第六話 無自覚
前回、ルイスの格好良い決闘シーンを見て一目惚れしてしまった猫獣族の令嬢・ニア。今回は、そんなベタ惚れな彼女の「弱点」をルイスが優しく刺激してしまい、大変なことに……!?
アークライト伯爵家のサロンは、現在、
非常に華やかな空気(と少しの火花)に包まれていた。
「ル、ルイス様……っ。お隣、失礼してもよろしいでしょうか……?」
大きな金色の瞳を潤ませ、頭の上の黒い猫耳を不安そうにピコピコと動かしながら、
ニアが俺の顔を覗き込んできた。
昨日の決闘を見てからというもの、彼女は俺の後をトコトコとついて回り、
隙あらばぴったりと隣をキープしようとしてくる。完全にベタ惚れ状態だ。
「もちろんいいよ、ニア。隣においで」
「はいっ……!」
俺が微笑んでソファの隣を叩くと、ニアは嬉しそうに顔を輝かせ、
尻尾をパタパタと激しく振りながら座ってきた。
密着した彼女の身体から、獣人特有のどこか野性的で甘い香りが漂い、
5歳児の皮を被った俺の前世の煩悩が小さく疼く。
そんな俺たちの様子を、お茶を淹れながら見守る専属メイドのシャロンと、
優雅に紅茶を飲む母エレナの視線が、なぜか少しだけ鋭い。
(……おっと、お母様とシャロンの視線がちょっと怖いぞ? まぁ、気のせいか)
そんなことより、俺は昨日【万能鑑定】で見抜いた、
ニアの「弱点」が気になって仕方がなかった。
『弱点:猫獣族の特性として、顎の下を優しく撫でられると、気持ち良すぎて「にゃう……」と声を漏らし、完全に無抵抗になってしまう』
(本当にそんなに効くのか? よし、ちょっと試してみるか……!)
「ニア、少しお顔を見せて?」
「えっ……? は、はい……にゃあっ!?」
不意に俺がニアの滑らかな顎に手を添え、指先で優しく、
ゆっくりと上に向かって撫で上げてみた。
すると、ニアの小さな身体がビクッと大きく跳ね上がった。
「う、あ……ルイス、様……? そこ、は……っ」
「ここが気持ちいいの?」
「にゃうぅ……っ、は、はずかしい、のに……アン、ですにゃあ……っ」
指先でさらに円を描くように優しく擦ってやると、
ニアの金色の瞳がとろんと蕩け、完全に腰の力が抜けたように俺の胸元へと倒れ込んできた。
頭の上の猫耳がぴたーっと寝てしまい、喉からは「ぐるるる……」と
幸せそうな猫特有の鳴き声が漏れている。
(めちゃくちゃ効くじゃんこれ! 可愛すぎるだろ!)
無防備に俺の胸に顔を埋め、完全に無抵抗になってしまったニア。
だが、至福の時間を過ごす俺の背中に、今度ははっきりと冷たい視線が突き刺さった。
「あらあら……ルイス、ニアちゃんをそんなに早く口説き落としてしまうなんて、本当に罪な男の子ね。お母さん、少しジェラシーを感じてしまうわ?」
エレナが笑顔のまま、ゴゴゴと目に見えない威圧感を放っている。
「坊ちゃま、私へのお悪戯だけでは飽き足らず、他家のお嬢様まで一瞬で骨抜きにされるとは……。これからは、夜のお世話の時間をもう少し増やすべきかもしれませんね」
シャロンが淹れ立ての紅茶をデスクに置く際、
はち切れんばかりの豊かな胸をわざと俺の腕にムギュッと押し付けてきた。
薄手のメイド服越しに伝わる、圧倒的な柔らかさと熱量。
(お、おいおい……! ニアは完全に俺にベタ惚れだし、お母様もシャロンも、なんだか俺を取り合ってるみたいになってないか!?)
前世では女の子に無視され続けてきた俺が、異世界に転生して5年にして、
美少女たちに囲まれてベタ惚れされる超ハーレム状態。
【万能鑑定】としての真の恐ろしさは、敵の弱点を見破るだけでなく、
こうして美少女たちの心を無自覚に、
そして完璧に掌握してしまうことにあるのかもしれない。
俺は胸の中でデレデレと甘えるニアの猫耳を優しく撫でながら、
これからの人生がバラ色に染まっていくのを確信するのだった。
ニアちゃんの顎の下をナデナデした時の「にゃうぅ……」という反応、最高に可愛かったですね。そしてそれを見て嫉妬を焼くお母様と、大人の色気で対抗してくるシャロン……ルイス、5歳にして全方位から愛されすぎています!




