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第七話 決心

前回の賑やかな日常から時は流れ、ルイスは10歳へと成長しました。ニアとの絆もさらに深まり、相変わらず甘い日々を過ごすルイスでしたが……。今回、アークライト家を揺るがす「最悪のハプニング」がルイスを襲います。姿なき巨大な悪意の影、そして最愛の人の危機。物語が一気に動き出す怒涛の展開です。


 あの賑やかな日々から5年が経ち、俺は10歳になった。

 体格も随分と大人びてきて、父上譲りの引き締まった身体には、

 さらに磨きがかかった剣術と魔術の力が満ち満ちている。


 「ルイス様ぁ……ここの魔術式の展開、どうしても上手くいかなくって……教えてほしいにゃん?」


 伯爵邸の書斎。

 隣に座るニアが、10歳になった今も変わらず愛らしい黒い猫耳をしょんぼりと寝かせ、

 潤んだ瞳で俺を見つめてくる。


 5年経っても、彼女の俺へのベタ惚れっぷりは健在、

 というかむしろ年々エスカレートしていた。


 「どれどれ? ああ、ここは火の属性変換のイメージが少し足りないんだよ。こうやって……」


 俺はニアの後ろから包み込むように手を重ね、ペンを握る。

 背中に触れるニアの柔らかい身体の感触と、

 耳元で「ふにゃああ……」と嬉しそうに漏れる吐息。


 (相変わらずニアは距離感が近くて最高だな)


 すかさず【万能鑑定(オールアプレイザル)】を発動。


 【ニア・フォン・フェリス(10歳)】


 ・状態:極度の興奮


 ・幸福(『ルイス様が後ろから抱きしめてくれた……! もうこのままお嫁さんにしてほしいにゃ……!』と妄想中)


 甘い雰囲気に包まれる書斎。

 だが、そんな至福の時間は――突如として破られた。


 バタバタバタッ――!!


 「っ……?」


 廊下から、尋常ではない数の足音が響いてくる。

 普段は厳格なアークライト家の使用人たちが、明らかに動揺し、

 館内がにわかに騒がしくなっていた。


 「どうしたのかにゃ……? なんだか、お屋敷がすごく慌ただしいにゃ……」


 ニアが不安そうに猫耳をピコピコと動かす。

 ただ事ではない気配を察した俺は、ニアの手を引いて書斎を飛び出し、

 気配の集まる執務室へと向かった。


 そこでは、父レオンを中心に、青ざめた表情の騎士団長や幹部たちが集まり、

 重苦しい空気の中で『緊急会議』が始まろうとしているところだった。


 「父上、一体何があったのですか!?」


 俺が部屋に飛び込んで問い詰めると、

 父上は苦渋に満ちた表情で俺を見つめ、声を振り絞った。


 「……ルイスか。実は、先ほど緊急の報せが入った。王都への買い出しの帰り道……シャロンが、何者かに連れ去られた」

 「――っ! シャロンが、拐われた……!?」


 頭を殴られたような衝撃が走る。


 父上の説明による会議の内容は、こうだ。

 シャロンが乗っていた馬車が突如として正体不明の集団に襲撃され、

 彼女だけが連れ去られた。

 護衛の騎士たちは一瞬で意識を失わされており、

 敵の正体、名前、目的、すべてが一切不明。

 ただ分かっているのは、高度な隠蔽魔術が使われていた形跡から、

 これが単なる物盗りではなく、明確に我がアークライト家を狙った、

 組織的で巨大な悪意であるということだけだった。


 「クソッ……! 誰が、何の目的で我が家を狙っているんだ……!」

 

 騎士団長が悔しげに机を叩く。

 俺の脳裏に、いつも優しく微笑み、

 時にははち切れんばかりの胸を押し付けて俺をからかってきた、

 最愛の専属メイドの姿が蘇る。


 (シャロンを、俺の大切な家族を奪った……?)


 その瞬間、俺の奥底で、かつてないほどの激しい怒りの炎が燃え上がった。

 だが、感情に任せて飛び出しても、

 敵の素性すら分からない今の状態ではシャロンを救えない。


 圧倒的な情報と、さらなる力が必要だ。


 (……そうだ。王都の『王立魔法学園』。あそこなら、世界中の最高峰の知識と情報が集まる。そこに潜り込み、この世界の裏に潜む悪意を炙り出してやる!)


 「父上。僕を王都の学園へ通わせてください。そこでさらに知識を広げ、必ずシャロンを連れ戻します」


 緊急会議の席で、10歳の俺が放った毅然とした言葉に、

 大人たちが目を見張る。父上は力強く頷いた。


 「ルイス……。あぁ、お前ならそう言うと思った。分かった、学園への入学を許可しよう。アークライト家の総力を挙げてバックアップする」


 隣では、ニアが俺の袖をぎゅっと握りしめ、

 涙を浮かべながらも決意を秘めた瞳で見つめていた。


 「ルイス様……私も、私も一緒に学園に行きます! ルイス様の力になりたいです!」

 「ありがとう、ニア。一緒に行こう」


 まだ見ぬ強大なボス、そしてアークライト家を狙う謎の組織。


 だが、美少女の弱点と秘密を丸見えにする【万能鑑定士】

 の俺を敵に回したことを、奴らは地獄の底で後悔することになるだろう。


 「待っててくれ、シャロン。絶対に、すぐに助けに行くからな」


 10歳になった俺は、失われた日常と、

 愛する人をこの手で奪還するべく、

 新たな戦いのステージへと歩み出すことを固く誓ったのだった。

ここまでお読みいただきありがとうございました!

これでとうとう幼少期編は終わりです。次章、『学園編』も楽しみにしていてください!


これまでの物語の感想をお願いします。是非これからも応援よろしくお願いします!

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