第二十一話 目標
記録:さ
学園の旧校舎で見つけた、謎の銀色の徽章。
そして、そこに残されていた20年前の記録。
気になることは山ほどある。
……でも。
「ルイス様!」
朝の訓練場で、ニアが元気よく手を振ってきた。
「今日も特訓するにゃ?」
「もちろん」
俺は木剣を握り直す。
最近、少しだけ思うことがある。
俺は今まで、魔力や鑑定能力に頼りすぎていたんじゃないか。
確かに強い。
たぶん、同年代どころか大人と比べてもかなり強い。
でも――
(シャロンを助けるなら、もっと強くならないと)
敵の正体すら分からない。
もし相手が俺より強かったら?
もし鑑定が通じない相手だったら?
もし、ニアやエレノアまで狙われたら?
考えれば考えるほど、今の自分では足りない気がしてくる。
だから今日は――
新しい特訓を始めることにした。
「まず、身体強化の出力を今までの二倍にする」
「二倍!?」
ニアが驚いて耳を立てる。
「無茶じゃないかにゃ?」
「無茶じゃないよ。制御できればね」
俺は自分の身体を鑑定する。
【身体強化魔術】
・現在出力:42%
・安定性:A
・最大理論値:???
(まだ伸びる)
今まで俺は、ただ魔力を増やして力を出していた。
でも重要なのは、量じゃない。
――効率と制御。
母上から学んだ魔術。
父上から叩き込まれた剣術。
そして前世の知識。
全部を一つにする。
俺は呼吸を整えた。
「……いくぞ」
魔力を全身へ巡らせる。
ドクン――。
身体の奥から熱が湧き上がる。
「――っ!」
足元の地面が、ミシッと音を立てた。
「ル、ルイス様……!?」
ニアが目を丸くする。
俺は一歩踏み込んだ。
――ドン!!
次の瞬間。
身体が一気に前へ飛び出した。
速い。
今までとは明らかに違う。
木剣を振る。
ヒュンッ!
空気が裂ける。
「……できた」
【身体強化魔術】
・出力:78%
・安定性:S
(よし)
まだ100%には届かない。
それでも、昨日までとは別物だ。
「すごいにゃ……!」
ニアが目を輝かせている。
「ルイス様、また強くなったにゃ!」
「うん。でも、まだまだだよ」
俺は木剣を握り直した。
目標は決まった。
一日でも早く、シャロンを助けられる力を手に入れる。
そのためなら、俺はもっと強くなる。
◇
昼休み。
俺たちは食堂で昼食を取っていた。
「ルイス、今日の朝練……かなり凄かったですわ」
向かいに座るエレノアが、珍しく素直に褒めてくれる。
「ありがとう」
「……私も負けていられませんわね」
そう言って、エレノアも魔力制御の練習を始めた。
(なんだかんだ、この人も努力家なんだよな)
その時だった。
学園中に鐘が鳴り響いた。
ゴーン……。
教師が立ち上がる。
「特級クラスの生徒に連絡だ。明日から、王立魔法学園では『実戦強化週間』を開始する」
教室中がざわめく。
実戦強化週間。
各地の魔物討伐や、模擬戦を通して実戦能力を高める特別授業らしい。
(……これはチャンスだ)
実戦なら、今の自分に何が足りないのか確かめられる。
俺は小さく笑った。
「ニア」
「はいにゃ!」
「明日、一緒に頑張ろう」
「もちろんにゃ!」
そして俺は――
誰にも気づかれないよう、昨日手に入れた銀色の徽章をポケットの中で握った。
【鑑定】
微弱な闇属性魔力。
そして――
わずかな黒砂地帯の魔力。
(やっぱり、この学園の過去とシャロンの事件は繋がってる)
なら、明日の実戦強化週間でも、何か新しい情報が見つかるかもしれない。
俺はそう考えながら、静かに空を見上げた。
記録:ば
ルイスは魔力量だけではなく、安定性も意識し始めました。
強くなることはシャロンを助け出すために必要な一歩です!%&”$




