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第九話 王女

今回は、いよいよ学園の「入学式」と「クラス発表」です!異例の飛び級首席となったルイスの前に、ついに本作3人目の主要ヒロインとなる、この国の第一王女が登場します!


 入学試験での大騒動から数日後。

 俺とニアは、王立魔法学園の広大な大講堂で行われる「入学式」に出席していた。


 試験での『規格外』という判定の通り、俺は10歳にして特例中の特例

 ――「新入生首席」として入学することになった。


 「おい、あの子が噂の……」

 「試験会場を一つ消し飛ばしたっていう、アークライト家の神童よ……」


 講堂に入った瞬間、周囲の上級生や同級生たちから、

 畏怖と好奇の視線が一斉に突き刺さる。


 そんな中、新入生総代として壇上に上がるよう促された俺は、

 堂々とした足取りで歩みを進めた。

 

 その最前列、ひときわ豪華な席に、

 周囲に圧倒的なオーラを放つ一人の美少女が座っていた。

 

 輝くような金髪を縦ロールに巻き、燃えるような緋色の瞳を持った、

 絵画から抜け出してきたような美少女。


 彼女こそが、このアルカディア王国の第一王女

 ――エレノア・フォン・アルカディアだ。


 エレノアは壇上に上がる俺をキッと睨みつけ、フンと鼻を鳴らした。


 「あなたがルイス・フォン・アークライトね。試験で少しばかり目立ったからって、調子に乗らないことよ。この学園の頂点に立つのは、王族たるこの私なのだから!」


 周囲の貴族たちが「おぉ、王女殿下じきじきの宣戦布告か……」と息を呑む。


 いかにもプライドが高く、高慢ちきなツンデレ王女といった態度。

 だが、そんな彼女の態度など、俺のチートスキルの前では無意味だ。

 

 俺は歩みを止めず、エレノアを見つめながら心の中で【万能鑑定(オールアプレイザル)】を発動した。


 【エレノア・フォン・アルカディア(15歳)】


 ・属性:ツンデレ、隠れオタク

 

 ・状態:極度の焦りと、お腹の虫


 ・脳内妄想:『な、なによあの男の子! 10歳であんなに顔が整っていて格好いいなんて反則じゃない! 背、背筋がゾクゾクしちゃう……! じ、実は昨日、夜更かしして恋愛小説を読んで寝不足な上に、朝食を抜いちゃったから、今ここでお腹が鳴ったら王族の恥……! 鳴るな、私のお腹、鳴るなあああ!!』


 (……めちゃくちゃテンパってるな、この王女様)


 思わず吹き出しそうになるのを堪え、俺は壇上へと上がった。

 そして首席としての挨拶を無難に、

 しかし10歳とは思えない堂々とした態度で終わらせ、壇上から降りる。


 その帰り際。

 エレノアの横を通り過ぎる瞬間――。


 ぐぅうう〜〜〜……。


 静まり返った講堂に、

 小さく、しかし確実に、可愛らしい「お腹の虫の音」が響いた。


 エレノアの顔が、一瞬で耳の裏まで真っ赤に染まる。

 彼女は恥ずかしさのあまり涙目になり、ガタガタと震えだした。

 周囲の生徒たちは聞こえないふりをしているが、空気は凍りついている。


 俺はすれ違いざま、エレノアにだけ聞こえる超小声の風魔術(指向性音声)で囁いた。


 「これ、良ければどうぞ。栄養価が高くて、音も出ない伯駁家特製の魔導クッキーです。……王女殿下の美しいお姿に、お腹の音は似合いませんから」


 俺は袖口から、携帯していた小さなクッキーの包みを、

 周囲にバレないようエレノアの手元に滑り込ませた。


 前世の知識で、音が出ず口溶けが良いように開発させた特製品だ。


 「っ……!? あなた、なぁっ……!」


 エレノアが驚愕に目を見開く。

 俺はそのまま何事もなかったかのように通り過ぎ、自分の席へと戻った。


 隣に座るニアが、鋭い視線で俺の袖を引く。

 猫耳が嫉妬でピンと逆立っていた。


 「ルイス様……今、あの金髪王女に何か渡したにゃ? ニアというものがありながら、もう新しい女をたらし込んでいるにゃんて……!」

 「はは、ただの挨拶代わりだよ、ニア」


 苦笑いしながらニアの頭を撫でて宥めると、

 彼女はすぐに「ふにゃ〜」と蕩けた顔になった。



 式が終わり、掲示板に張り出されたクラス発表。

 当然のように、俺、ニア、そしてあの王女エレノアの3人は、

 学園最高峰のエリートが集まる『特級クラス』に揃って配置されていた。


 掲示板の前で、エレノアがクッキーの包みを大事そうに握りしめ、

 顔を真っ赤しながら俺を凝視している。


 【エレノア・フォン・アルカディア(15歳)】


 ・好感度:25(興味・激しい動揺)


 ・脳内妄想:『な、なんなのあのスマートな気遣いは……! まるで私が昨日読んだ小説の、理想の騎士様みたいじゃない……! 悔しいけど、クッキー、すごく美味しいし……。う、うう、あんな子供にドキドキさせられるなんて認めないわよ……っ!』


 まだ10歳の俺だが、

 最愛のメイド・シャロンを救うための学園生活は、

 早くも王女様をベタ惚れルートへと引きずり込む波乱の幕開けとなったのだった。

今、あなた、こう思いましたね?「エレノア王女、チョロくて可愛い!」「学園編のハーレムが本格化してきた!」って。

さすが!心を読める空くん!

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