第二十三話 少女
記録:い
実戦強化週間、三日目。
今日の俺たちは、学園が管理する西側の演習林へ来ていた。
昨日までよりも森の奥へ入るらしい。
「ルイス様! 今日はどんな魔物が出てくるかにゃ!」
隣を歩くニアが、楽しそうに尻尾を揺らしている。
「できれば弱いやつでお願いしたいな」
「えー?」
(いや、本当にできればそうしてほしい)
最近の実戦強化週間、どうもおかしい。
出てくる魔物の数が多すぎる。
しかも、昨日のグレートウルフみたいに、普通の個体より妙に魔力が強い奴まで混ざっている。
(誰かが意図的に強化してる可能性は、かなり高い)
俺は周囲を見回した。
森は静かだ。
風に揺れる木々。
鳥の声。
遠くから聞こえる魔物の鳴き声。
見た目だけなら、いつもと変わらない。
でも――
「……何かいるにゃ」
ニアが足を止めた。
「前?」
「うん。かなり速いにゃ」
俺も魔力を探る。
確かにいる。
しかも、この魔力――
(人間?)
俺たちが警戒しながら進んでいくと、少し先の木陰から一人の少女が姿を現した。
年齢は俺たちと同じくらい。
長い銀色の髪。
大きな青い瞳。
そして、頭には――
小さな角のような飾りがついている。
「……誰?」
俺が声をかけると、少女はびくっと肩を震わせた。
「えっ……あの……」
かなり怯えている。
(ん? 迷子か?)
俺は【万能鑑定】を発動した。
【対象:???】
・年齢:10歳
・種族:人族……?
・魔力属性:???
・魔力総量:A
・職業:未登録
・出身:不明
・特殊能力:???
・血統:鑑定不能
・備考:本人も自身の正確な素性を知らない
(……また鑑定できない部分がある!?)
ここ最近、俺の鑑定が弾かれることが増えている。
黒い羽根。
アリシア。
そして、この少女。
どうやら俺の知らない何かが、この世界にはまだまだあるらしい。
「……?」
少女が首を傾げる。
「どうしました?」
「いや、何でもないよ」
(鑑定結果については、今は黙っておこう)
すると、ニアが俺の袖を引っ張った。
「ルイス様……この子、怪我してるにゃ」
見ると、少女の腕に小さな傷があった。
「本当だ」
俺は簡単な治癒魔法を使う。
淡い緑色の光が傷口を包むと――
「……すごい」
少女が目を丸くする。
「ありがとうございます」
「気にしないで」
少女は少し恥ずかしそうに笑った。
その笑顔を見て――
(……なんだろう)
どこか、不思議な感じがする。
初対面なのに、妙に懐かしい。
それに、この魔力。
俺の【万能鑑定】では正体が見えないのに、なぜか強烈に引っかかる。
その時だった。
森の奥から、複数の魔物の気配が近づいてきた。
「……来るにゃ!」
ニアが身構える。
木々の間から現れたのは、五体のグレートウルフ。
しかも――
(全員、昨日の個体より魔力が濃い!?)
「下がって!」
俺は少女の前に出る。
「でも……!」
「大丈夫」
魔力を全身へ巡らせる。
身体強化――70%。
視界が一気に澄み渡る。
敵の動きが、まるでゆっくりになったように見える。
「ニア、右!」
「任せるにゃ!」
ニアが一瞬で一体を撃破。
俺も前方の二体をまとめて倒す。
残り二体。
――その瞬間。
少女が手を伸ばした。
「……凍って」
パキィィン!
地面から巨大な氷が一気に生え、二体のグレートウルフを包み込んだ。
「…………」
俺とニアは、同時に固まった。
(今の魔法……何だ?)
詠唱がない。
魔法陣すらない。
ただ、一言。
それだけで強力な氷魔法を発動させた。
しかも――
俺が昨日感じた、あの北方の魔力とよく似ている。
「すごいにゃ……」
ニアが呟く。
少女は自分の手を見つめて、首を傾げていた。
「……私、今の何をしたんでしょう?」
(本人が分かってないのかよ!?)
俺は思わず心の中でツッコんだ。
だけど、同時に一つの疑問が生まれる。
この少女は――
一体何者なんだ?
そして少女は、俺に向かって小さく頭を下げた。
「助けてくれて、ありがとうございました」
「こちらこそ。君、名前は?」
「……名前?」
少女は少し考えてから――
「ミレイアです」
銀色の髪が、森の風にふわりと揺れた。
「ミレイア・ルーゼといいます」
その名前を聞いた瞬間。
俺の【万能鑑定】に、一瞬だけ赤い文字が浮かんだ。
【警告】
【対象血統情報へのアクセスを検知】
【関連:アークライト家】
「……!」
表示はすぐに消えた。
(今の、何だったんだ?)
俺はミレイアを見る。
彼女は何も知らない様子で、ただ不思議そうにこちらを見返している。
もしかすると――
この出会いは偶然なんかじゃない。
そんな気がした。
記録:す
新キャラクター、ミレイア登場!
本人すら知らない謎の血統と、謎の魔力。
ルイスとの出会いが何を意味するのか……?
そして、記録文字も少しずつ集まってきましたねえ?
ブック◯フ。。。間違えたブックマークお願いします。




