第十八話 留学生
記録:い
数日後。
王立魔法学園では、朝からいつも以上に生徒たちが浮ついていた。
理由はもちろん――
「今日、ついに来るんだよな?」
「グラキエス氷帝国の留学生!」
教室のあちこちから、そんな声が聞こえてくる。
俺も窓の外を眺めながら、少しだけ興味を持っていた。
(氷帝国か……)
父上から届いた手紙のせいで、むしろ気になって仕方がない。
『北には、お前がまだ知るべきではないアークライト家の過去がある』
あの一文。
どう考えても何か隠している。
(でも、父上が話したくないなら、無理に聞くのもな……)
そんなことを考えていると――
「ルイス様!」
ニアが勢いよく俺の机までやってきた。
「空から何か来るにゃ!」
「空?」
窓の外を見る。
王都上空を、一隻の巨大な魔導船がゆっくりと進んでいた。
銀色の船体。
船の側面から吹き出す白い魔力。
そして、船の先端には――雪の結晶を思わせる紋章。
(うわ……完全に異国って感じだ)
やがて魔導船は学園の中庭へ降下していく。
生徒たちが一斉に窓へ集まった。
俺たちもその流れに混ざる。
エレノアも窓の近くへやってきた。
「……かなり大きな船ですわね」
「魔導科学ってやつかな」
「ええ。グラキエスは魔術より機械技術が発達した国ですもの」
その時。
船の扉が開いた。
先頭に立っていたのは、銀髪の少女だった。
白を基調とした制服。
肩には小さなマント。
淡い青色の瞳。
そして――
頭のてっぺんから、うっすらと白い冷気が漂っている。
「……綺麗」
思わず俺が呟いた。
すると――
「ルイス様?」
ニアの猫耳がピンッと立った。
「今、あの子のこと綺麗って言ったにゃ?」
「いや、普通にそう思っただけだけど」
「……にゃ」
(しまった)
なんとなく、また火花が散っている気がする。
そんな俺たちの前を、少女がゆっくり通り過ぎる。
俺は何気なく【万能鑑定】を発動した。
【???・フォン・グラキエス】
・種族:人族
・出身:グラキエス氷帝国
・魔力属性:氷・機械
・魔力:A
・特性:極寒環境適応
・隠蔽情報:多数
(……隠蔽情報が多い?)
さらに深く鑑定しようとした――その瞬間。
――キィン!
鑑定画面にノイズが走った。
(えっ!?)
俺の【万能鑑定】が弾かれた。
完全ではない。
でも、明らかに何かが干渉している。
――これまでにもあった。
黒い羽根の老人。
禁書庫。
そして今回。
(また俺の鑑定を邪魔するやつか……!)
俺は思わず少女を見つめた。
その瞬間。
彼女もこちらを見た。
淡い青色の瞳と、視線がぶつかる。
「…………」
少女はほんの一瞬だけ目を見開き――
すぐに、何事もなかったかのように視線を逸らした。
(今の反応……絶対、何か知ってる)
しかも。
彼女の制服に付いている胸元の小さな飾り。
よく見ると、そこには――
黒い羽根のような模様が刻まれていた。
「……まさか」
俺が呟いた、その時。
「初めまして。グラキエス氷帝国より留学して参りました――」
少女は静かに頭を下げる。
「アリシア・フォン・グラキエスと申します」
周囲から歓声が上がる。
だが、俺の頭の中には別の考えが渦巻いていた。
(北方の留学生)
(鑑定妨害)
(黒い羽根のような紋章)
これだけ揃っていたら、偶然とは思えない。
シャロンの事件。
黒砂地帯。
北方への通信。
そして――この少女。
「ルイス様?」
ニアが俺の袖を掴む。
「どうしたにゃ?」
「いや……」
俺はアリシアを見ながら小さく笑った。
「ちょっと、面白くなってきたなって」
ただの留学生なのか。
それとも――
シャロンを連れ去った組織と、何か関係があるのか。
まだ分からない。
でも、これだけは確かだった。
俺の学園生活に――
新しい嵐がやってきた。
記録:は
今回から新しい留学生が登場しました!
アリシアはいったい何者なのか?
そして、ルイスの【万能鑑定】を妨害した理由とは……?
まだまだ謎だらけですが、これから少しずつ明らかになっていきます。
記録文字も、ゆっくり集めてみてくd0#)”=$!?!?




