第二十四話 隠し事
記録:た
実戦強化週間の演習林。
俺たちの前には、さっきまで魔導兵に狙われていた銀髪の少女――ミレイアが立っていた。
「……本当に、何も覚えてないの?」
俺が尋ねると、ミレイアは申し訳なさそうに頷いた。
「はい。自分がどこから来たのかも……家族がいるのかも、分かりません」
(うーん……)
普通ならかなり心配になる状況だ。
でも、俺が気になっているのは、それだけじゃない。
さっきの鑑定結果。
【血統:鑑定不能】
そして――
【関連情報:アークライト家】
さらに、ミレイアを狙っていた魔導兵。
どう考えても偶然とは思えない。
「ミレイア」
「はい?」
「この森に来る前のこと、何か一つでも覚えてない?」
ミレイアは目を閉じて、必死に記憶を探している。
「……雪」
「雪?」
「はい。すごく寒かったです。それと……」
「それと?」
「大きな塔が見えました」
(塔……?)
北方の可能性がある。
グラキエス氷帝国は、巨大な城塞都市が多いと父上から聞いたことがある。
「ほかには?」
「……黒い羽根」
「――っ」
俺の心臓が跳ねた。
まただ。
ここでも黒い羽根。
「黒い羽根を持った人がいたんです」
ミレイアは胸元を押さえる。
「その人が、私に何か言っていました」
「何て?」
「……『まだ早い』」
(まだ早い?)
一体何のことだ?
門なのか。
血なのか。
それとも――
ミレイア自身なのか。
その瞬間、遠くから慌ただしい足音が聞こえてきた。
「いたぞ!」
「生徒たちを発見した!」
教官たちだ。
どうやら魔導兵の騒ぎを聞きつけて、捜索に来たらしい。
「全員、無事か!?」
「はい!」
俺が答える。
教官たちが壊れた魔導兵を見つけると、一斉に顔色を変えた。
「……これは」
「学園の訓練で使う装置じゃないぞ」
(やっぱり、学校側もかなりヤバいと思ってるな)
俺は壊れた魔導兵をもう一度鑑定する。
【製造技術:旧式王立魔導院】
【製造時期:約20年前】
そして――
【設計者:???】
また、ここだけが見えない。
(20年前……)
銀色の徽章。
古い魔導装置。
禁書庫。
何かが、全部同じところを指している。
その時だった。
「ルイス様」
ニアが俺の服をちょんと引っ張った。
「ミレイアちゃん、少し震えてるにゃ」
見ると、ミレイアは自分の手をぎゅっと握っていた。
「……怖い?」
「少しだけ」
俺はしゃがんで目線を合わせる。
「大丈夫。僕たちがいるから」
「……ありがとうございます」
ミレイアが小さく笑った。
その笑顔を見て、俺も少し安心する。
(少なくとも、今は守ってあげないとな)
でも――
その直後だった。
ミレイアが俺の手を握った瞬間。
――パァァァッ!
青白い光が、俺たちの手の間から一瞬だけ広がった。
「えっ!?」
ニアの猫耳がピンと立つ。
エレノアも驚いて後ずさった。
俺自身も目を丸くする。
【万能鑑定】
突然、視界に大量の文字が浮かんだ。
【血統共鳴を検知】
【対象:ルイス・フォン・アークライト】
【対象:ミレイア・ルーゼ】
【共鳴率:異常値】
【共通祖先:――】
最後の部分だけが、また黒く塗りつぶされている。
(……共通祖先!?)
俺とミレイアに血縁がある?
しかも、ただの遠い親戚ではない。
魔力そのものが反応するほどの繋がり。
「ルイス様……?」
ニアが不安そうに俺を見る。
「どうしたにゃ?」
「……いや」
俺はミレイアを見る。
彼女自身は何も知らない。
でも、今の反応だけは嘘じゃない。
なら――
この少女は、アークライト家の過去を知る鍵なのかもしれない。
そして、その瞬間。
森の奥から一陣の冷たい風が吹き抜けた。
木々の隙間を舞う葉の中に――
一枚だけ、黒い羽根が混じっていた。
俺はそれを目で追う。
羽根は地面へ落ちることなく、風に乗って北の空へ消えていった。
(……北か)
俺は静かに拳を握った。
どうやら、この実戦強化週間。
ただの訓練では終わりそうにない。
そして俺たちはまだ知らなかった。
今日の事件をきっかけに――
王立魔法学園そのものが、巨大な騒動へ巻き込まれていくことを。
記録:た
ミレイアとルイスの「血統共鳴」が判明しました。
シャロン、ミレイア、アークライト家。
それぞれの秘密が、少しずつ一つの物語に繋がり始めています。
そして記録文字も、ここで一文字追加です。
ゆっくり集めてみてくださいね♪




