいうように外見に合わせて気持ちもどんどん女性化していく。その最たることが「お仕事」だ。頻度が上がったことだ。最初は男に抱かれることが苦痛以外の何物でもなかった。抱かれたあとは、男の脂ぎった匂いが体じゅうに染みついたようで1週間ぐらい気持ち悪かった。

それが徐々に抵抗感がなくなってきた。一か月以上間が開いていたのが、徐々に間隔が短くなってきた。それに最近は半月もご無沙汰になると************************濡れている。

体形も女らしく変化してきたようだ。バストも成長しCカップぐらいになった。ウェストも括れもはっきり目立つようになった。どうしてだかわからない。ホルモン摂取などしてないのに。背丈は変わらない。女性としては背は高いほうだが165cmというのは、男でも女でも通用する身長だ。肩幅は図ったわけではないが、すこし小さくなったような気がする。9号サイズの服がちょうどよくなったからだ。

足のサイズまで小さくなっている。もともと25cmで男としてはやや小さ目だが女としてはLLLサイズ。この大きさでも靴屋にも常備はされていが、デザインは限られたものしかなかった。それが緩くなってしまった。試着すると24cmでちょうどいい。このサイズなら、どこの店にいっても色んなデザインの靴が履ける。

髪の伸び方も早くなったのではないだろうか。ピンクハウスと会ったときは、髪をシュシュで纏めなかったが、今では纏めようと思えばできるまでに伸びている。

「お仕事」に行ったときもそうだ。最初の頃は「オカマ丸出し」「男が女装しているだけ」「顔を見せるな」と客から罵倒された。しかし徐々にそのような罵倒は消えていった。そもそも「ニューハーフ」として体を売っているわけで、男っぽさが体にあっても支障があるわけではないが、3ヶ月ほどたったころから「結構女っぽいじゃないか」「手術はうまくいったようだな」「ホルモンの効きがいいのか」などと言われるようになった。

ところが最近は、「おまえホントにニューハーフか」「純女がフリをして営業してるんじゃないだろうな」とも言われるようになった。「お前本当は女だろう」と股間の手術痕を探したり、「男ならこんなに尻は柔らかくない」と臀部を捻りあげられたこともあった。罵倒に逆戻りだ。でも、本音からすれば本当の女に近づいてきているわけで、喜ばしいことではあるはずだ。

なぜ女らしくなっていくのか。女性ホルモンを投与され続けているわけではない。この世界に来た当初の異臭のする食べ物はそのような気がするが。外科的な改造は「切断」だけだ。あとは自分の想念と、実際に男に抱かれることによる女性化、この二つしかない。そうだと信じるしかなかった。

ぼんやりと、自室(だと思う)のソファでそんなことを考えているうちに外が暗くなってきた。そろそろ引上げないと事務室の女性たちに迷惑がかかるかもしれない。それに女にどんどん近づいてきているということを考えているうちに、催してきた。帰って自分で自分の股間を慰めるしか方法はないが。


「申し訳ありません。ちょっと外に出ていたもので。」

部屋に入ってきたのは、セーラー服の美少女だ。私の前に座った。

「基地や城郭に行かれたようですね。私からもこの世界のことを色々とご説明しなくてはならないのですが、まあ、おいおいと。」

オフィスの一部とはいいながら、絶世の美少女と二人きりで密室にいることで、再びあってはいけない情欲が湧き上がってきてしまった。これを阻止するには、あの「お仕事」で紛らわしてくるしかなかった。

「あの、こんなところでどうかと思うんですが、仕事はあるでしょうか。」

「今日ですか。」

「はい。」

いつもだと、そそくさと裏のキャビネットに行きいくつかのリストを持ってきて写真つきのリストを見せてくれるのだが、今日の彼女はそのまま無言で私を見つめていた。

「あの、今日はもう無理かと。」

「では、明日では。」

「あの、明日でもちょっと無理かと。」

「いつならいいのでしょう。」

「少なくとも、今日、明日、場合によっては明後日も駄目だと思います。」

「え、そんなに? お客様がいないのですか?」

「いえ、そういうわけでは。むしろあなたの体調を考えて。」

「私の体調?」

「そういう状態の時には、このような仕事はちょっと無理なので。」

「そういう状態?」

「私は結構五感が鋭いほうなので、こういう時の女性と接するとわかるんです。こう言い方は大変失礼なのですが、恐らく初めてだと思いますので、トイレに行って処置をされたらいかがでしょう。この部屋のデスクの後ろ側の扉の向こう側には一人用のトイレがございます。中に処置に必要な物も準備しておりますので。」

何のことを言っているのかほとんど理解できなかった。

それでもずっとこの部屋にいて尿意も若干あったので彼女の勧めに従い、デスクの裏の専用トイレに入った。

この世界に来て初めてお目にかかる高級ホテル並みの豪華個室トイレだ。便器に腰を下ろそうと


***********突然の生理に気が付く情景 削除*************

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