第十二話 絆
ついに特級クラス全員参加型バトルロイヤルが開幕ッ!
あー、懐かしいぞ。フォ◯ナが。荒◯行動が!
王立魔法学園の特級クラス、初めての実技授業。
広大な模擬演習場に集められた俺たちに、
担当教官から無慈悲なルールが告げられた。
「これより、クラス全員による合同模擬戦を行う。形式は『二人一組』のバトルロイヤルだ。演習場内に散らばり、他チームの胸に付けられた魔力バッジを破壊、あるいは降伏させた時点で脱落。最後まで生き残ったペアが勝者だ」
その言葉を聞いた瞬間、
隣にいたニアが我が意を得たりとばかりに黒い猫耳をピンと立たせた。
「ルイス様! ニアのペアは、当然ルイス様しかいないにゃ!」
「もちろん。よろしくね、ニア」
俺が微笑んで彼女の頭を撫でると、
ニアは「ふにゃああ……」と頬を染めて蕩けそうになっている。
周りのエリート生徒たち(15歳前後)は、
10歳の子供二人がペアを組んだのを見て
「首席のルイスはともかく、あの獣人のガキが足引っ張りだな」
「真っ先に潰してやるか」
などと、ニヤニヤしながらこちらを睨んでいた。
そんな中、ひときわ強い視線を俺にぶつけてくるペアがいた。
金髪ツインテールを揺らす第一王女、
エレノア・フォン・アルカディアだ。
彼女はクラスでもトップクラスの実力を持つ公爵家の嫡男を相方に据え、不敵な笑みを浮かべていた。
「アークライト卿。座学では一本取られましたけれど、実戦は別ですわ! 私とアルカディア王族に伝わる魔戦技の前に、その生意気な鼻をへし折って差し上げます!」
(相変わらず威勢がいい。……じゃあ、鑑定させてもらおうか)
俺はエレノアに向けて【万能鑑定】を発動した。
【エレノア・フォン・アルカディア(15歳)】
・状態:激しい対抗心、そして強烈な意識
・脳内妄想:『座学の時のあの格好いい横顔、まだ頭から離れないじゃないの……! っ、でも負けられないわ! 私が実技で勝って、私の凄さを認めさせて、それから……それから、またあの美味しいクッキーをスマートに貰うんだから……っ!』
・好感度:35(興味が恋心へスライド中)
(相変わらず脳内がチョロくて可愛い王女様だ)
「模擬戦、開始!!」
教官の号図と共に、演習場のあちこちで魔術の爆鳴が上がった。
「おい、まずはあのガキどもを――」
生意気な侯爵家の令息たちが、
俺たちに向けて一斉に中級の氷魔術を放ってくる。
「ニア、左から三歩。僕は右をやる」
「了解にゃ!」
阿吽の呼吸。
俺の指示に、ニアは猫獣人特有の驚異的な身体能力で地を蹴り、
氷の弾幕を紙一重で回避。
瞬時に敵の懐へと潜り込み、
風の魔術を纏わせた鋭い爪の一撃で、
敵の魔力バッジを「パリィン!」と一瞬で破壊した。
「なっ、速す――あがっ!?」
同時に、俺は杖も持たずに右手をかざす。
前世の「流体力学」の知識を応用し、
空気の密度を急激に変えることで、放たれた火球の軌道を強引に曲げて敵に自爆させた。
「ぎゃあああ!?」
開始わずか数分。
10歳の俺とニアの完璧すぎるコンビネーションの前に、
周囲のエリート貴族たちは手も足も出ず、次々と脱落していった。
そして、残るは俺たちのペアと、エレノア王女のペアだけとなった。
「やはり、他の有象無象とは格が違いますわね。ですが、ここからが本番ですわ! 『聖なる光よ、我が敵を穿て――ライトニング』!」
エレノアが杖を掲げると、数十本もの眩い光の槍が出現し、
猛スピードで俺たちへ殺到した。
公爵家の相方も同時に大規模な地割れ魔術を発動し、
俺たちの足場を奪いにくる。
完璧な時間差波状攻撃。
10歳としては、まさに絶体絶命の威力だ。
「ニア、僕の背中へ」
「はいにゃ!」
ニアが俺の背中にぴたりと身を寄せ、俺の腰をきゅっと抱きしめる。
背中に伝わる彼女の柔らかい感触。
俺は一歩も動かず、襲いかかる光の槍と地割れを見据えた。
(科学知識の応用。地割れの衝撃波を『固有振動数の相殺』で打ち消し、光の槍は『全反射の誘電結界』で撥ね返す――)
「――『拒絶の盾』」
無詠唱で展開された、幾何学的な光を放つ半透明の障壁。
エレノアの放ったライトニング・ランスは、
俺の結界に触れた瞬間、爆発すら起こさずに、
すべて逆方向へと完璧に反射された。
「な、なんですって――!?!?!?」
エレノアの目が驚愕にひん剥かれる。
自分の放った強力な魔術の槍が、そっくりそのまま自分たちへ降ってくるのだ。
公爵家の相方は恐怖で腰を抜かしている。
だが、俺は反射した光の槍の軌道を、
エレノアたちの『魔力バッジ』だけに集中するよう、
あらかじめミリ単位でコントロールしていた。
パリィン! パリィン!
綺麗なガラスの割れる音が響き、
エレノアと相方の胸のバッジが同時に砕け散った。
光の槍は、彼女たちの体を傷つけることなく、
背後の防壁だけを派手に粉砕して消滅する。
「そこまで! 勝者、ルイス、ニアペア!!」
教官の引きつった声が演習場に響き渡る。
周囲の観戦席からは、言葉を失ったエリート生徒たちの、
恐怖に満ちた静寂だけが返ってきた。
10歳の子供二人が、
学園最高峰の特級クラスを文字通り「完封」してしまったのだ。
「う、嘘……。私の全力の神聖魔術を無詠唱で反射して、さらに威力だけをコントロールするなんて……そんなの、あり得ないわ……」
エレノアは木剣を落とし、へなへなとその場に膝をついた。
王族としてのプライドを完璧にへし折られ、涙目で俺を見上げてくる。
俺はそっと歩み寄り、エレノアの前にしゃがみ込んで、優しく手を差し伸べた。
「怪我はなかったですか、エレノア様。君の魔術、本当に素晴らしかったよ。僕も少し焦ったくらいです」
「なっ……っ……!」
スマートに微笑みながら手を差し伸べる俺の顔を見て、
エレノアの顔が、一瞬で耳の裏まで真っ赤に染まった。
彼女は差し出された俺の手を、小さく震える手でギュッと握り返して立ち上がる。
すかさず【万能鑑定】。
【エレノア・フォン・アルカディア(15歳)】
・状態:極度の羞恥・敗北・強烈なときめき
・脳内妄想:『な、なによあの圧倒的な強さは……! しかも、あんなに優しく手を引いてくれるなんて……まるで、おとぎ話の王子様じゃない……! 悔しい、悔しいのに……心臓のバクバクが止まらないわ……っ! 好きになっちゃうじゃないのよ、バカァ!!』
・好感度:65(完全に陥落寸前のツンデレ)
後ろでは、勝った喜びで俺の腕に全力で胸(まだ控えめだが柔らかい)を押し付けて
「ルイス様、ニアたち最強の夫婦だにゃ!」
とアピールするニアがいたが、
エレノア王女の視線は、すでに俺から離れなくなっていた。
クラス全員を圧倒するペア無双、
そして王女様の好感度をさらにカンスト近くまで引き上げたルイス。
シャロン奪還のための学園生活は、
周囲の常識を徹底的に破壊しながら、最高の盛り上がりを見せていくのだった。
エレノアの相方は冷や汗が止まらなくてその後の筆記テストの用紙が汗でぐしょぐしょになったとか。。。




